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【人外の詩】 旅の縁について

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私はひばり 旅をする
地に根をはれる 暖かい場所へ
私はイルカ 旅をする
この肌きらめく 光指す場所へ

ならば僕は
肉眼のため 旅をする
逃避と義務のはざまで揺れる
大都会で 夜明けと黄昏見るために

肉眼のため旅をする
沈黙と産声 色分ける
広い牧場で 白いため息見るために

僕の肉眼 あわよくば
大粒の涙こらえて帰る
沢山の涙したためたこの眼
あなたの舌で転がして
毎夜毎夜 静かに嗜むこの飴玉
僕のこの身を今も動かす
内なる悪魔の嗜みに

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僕の目に映るのは
母が縫った巾着
妻が買ったテレビ
娘が残した絵手紙

僕の目に映るのは
誰かが開いた田畑
誰かが建てた寺院
誰かが埋めた湿地

命令のまま思考するロボットよ
広告のまま欲望するアニマルよ
全てを捨て漂流するデラシネよ
・・・このままで行く
・・・そのままで行こう

僕の観察力
僕の想像力
僕の実行力
僕の生きた跡
誰かが見てくれるだろうか
君が見てくれるだろうか

その眼球に飛び込んだ風景こそ
その眼球から放たれる心象
この惑星を上書きしてやろう
この意識を上書きしてやろう
この星をテラフォーミングしたプランクトンのように
この心をテラフォーミングしたアルケミストのように

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幾多の国を越え 幾多の山河を越え
幾多の夏を抱き 幾多の冬に抱かれて

新しい風景を得ることは もはやなく
それ以上に 新しい見方に気付き続ける

太陽よりも北風が好きな自分
静寂よりも喧騒に安らぐことへの不思議

僕の眼は増え続ける
たった一組のキャンディでは終わらない
もはや蜘蛛の眼 トンボの眼
夥しく映える宝石のカラットに包まれ
研磨を重ね やがて純粋な球体となり
泣かずとも 涙の価値を知るだろう

この世の物とは思えない豊かな虹彩を
肥えた眼として「ヒガン」と呼ぶ

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神は居るのか?居ないのか?
神は要るのか?要らないのか?

 相棒と二人でやったデカい山
 盗んだ金を隠した後に
 二人同時に捕まった
 証拠のない刑事は取引を持ちかける
「相棒を売ればお前だけは出してやるぜ」

 拘留期限は2週間
 黙秘を続けりゃ二人同時に出られる寸法
 賢い俺たちには造作もないこと
 しかし疑心も湧き上がる
(俺を売った相棒はいまごろ
 大金抱えて高飛んでいるかも)

囚われた俺の目と耳には
相棒の今の心を知るすべはない
俺にあるのは相棒の手の記憶
相棒の全体重を支え
相棒に全体重を任せたあの手の感触

世界を飛び回った大泥棒
そんな俺にも
世界全体は広すぎて見渡せなかったし
世界全体は深すぎて聞き通せなかった
しかし、この手で
今でも全体を掴んでいる
今でも全体を押すことをできる
今でも全体に掴まれている
今でも全体に押されることができる
相棒を疑う心も
相棒を信じる心も
とうの昔に要らなくなった

拘留期限の2週間
俺は黙って鬼と仏を聞き流す

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ううあうう
うおうおううう

眼なんて肥やすんじゃなかった

地平線の向こう側 水平線の彼方まで
知ったところで何になると
核たる本質など どこにもなくて
あらゆる全てが舞台装置

僕達は何をしても 誂えられて演じる他なく

進んでいるのか?さまよってるのか?
解っているのか?探してるのか?
ただ一つだけできる抵抗は
飢えを修める自足の念だけ
負けを惜しんで唾液を飲んで
明日からまた世に生かされるだけ

目の前のあなたさえ 何かのために在って
それはもしかしたら僕だけのためではなくて

ううあうう
うおうおううう

陳列された散文の意識に
この眼を潰せと影がよぎるよ
光をなくすことは諦めなのか
あるいは不退転の飛躍のためか
それでも懲りずに旅をするなら
紡ぐ言葉も獣のそれに

ううあうう
うおうおううう
ううあうう
うおうおううう

▼ 詩せる死人の酒場『バッカナール』
http://www.21styles.com/mybbs/pandemo/

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