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夕飯

仕事帰りに食事に誘われました。

「わたし駅前で串焼きを食べて帰ろうと思うんですけど
Fubukiさんも一緒にいかがですか?」
「あ!あのカウンターで食べるお店ですね!美味しそうですよね!」
「行きますか?」「うーん」
一瞬、脳内で冷蔵庫の中の食材を再チェック。

すると彼女はわたしの顔を見て間髪を入れず
「急にお誘いしても、家族が待っていらっしゃるから難しいですよね」
「今日はちょっと行かれないかなぁ…また誘ってね」

「わたしね、夕飯の作れない男なんて絶滅すればいいと思っているんです」

思いがけない言葉に
「そんなこと言わないで~」
と答えると
「だって、人が生きるための最低限のことも出来ない人間なんて!どうかと思いますよ」

わたしも心の中ではそう思っているけれど
男にも女にも、それぞれ事情があるからね…

彼女は
「こんな女だから、いつも恋愛をこじらせております」
と言い残して、駅前の串揚げ屋さんに消えていきました。


わたしは正社員でフルタイムで働いている時も
いつも家族の食事を作る係で、現在に至るまで続けています。
まったく作らないのは旅行に行く日だけかもしれません。

食べることは大好きで
料理も好きなので、作業自体は苦にしていませんが
自分のやりたいことがあってたっぷりと時間が欲しい時は
「ああ、料理しないですむと助かるんだけどな~」
と思います。

料理は
買い物、下処理、調理、器具と食器の片付けがあります。
仕事からの帰り道で寝るまでの数時間のプランを立てて
最短でなんとか充実した内容になるようにと工夫します。

「今日は編み物をここまで終わらせたい」
「あの本を読みたい」
「映画を1本観たい」
となると、玉ねぎを刻みながら上の空なんてこともあります。

とはいえ
安全な場所で温かい食事をいただけることは幸せな環境であり
「作らなくてすめば…」
と思う事はなにか哀しい人間になった感じもして
最後は、できるだけ手早く料理を用意して
得た時間をやりくりしています。


そんなことを考えながら
今朝、ごみを捨てに外に出たら
お隣の玄関に、出前のどんぶりが
お盆の上に三人分置いてありました。

蕎麦屋の出前は子どもの頃に食べたきりで
結婚してからは一度も注文したことがありません。
懐かしいなぁ~!出前!

塗りの四角いお盆に乗った
蓋つきの丼。
わたしにとっては、幸せな家庭のイメージです。

それはたぶん幼少期の家族の想い出から来ているのでしょう。
こたつで蕎麦屋のお品書きを見ながら
わたしはキツネうどん、わたしは親子丼などと
指さしながらワイワイ選んで
お母さんが黒電話で注文の電話をしているのを
後ろで見守っていた、あの団欒の時間。

懐かしい出前の丼が食べたいな。

ということで、今日は
近所の蕎麦屋のお品書きをもらってこようと思います。

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