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昭和生まれゲイと男子大学生の実話⑥ 好きの理由

好きに理由はいらない。
というのが私の考えだった。
好きな食べ物だって、
別にいちいち理由を考えない。

例えばカレー。
味が濃くて、スパイシーで、
ご飯がぺろりと
食べられるから好きです。
みたいな。

誰もそんなこと
いちいち考えていない。

だけどやっぱり恋愛において、
”好き”に理由は必要だったと思う。
それも、心のどこかで
つながれるような理由が。

私は彼の
賢くて
思いやりがあって
純粋で
かわいくて
しっかり者で
家族や友人が大好きで。

そんなところが好きだと思った。

でもよく考えたら
それは単なる憧れと嫉妬に
近い感情だったかもしれない。

私には無いもの。
私が欲しいと思ったもの。
それを全部彼は持っている。

と思い込んでいた。

私は彼になりたいとすら思っていた。

嫌だったこと。
受け入れなかったこと。
探せばそちらの方がたくさんある。

嫌いな食べ物が多くて
箸の持ち方が変で
変なテンションで
急に叫びだしたり
踊りだしたりする。

人の悪口が多くて
私が聞きたくないと言っている話を
いつまでも続ける。

ちょっとしたことで
不機嫌になってせっかちで
人のペースに合わせられない。

そして
他人の考えに合わせて
嘘をついてしまう。

些細な嘘も繰り返せば信用を失う。

それを全部見ないようにしていた。
そういうところも全部愛さないと
一緒にいられないと思っていたのかもしれない。

でもどうして
一緒に居たいと思ったのだろう。

やっぱりただの
性欲だったのかもしれない。

若い男にちやほやされて
ぬくもりをくれて。

それを愛だと勘違いして

すがっていたのかもしれない。


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