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人よりちょっと遅いだけ

あと3ヶ月くらいで”27歳”になるぼくだけど、
今回の無印良品週間で初めてメイク道具を一式買った。
まぶたをキラキラさせることに成功した。
安い化粧品に手を出して、YouTubeとにらめっこしながらお化粧を試すのは、多分多くの人が中学生とか高校生の時に通り過ぎているのだと思う。

でもぼくにそういう時間が訪れたのは26歳になってからだった。

高校に上がると、いろいろな大人に「化粧を勉強しておかないと困るぞ」と言われた。自分のジェンダーに対する心が不安定だったから、"女性"だからという理由で「社会人に備えて化粧を勉強する」という意味がよくわからなかった。

大学に上がるなら、さすがに化粧をするか(?)とロフトに行った。
ファンデーションとリップとアイブロウを買った。
入学式には化粧をしてみたけれど、なんだか別に面白くなかった。それに、顔をかくことができないのが不快だった。やがて化粧をしなくなった。そしてやっぱり「女性だから化粧をするよね」という意味がよくわからなかった。自分は「女性だ」と言った覚えは一度もない。化粧は、したい人がするものだと思っていた。

留学中は、自分の顔が薄いことがなんとなく気になって、アメリカで流行っていた濃いめの眉毛を書いていた(ヒスパニック系の人が多く、周りはとにかく顔が濃かった)
それから、眉毛だけは描くようになった。
恒常的に顔に何かついている状況になってから気づいた。
肌が弱い。かゆい。
入学式の日に感じた不快感は、化粧品に肌が負けたことからくるものだった。

興味もないし、自分にとって化粧は意味がないし、
肌は弱いし、自分の肌に合うものを見つけるお金も時間ももったいないと思っていた。

就活も、眉毛だけメイクで乗り切った。

別に、なんてことなかった。気づいたら、メンズメイクも一般的になってきて「化粧はしたい人がするもの」みたいな風潮もできあがっていた。

加齢や薬のおかげで、本当に少しずつ、自分のジェンダーに対する心は落ち着いてきた。柔らかく膨らんだ胸や、毎月くる生理や、女性として生きることを受け入れることができるようになってきた。
毎年の冬のうつを超えて春になったら、まぶたをキラキラにしたくなった。

YouTubeでいっぱい検索して、化粧品を買い揃えてみた。
まぶたが、人生で初めてキラキラになった。
化粧をすると強くなった気がすると人はよくいう。
確かにそうだ。

お気に入りのピアスをつけた時とは全く違う、強くなった気持ちだ。

無印良品の化粧品は、じゃあ何が入ってんだと思うくらい刺激物が入っていない。わかんないけど多分自分の肌はアルコールに弱いらしく、アルコールフリーの無印メイクには本当に助けられている。

達観した子供だった割には、なんというか、すべてが遅い。
様子を見ている時間がとても長い。そして自分にとって安全だと分かった時に大胆な一歩を踏み出すし、二歩目から先は走るように進んでいく。そんな人生だった。

自分の体やジェンダーを受け入れるのに15年くらいかかったように、
お化粧がしたい!と思えるまでにたくさんの時間がかかった。
ただ遅いだけなのだと思った。
それで結構いいなと思う。何より、(本当に小さいことだけど)新しいことに挑戦している自分はいいなと思うし、挑戦したいということは元気になったということなんだよな、とぼんやり思う。

人よりちょっと、
ほんのちょっと遅いだけ。
ゆっくりやってんだ。あんまりジャマしないでね。

花粉シーズンのメイクはやばいね。
肌が終わっちゃうわ!毎日メイクしている人や髭を剃っている人、本当にすごいよ。

いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。