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みほとけや人と出逢い、そして今宵も酒な旅〜奈良京都の三日

半年ぶりに奈良に行ってまいりました。

奈良は住んでみたいと思っているほど好きな場所です。

去年移住計画を進めていましたが、色々ゴタゴタに巻き込まれ頓挫。

今年こそ!と思っております(ネックは無論資金と仕事です)。

夏場は山小屋でバイトするのでガッツリ稼ぎます。

そして奈良へ、と行ければいいなあ。

今回はとある目的のついで、程度で奈良と京都を訪れました。

それが思いの外大満足な旅行となったのです。

まずは品川から新幹線で名古屋へ。

三日間とも快晴に恵まれ、あまり寒くもなく過ごせました。

6時ごろ出たので新富士駅付近では富士山を望めました。

雪が少なすぎてちょっと悲しい…。

名古屋で降りて、関西本線で四日市へ。

そこでは山小屋のお客さんで、下りたらお会いしたいと約束していた方のところを訪れます。

その方はお坊さん(浄土真宗なので剃髪しません)で、元教員の大変聡明なお人であります。

私は境内をお掃除させていただき、午後からはちょっと観光を。

行ったのは、津に近い一身田にある高田本山・専修寺。

国宝の阿弥陀堂、御影堂があります。

ずっといきたいと思っていたのでとってもうれしい!


立派な山門、寺格の高さを表します。

境内には天然温泉があったので(!)、入浴もしました。

そんなもの作っちゃっていいのかなと思いつつもひとっぷろ。

その名も高田温泉、すべすべのいいお湯でした。

おやつは寺内町のカジュアルなおにぎり屋さんへ。

ジャズがかかる、鏡張りの店内は若者向けな雰囲気。

おにぎりとお味噌汁セット、そしてほうじ茶をいただきます。

なかなかのお味です。


外装はこんな感じ。結構人が入っていました。

この後は三重におさらば。

近鉄津駅から特急に乗り、名張を超えて奈良県に入ります。

大和八木駅で降りて、歴史ある駅舎が素晴らしい畝傍駅からまほろば線で奈良駅へ。

今日はこの近くで泊まります。

でも1日はこれで終わりではありませんよ。

夜はいきつけのバー、Sanjoさんへ。

お美しいママさんが一人で切り盛りしております。

奈良に来たらここには必ず寄るようにしています。

もう7年は通っているかな笑

今日は気づいたら17時から23時までいました。

日本酒、ビール、タコハイ、ワイン。8杯ぐらいは呑んだかも。

いつも私が来るとご一緒してくださるメカニックがご専門のKenさん。

彼にnoteを勧めたところさっそく始めてくださいました。

是非写仏部にも入部していただきたいところです。

他にも多くの常連さんが来訪して、お話しさせていただきました。

印象深かったのは私に会いに来てくれたという橿原の研究所ホープのナナちゃん。

お店が閉まった後は日を跨いでナナちゃんたちとカラオケ笑。

こうして1日目は終了したのでした。


二日目です。

本当は今日帰るつもりでしたが、お一人常連さんの顔を拝見できずだったので、もう一泊することに。

ほろ酔い気分でホテルを出ます。

今日は忍辱山の真言宗・円成寺へと行きます。

奈良駅から柳生方面へバスで一時間、山中の静かな場所に忽然と現れる古寺がこの円成寺です。

ここには仏師運慶の出世作とされる国宝・大日如来とこちらも国宝の阿弥陀堂と白山春日社があります。

なかなかのすごいお寺、ということです。


さっそくですが、迷子に笑。

拝観入口が分からず、気づいたら一つの宝篋印塔の前にいました。

細身でそんなに力強さもありませんが、何かそんな素朴さに惹かれる…。

お池の周りには石仏や石碑がけっこうな数あり、そちらも見逃せません。


国宝の阿弥陀堂です。室町時代の再建になります。

庇が大きく前に迫り出し、階段の左右が競り上がるという、変わった入母屋造りの建築。

内部には濃い密教空間があります。柱には仏画が描かれ、仄暗い回廊には諸仏が配置され、真ん中には立派な阿弥陀様がいらっしゃりました。

運慶仏にばかり注目が行きがちですが、このご本尊も素晴らしいです。


国宝の春日白山社です。

鎮守様として阿弥陀堂の前に勧請されています。

現存最古、春日大社本殿よりも古い春日造りの建築です。

ミニチュア感ありますが、細部までよくできております。

宝蔵庫にも行きます。

ここにはもともと多宝塔に安置されていた大日如来様を納めています。

運慶仏は静岡、神奈川でお会いしに行っている私。興福寺北円堂の無著世親像も拝見していますが、円成寺は初めて。

静かできれいな収蔵庫で大日如来と対峙したのは10分ほどでしたが、不思議な感覚がしました。

なんというか、大日様のお腹が開いて宇宙に飲み込まれていくような、そんな幻覚を見たような気がしました。

たった一人でこの均整のとれた美仏と対話できた体験は本当に尊いものでした。


お庭と山門です。

お庭は最近復元されたものなので、まだ真新しさはあります。

しかしながら鯉が泳ぎ、アセビが咲く池のほとりに立っていると、命を慈しむことの大事さを教わるような気がします。

お昼は寺の境内にあるお休み所へ。

まだ開いていなかったのですが、店主のおばさんが出てきて早く開けてくれました。

私は天丼を頼みました。

出てきたのは天ぷらがたくさん乗ったボリュームある丼!

お腹が減っていたのですぐに完食してしまいました。


調子に乗ってわらび餅も注文。

しかしこちらも巨大餅が五つも出てきてびっくり。

二つしか食べられずお残ししました…。

メニューはご店主が書かれたものなのでしょうか。

大変な能筆家な方が書いたと見受けられます。

こんな字を書いてみたいものですな。


時間が余ったので、山門の下に腰掛けて日を浴びます。

風はあるけどとってもいい天気。

うぐいすが鳴き、木立のざわめきが聞こえ、とっても癒されます。

山門の扁額に掲げられた「忍辱山(にんにくせん)」の山号。

忍辱とは仏教用語であらゆる苦難を耐え忍ぶ行を意味するそう。

ずっとどういう意味だろうと気になっていましたが、今日初めて知りました。

12時のバスで忍辱山を去り、再び奈良市街へと入っていきます。

三条通りの書道用品店に行く以外用事がなかったので、とりあえず東大寺最北の転害門のところで下車。

奈良時代の建築として、東大寺最古級である転害門(てがいもん)。

当時のダイナミックな建築手法を知ることができる、あまりにも貴重すぎる建物です。

ここから奈良公園へと入っていきます。

とりあえず今日がお水取りだったので、二月堂まで上がっていきます。


大仏殿裏の大仏池です。

くぼみに溜まった大きな水たまり程度のものですが、鹿たちの憩いの場になっています。

いつもスルーするだけの大仏殿。

今回は裏から通ります。

この辺は地元の人が多く、観光客はまばらです。 

多くの子院がひしめき合う裏坂を通って二月堂へと至ります。

二月堂の前では祭事が行われており、多くのカメラマンが出待ちしていました。

私は食べ過ぎでお腹が痛くなってきてトイレ探して放浪笑。

でもお水取りのせいでどこも閉鎖状態、困った困った。

法華堂の近くにあるトイレも入れませんでした。

ちなみに写真の法華堂は奈良時代の建物に鎌倉時代増築を加えたもの。

接合しているのがここからだと屋根付近がよく分かります。


やっとトイレが見つかり一安心。

鐘楼から大仏殿横へと下り、南大門横の東大寺ミュージアムを目指します。

この辺はほぼ観光客しかいません。

東大寺の南大門です。

このお寺の鎌倉再建期の最高傑作として知られます。

運慶快慶が携わった金剛力士像、久々に見ました。

そしたら近くで事件が。

おばさんの連れていたパグが鹿に襲われたのです。

幸い怪我はありませんでしたが、パグくんは涙目でした。

犬を連れてくる場所ではありませんよ、ということでしょうな。


お次は南大門の向こうの国立博物館へ。

正直正倉院展以外で来館したのは初めてでした。

お水取り展をみた後は仏像館へ。

note写仏部部長のHimashunとしてはここは天国みたいな場所でした。

本当に仏像だらけ!部内で今話題(?)の半跏像や金銅仏も勢揃い、非常に勉強になりました。

とってもおすすめの場所です。


奈良公園を抜けて三条通り商店街へ。興福寺とJR奈良駅を一直線に結んでいます。

ここには日本画材、というか書道用具店がいくつかありまして、私は笹川文林堂さんを訪れました。

まだまだ書画は始めたばかりでものがわからないので、店員さんに相談したらとっても親身に御対応いただきました。

私が買ったのは半紙、写経用紙、固形墨、奈良筆です。

写経用紙は写仏部で描く用です。縦線が入っていますが敢えて線の上で描くことで、古風な雰囲気がでたらなと思ってます。

般若心経をなぞり書きできるタイプの写経用紙も購入。やってきたかったので。

固形墨はピンキリでしたが、高級で希少な奈良墨の松煙墨(中サイズ)を購入。青みがかった色合いが出る種類のものです。

奈良筆は三種類を購入。極細の面相筆、万能な熊取筆、そして写経用の写典筆です。

ちなみに奈良紙についてもお聞きしましたが、書道用品店なので置いておらず、モノ自体も高級且つ希少なのでゲットするのは難しいとのこと、orz。

こちらは東大寺ミュージアムと国立博物館をハシゴした人だけがもらえる散華です。

通常の散華と比べるとペラペラですが、グラデーションの美しい、芸術的な散華に仕上がっています。

15時過ぎにホテルに到着、一休みののち、今日も酒場でダバダ。

再びのSanjoさんでは常連さんの通称「奈良のドンファン」さんにお会いできました。

続いてお初目、税理士の信州大好きK先生とご一緒させていただきました。


ママさんに言われて思い出したのが、かつてボトルキープしていた芋焼酎。

探し出して久々に飲んでいたら、昨日に引き続き登場、SanjoのアイドルOtogiさん(60代男性)が。

ここから常連さんだけの時にだけ許されるカラオケが始まり…。

Otogi御大は「栄冠は君に輝く」や「高校三年生」を、私は郷ひろみと新沼謙治、そしてママさんは中森明菜を歌って。

最後はみんなで「河内おとこ節」を歌ってフィナーレ。

私とOtogiさんは肩をぶつけ合う千鳥足で歩きながら、来月の再会を約束して帰路についたのでした。

三日目は何の予定もなく、どこにいこうか朝から思案。

色々考えた結果、奈良の北、南山城を訪れることに。

JR奈良駅から奈良線で15分、玉水駅で下車します。

のどかな田園風景の中を歩きます。

私が訪れるのは真言宗智山派の寺院、蟹満寺(かにまんじ)。

国宝の白鳳仏である釈迦如来像がご本尊です。


30分ほど歩いて目的地に到着。

今日は五色の旗が掲げられています。

そしてお堂からは法要の読経が。

受付で聞いたら、今日はお釈迦様のお亡くなりになった日だとのこと。

法要でお待たせしてしまい申し訳ないので拝観料はいらないとおっしゃっていただきました。

それでは恐縮してしまうので、蟹のキーホルダーお守りを買わせていただきました。

そう、ここはカニに由来のあるお寺。

瓦も牡丹のようにもカニのようにも見える不思議な紋が入ってます。

『今昔物語』にも載っている有名なお話です。

蛇に呑まれようとしていたカエルを助けるよう懇願した男性。

彼は娘を蛇の嫁にするという約束をしてしまいます。

蛇は彼の家にやってきて、三日後に再訪すると言い残します。

一家は必死に観音菩薩にお祈りを捧げました。

するとやってきた蛇を無数のカニが迎え撃ち大バトルに。

同時打ちとなり、家の前に遺された死骸を一家は丁重に葬ったとのこと。

確かこんな話だったかと思います。


蟹満寺の本尊、釈迦如来坐像です。

法要の後にお堂に入らせていただきましたが、その大きさに圧倒されました。

とっても包容力のありそうな、力強い仏様で、お会いできたのが嬉しかったです。

法要には地元の方が多く訪れており、とても皆様信心ぶかそうでした。


境内にはサンシュユが綺麗に咲いてました。

山茱萸とも書き、赤い実がなることで知られます。

3月に咲く、素朴ながら美しい花です。


漢文ですな。

「猶」とか「豈」とか、懐かしいなぁ。


蟹満寺を出た後は、一駅前の棚倉へ。

駅前には涌出宮というお伊勢様系の雰囲気ある神社があったので訪問。

きれいな社叢をもっています。

この後は京都へ。

蟹満寺で今日はお釈迦様が亡くなった日だと知ったので、涅槃図の見られるお寺を探しました。

すると東山の神楽岡にある真如堂が3月中ずっと公開しているとのことで、大分遠いですが訪問することに。

東福寺駅で京阪線に乗り換え、終点の出町柳駅でおります。

京都市内は奈良と打って変わってすごい数の人。

まさにオーバーツーリズムって感じでした。

タクシーを使っても良かったのですが、あえて30分歩いて真如堂までいきます。

京大吉田キャンパスの周縁をなぞるように歩き、だんだん坂道が増えていきます。

神楽岡は大文字山を見渡せる眺めのいい場所。風光明媚なのに観光客が少なく、私のお気に入りのところです。

丘の上には天台宗真如堂、そして浄土宗金戒光明寺が並んであります。

さっそく本堂へ。涅槃図公開中とあります。

そして授与中なのが「花供曽霰れ」、いわゆる「はなくそ」です。

そう、はなくそという涅槃会に関わるお菓子があるのです!


こちらが授与されたはなくそです。

よく見るとけっこうなリアル仏様のハナクソ(デカい)ですね。

洛北の和菓子司・田丸弥(たまるや)謹製です。



今回見ることにできた涅槃図がこちら。

10メートルほどある、とにかく巨大な絵画作品です。

日本絵画専門の私が分析するには、江戸時代後期ごろの狩野派か円山四条派の絵師が描いたものと思われます。

一番の見どころは左下の池泉。献花を口に咥えた雉や鶏の姿がなんともけなげで愛らしく、また水中に見られる魚類のリアルな描写からは当時流行の博物学からの影響も示唆されます。

大変出来が良く、保存状態も良いこの涅槃図、見応え満点です。

続いて書院へ。

東側の涅槃の庭からは大文字山を借景として望めます。

戦後の作ですが、とても落ち着きのある仕上がりのお庭です。


本堂から見る三重塔。

境内は自由に散歩でき、四季の花が咲き乱れ、静かに京都らしさを満喫できます。

本堂裏のサンシュユ。ずいぶん成長して大木になっています。

地味ですがとっても好きな花なんです。

元三大師堂の紅梅。

梅は終わりかけのものが多いですが、遅咲きのものはこれからという感じでした。


続いて真如堂のお隣、通称「黒谷さん」、金戒光明寺へ。

こちらも紅梅が綺麗。


そしてお会いしたかったのがこちらの石仏。

文殊塔の坂道横にいらっっしゃる、阿弥陀如来五劫思惟像です。

伸びすぎてしまったパンチパーマはそれだけの時間動きもせず座っていたことを表します。

私のよく行く世田谷の九品仏にもこのアフロ仏はあります。

横から見るとこんな感じ。

強烈なインパクトのある外見ですね。

黒谷さんの山門。

組木には本山の知恩院三門と同じ禅宗建築を採用しています。

近くには幼稚園があり、子どもたちの遊び場となっています。

ここから京都駅まで帰るのが不便…。

タクシーは高いので嫌だ、かと言って市バスは混んでいるし不便。なので地下鉄丸太町駅までまた30分かけて歩くことに。

途中では和菓子屋に寄りました。聖護院近くの仙若堂さんです。

品数はそんなにありませんが、生菓子自慢の評判の良いお店です。

私は生菓子と京都名物・うば玉を買いました。


帰り道では良さげな看板をいくつか見つけました。

こちらは酒屋さんの看板。

京都の看板は書の観点からもデザインの観点からも注目されます。


こちらは神装束を扱うお店。

木目の浮き出た黒い看板に白地で達筆書かれます。

「所」の字が一にツケとなっているのが面白い。

長かったこの旅ももう終わり。

本当は御所近くのにしんそば屋で呑みたかったのですが、大分へとへとだったので帰ります。

帰りの新幹線では半分を気を失っていました笑。


もうしかしたら来月も奈良に呑みに行くかもしれません。

というのもバーの常連さんで、一度倒れられた方がなんとかリハビリを経て最近またいらっしゃっているからです。

是非励ましの会に参加したいので、呼ばれたらまた奈良に行きます!

長々と書き連ねてしまいました。

ご覧いただきありがとうございました。

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