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11月3日は文化の日

ご存じ、みんな大好き国民の祝日です。

元々、文化的である事を好んでいた明治天皇の誕生日として制定されたこの日は、同時に日本国憲法が公布された日でもあります。

この辺りの由来はなかなか込み入っているので、文化的な調べものとして明日チャレンジしてみるのも良いでしょう。

文化と言われて真っ先に連想するのは、日本国憲法の25条。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」

との事です。今日び小学生でも知っているこの条文ですが、よくよく考えるとすごいですよね。

「働かざる者食うべからず」という、当たり前といえばあまりに当たり前な原理原則に真っ向から反しているわけですからね。

要するにこの国では、最低限度の文化しか望まないという限り、働かなくとも生きていけるわけです。自然界において異質な人間社会の中でも、とりわけ異質な事だと思います。

とはいえ別に、「じゃあ働かないでいいや」とはならないとは思いますが。

元々この25条にしても、働きたくとも働けない人を救うという意味合いが強いわけでしょうし、怠け者でいてもよいというわけではないのでしょう。

先程例に挙げた「働かざる者食うべからず」というのもそうです。

起源を辿れば新約聖書の一節であるこの言葉における「働かざる者」というのは、どうやら「正当で有用な仕事に携わって働く意思をもたず、働くことを拒み、それを日常の態度としている」という感じの解釈がなされているのだとか。決して社会的弱者を批判するための言葉ではないという事です。

どうでもいいですが、飽食の時代である現代ならともかく、新約聖書などというものが作成された1500年以上も昔の時代にあっても「働かざる者」が存在するというのは、なんだかちょっと面白いですね。時代が変わっても、個人単位での人の認識というのはそうそう変わりはしないのですね。

話を元に戻しますが……つまりは文化。

働くも自由、働かないも自由。

けれどもいずれにしても、文化的ではありたいですよね。

文化的であるという事は、理性や知性を保つという事。せっかく物理的な闘争の無い時代に生まれたのだから、思いっきり文化に傾倒したいものです。

以上、普段より2割くらい増しで文化的な記事でした。

さて、この日は文化の日であると同時に、漫画の神様である手塚治虫御大の誕生日でもあります。

手塚作品でわたしが一番好きなシリーズものは「三つ目がとおる」ですが、二番目は「火の鳥」です。よく学校の図書室に置いてある漫画なのでご存じの方は多いでしょうが……言うまでもなく名作です。

1巻は「黎明編」。邪馬台国が栄えていた神話の時代の物語です。

2巻は「未来編」。コンピューターが支配する五つの都市と世界の終わりを描いたSF大作です。

次以降は文庫によって順番が異なるようですが、基本的には過去→未来→少し過去→少し未来→……と、時系列が振り子のように交互していく方式です。

なので未来の時系列で出てきた特徴的なキャラクターが、連載順が後の、過去の時系列でのお話において初期設定を引っ提げて登場する事がしばしばあり、クロスオーバー的な面白さがあります。

しかしそれはあくまで副次的なもの。本来の「火の鳥」の魅力は、一つの編で完結している物語性です。

お話によって設定が異なる火の鳥ですが、共通しているのは「永遠の生命を持つ事」です(ギリシャ・ローマ編は除くとして)。対して物語そのものは、人間の生命の儚さや諸行無常さ、子々孫々と血筋が繋がっていく事の尊さが存分に語られます。

子どもの頃はただただ表面的なストーリーの面白さだけに目が行きますが、大人になってそういう情緒が発達すると、一層深みを感じられます。

過去編では、歴史上に実際に存在していた人物がモデルないしはその人物そのものとして登場するため、その部分の歴史や偉人のエピソードを知っていればいるほど、物語がさらに面白くなります。

未来編では、SFチックなエピソードやどんでん返しな結末が数多く仕込まれており、そもそもストーリーが非常に秀逸です。子どもの頃には気が付かなかった暗喩的な部分が多く、新たな発見が期待出来ます。

残念ながら作品通してのストーリーは「未完」という事になっていますが、一つずつのエピソードがすさまじく面白いので、全く気になりません。

間違いなく文化的なので、この日に読んでみると良いでしょう。

わたしのオススメは「鳳凰編」です。奈良時代が舞台なのですが、物語を紡ぐ二人の男の対極な生き方が非常に魅力的で、何度も読み返したくなる魅力があるのです。この一冊だけでも読んでみると、世界が変わるかもしれません。

そういうわけで、明日は文化の日。祝日ですし、存分に文化的な生活を楽しみましょう。

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