128 / 字を真似る
中学の頃先生に、「お前はヨツダの字を真似して書いてるだろ。自分の字を書け」とひどく怒られたことがある。
ぼくは、同級生のヨツダ君の字に感動して、「オレもこんな風に字を上手にかけるようになりたい!」と思い、ヨツダ君の字を真似するようになった。
解答用紙に書いてあるぼくの字が、ヨツダ君を意識しているとバレて、呼び出されて、怒られた。ぼくは泣きながら謝った。
未だに納得がいかない。
人の字を真似するということのどこがダメなのか。赤ちゃんの頃から、人は誰だって、真似をするという学習プロセスを経て成長してきた。
もっと字が上手くなりたいという向上心を持って、誰に言われたのでもなく自分から真似に取り組んでいる生徒に対して怒るということが、果たして教師として正しいことだろうか。
くそ。納得がいかないな。
納得がいかないので、
ぼくはマサヒコ君の字を真似するようになった。
ぼくとヨツダ君とマサヒコ君の字が混ざり、オリジナルの文体が完成した。先生には何も言われなくなった。そして、おかげでぼくは字がある程度上手くなった。
大人になってからも字を褒められることが増えたし、字を書くという行為そのものにぼくは快感を感じる。それに、目には見えない自分の心を文字にするというのはとても健康的な活動だ。
もう、ぼくの字に文句をつける先生はいない。
ぼくは自分の字を、好きな時に、好きなように書く。
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