見出し画像

【超ショートショート】(96)~薄紫色のシャボン玉の想い~☆Chage『waltz』☆

(ナレーション)
さて、今日のお話は、
ある男女に訪れたせつない恋の物語。
では、はじまりはじまり。

ふたりの出会いは、
まだ男の子が3歳、女の子が1歳の頃。

ふたりのお父さんとお母さんは再婚同士。
男の子のお父さんは、
男の子が産まれてからすぐ、
男の子のお母さんを病気で亡くしていた。

女の子のお母さんは、
女の子がお母さんのお腹にいる時に、
女の子のお父さんが
山頂でレスキュー活動をしている時に、
不慮の事故に合い亡くなってしまった。

お父さんとお母さんの付き合うきっかけは病院。
偶然同じ病院で、
ふたりは大切な人とお別れをしていた。


お父さんとお母さんが再婚してから、
男の子と女の子は
兄と妹の兄妹として育つことになる。

ふたりの住む町は
少し郊外の田舎の風景が残る所。
ふたりは学校から帰ると、
お母さんが帰って来るまで、
一緒に緑の森で遊んだ。


妹が二十歳になる頃、
お父さんから大切な話があると言われる。

(お父さん)
「まだ話していないことがあるんだ。
今日、お前が二十歳になったから、
母さんと相談して、本当のことを話そうと思う。」

(女の子)
「何?」

(お父さん)
「・・・・・」

(お母さん)
「あのね。お母さんとお父さんはね。」

お母さん、お父さんの目を見つめる。

(お父さん)
「お父さんとお母さんは・・・・・、
再婚なんだよ!」

(女の子)
「それは知ってるよ!」

(お父さん)
「それだな、連れ子なんだよふたりは。」

(女の子)
「連れ子?」

(お母さん)
「あなたは私の連れ子。」

(お父さん)
「お兄ちゃんはお父さんの連れ子なんだ。」

(女の子)
「・・・・・」

(お父さん)
「ふたりは兄妹として育てたが、」

(女の子)
「じゃあ、血の繋がりは?」

(お母さん)
「無いのよ!」

(女の子)
「・・・・・」

(お父さん)
「ごめんな。隠すつもりはなかったんだが、
せっかくふたりが兄妹だと思って仲良くするから、
本当のことが言えなかったんだよ。」

(女の子)
「お兄ちゃんは?このこと・・・」

(お母さん)
「もう知ってるわ。」

(女の子)
「いつ?」

(お父さん)
「お前と同じように二十歳になった時に話したが、
その時にはもう知っていたよ。」

(お母さん)
「お兄ちゃんは、ずっと前から、
妹と本当の兄妹じゃないって
気づいていたのよ。」


両親からの真実の告白を受けた女の子は、
お兄ちゃんに相談する。

(女の子)
「お兄ちゃん、本当なの?」

(お兄ちゃん)
「あ~、本当だよ!」

(女の子)
「嫌じゃないの?」

(お兄ちゃん)
「嫌じゃないよ!
血の繋がりなんか関係ないだろう。
お前は俺の妹ってことは変わらないんだからさ。」


それから、
お兄ちゃんは立派な大人の男になり、
妹の女の子も綺麗な女になった。

ふたりにそれぞれ恋人もできた。

妹が、先日彼氏からプロポーズされた。
今日は、その返事をするために、
レストランへ向かって、
信号待ちの交差点にいた時だった。

突然妹の背後から、
人がぶつかってきた時、
雨の路面でスリップして、
ハンドルを取られてしまった車が、
多くの通行人が待つ歩道に突っ込んできた。

妹が目を覚ましたのは、
それから1週間後。
命の危機を乗り越えたのだが・・・

(お兄ちゃん)
「おい!わかるか?お兄ちゃんだぞ!」

(女・妹)
「うん!お兄ちゃん!」

妹は、自分に起きたことが何なのか、
目を覚ましてもわからなかった。
警察の取り調べでも、
何の話をされているのかもわからなかった。

妹が目を覚ました翌日、
プロポーズをした彼氏が面会に来た。
だが、妹の反応が妙に変だった。

(女)
「あなた誰?」

お兄ちゃんと両親は、医者に話を聞いた。

(医者)
「娘さんは、解離性健忘という
一種の記憶喪失の状態にあります。
娘さんは、事故のショックがストレスとなり、
最近の記憶を失っている状況なんです。」

(お母さん)
「記憶は戻せるのですか?」

(医者)
「それはなんとも言えません。
本人次第とも言えますし、
時が解決させることもあるかもしれませんし。」

(お兄ちゃん)
「妹の今の記憶は小学生の頃までで、
今の彼氏のことも何もわからないんです。」

(医者)
「そうですか・・・」


あの事故の日、
妹は彼氏のプロポーズを断りに行く所だった。
そう書いてある妹の手帳を、
お兄ちゃんが読んでしまう。

~~~~~~
彼氏のプロポーズを受けることが、
やっぱり出来ない!

私が本当に好きな人は、
やっぱりお兄ちゃんだけだから。
~~~~~~

そして、
妹が二十歳になったあの日に、
両親からの真実の告白を受けて書いたメモには、

~~~~~~
お兄ちゃんと血の繋がりが無いってことは?
結婚も出来るのかな?

だって、血が繋がって無いんだから、
出来るはずよね❤️
~~~~~~

お兄ちゃんは妹の気持ちを初めて知った。

しばらくして、
妹は記憶喪失のまま退院した。

憶えているのは、
両親とお兄ちゃんだけだ。

妹は、小学生の時のように、
お兄ちゃんの側に居たがったが、
お兄ちゃんは彼女との結婚を控えていた。

(お兄ちゃんの彼女)
「あのね。できたみたいなの。」

(お兄ちゃん)
「できたって、何が?」

(お兄ちゃんの彼女)
「・・・・・(笑)」

(お兄ちゃん)
「えっ!」

結婚したお兄ちゃん夫婦を見て妹は、
元気を無くした。
お兄ちゃんの奥さんの大きくなるお腹を見て、
もっと元気を無くした。

(お兄ちゃん)
「あのさ!お兄ちゃんとあの緑の森に
遊びに行かないか?」

(妹)
「うん!遊びに行きたい!」

ふたりは、
小学校から帰って、
お母さんが帰って来るまで遊んだ
あの緑の森へ出掛けた。

小学校の兄妹に戻ったみたいに遊んでみだり、
お兄ちゃんの趣味の8ミリフィルムを回して、
妹を撮影したり。

ふたりは、
時々言葉もなく、
沈黙の中の会話を楽しむように、
今の風景に昔のふたりを思い出していた。

(妹)
「お兄ちゃん。」

(お兄ちゃん)
「なんだい?」

(妹)
「もし、私が妹じゃなかったら、
彼女になれたかな?」

(お兄ちゃん)
「・・・・・」

(妹)
「お兄ちゃんは、私が彼女じゃ嫌?」

(お兄ちゃん)
「・・・・・」

(妹)
「お兄ちゃんはずっと気づいてなかったけど、
私、お兄ちゃんのことがずっと好きだったの。
クラスの友だちに、
〈将来はお兄ちゃんのお嫁さんになる!〉
って話したら大笑いされてね、
泣いたこともあったのよ。(笑)」

(お兄ちゃん)
「・・・・・」

(妹)
「お兄ちゃん?」

(お兄ちゃん)
「うん?」

(妹)
「〈うん?〉じゃなくて何か話してよ!
私ばかり話してて恥ずかしいわ。(笑涙)」

(お兄ちゃん)
「うん・・・・・(苦笑)」


ふたりは、
子供の頃のように、
どちらからでもなく、
手を繋いで森の中へと歩いて行く。

森の一番高い見晴台に着くと、

(お兄ちゃん)
「ごめんな。」

(妹)
「うん。もう仕方がないよ。」

(お兄ちゃん)
「本当にごめんな。(涙)」

(妹)
「だから泣かないでよ!お兄ちゃん!(笑)
私なら、もう平気だからさ。(涙笑)」


ふたりの側で、
ふたりに似た兄妹が、
シャボン玉で遊んでいた。

ふたりの叶わなかった想いを
たくさんのシャボン玉の中に閉じ込めて、
太陽の光の中を
薄紫色のダイヤモンドダストのような
キラキラしたシャボン玉が、
見晴台の空一面を覆った。

ふたりは、
その空一面のシャボン玉を見て、
ふたりの想いを確かめ、
そして、その想いとお別れをした。

永遠にふたりは
兄妹として生きる決意をしたようにも見えた。


(制作日 2021.9.7(火))
※この物語はフィクションです。

今日は、
数日早いですが、
9月10日に記念日を迎えます、
Chage『waltz』を参考の、
せつない恋物語を書いてみました。

この『waltz』という曲には
Music Videoがあり、
出演は、Chageさん。
その他に、
あの有名な石田ゆり子さんも出演しています。

今日のお話は、
曲のせつない雰囲気と、
石田ゆり子さん出演のMVのドラマから
思い付いたお話です。

書きながら、書いてみて、
なんとかこの兄妹として育ったふたりに、
ハッピーエンドは作れないものかと、
今も考えていますが、
やっぱり人生って難しいこともあるのかなって、
思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
Chage
『waltz』
作詞作曲 Chage
編曲 森 俊之
(2008.9.10発売)

YouTube
【Chage Official Channel】
☆『waltz』Music Video☆
☆出演・Chageさん・石田ゆり子さん他☆
https://m.youtube.com/watch?v=9WBR5uHbwJI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?