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【2021ドラフト】ルーキーたちのカコ・イマ・ミライ〈外野手編〉

2021年ドラフトでオリックスが支配下指名した選手の、アマチュア野球時代〜プロ1年目を振り返るnoteです。
投手編はこちら👇🏻

内野手編👇🏻


④ 渡部 遼人(わたなべ はると)

経歴:桐光学園高→慶應義塾大→オリックス
出身:東京都調布市
投打:左投左打
ポジ:外野手
一軍:16試 .059(17-1) 0本2点 OPS.170
二軍:79試 .259(294-76) 1本26点 OPS.659

📸:@marimura_

50m5.8秒・一塁到達タイム3.5〜3.7秒の圧倒的な脚力を持つスピードスター
その圧倒的な脚力では、オフェンス・ディフェンスともに誰よりも走り輝きます。打っては三遊間方向に放たれた打球の多くを内野安打に変えてしまい、走っては東京六大学野球で盗塁成功率100%(24-24)、守りでも打球勘の良さも合わさって、0ステップから動き出す広大な守備範囲を武器に、脚で六大学を席巻してきました。正に「走」に関してはアマチュア球界でも屈指の選手だったと言えるでしょう。
社会人野球の名門・ENEOSへの入社が内定していた中での指名であり、オリックスからは「是が非でも渡部に来て欲しい!」という期待が詰まった4位指名となりました。

オリックスでの1年目は、全ての面で課題が見つかった1年間になりましたが、それと同時に随所に光る部分が見られた1年とも思います。

打撃では、インコースのストレートに対して軸回転して角度をつける技術が高く、このゾーンでは度々強い打球が見られたため、得意コースのように見受けられました。170cmと小柄な体格故に身体操作性に優れており、鋭いボディーターンと背筋を有効に使えていることが噛み合うのが現状では左投手へのインコース140km/h代のストレートではないかと思います。
打撃タイプで見れば、このゾーンを引っ張れる福田 周平選手やソフトバンク・周東 佑京選手が将来像のように感じます。

一方で、それ以外のゾーンに関しては非力さが否めない印象。特に腕力が必要なアウトコースへの打撃では左右投手問わず非力さが顕著で、「強く引っ張る打撃」に不足があります。
当て勘が良くヘッドを逆方向に向けて流したバッティングができる渡部の器用さは、引っ張れる打撃があってこそ活きるものであり、そうでない選手の器用さは三遊間寄りに浅く守られると太刀打ちできなくなってしまうため、「引っ張れる打撃」ができるフィジカルパワーや技術が必要になるでしょう。
現状では、速度・強度の高いボールを外角に集められる一軍クラスでは太刀打ちできなさそうで、現在二軍では一定の成績が残っているものの、打撃面ではまだまだ課題が明確に残っている選手だと感じました。

とはいえ、2月の春季キャンプではバットが波打っていたシーンも見られたので、その頃と比較すると少しずつ登っているようにも見えます。
プロの捕手のスローイング精度の高さ(≠地肩の強さ)や自身が増強過程にあることも相まってか、「失敗しない」とさえ言われた盗塁の面では一軍・二軍ともに盗塁成功率50%程度に留まっていますが、フィジカル増強とアジリティの両立はできると思うので、"新たな身体" が馴染んでくれば少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

守備でも、特にシーズン序盤はプロ野球の打球の速さに戸惑う場面が見られましたが、守備位置から離れた打球に対しては一直線に向かったり、反対に伸びてくる打球に対しては距離をとって半身で捕球できたりと、捕球パターンが豊富で外野守備で応用が効く選手ではないかと思います。
この辺りの打球への慣れや球際への強さは実戦経験を積めば伸びていく部門だと思うので、これから守りでの貢献が益々増えてくるのではないでしょうか。

⑤ 池田 陵真(いけだ りょうま)

経歴:大阪桐蔭高→オリックス
出身:大阪府和泉市
投打:右投右打
ポジ:外野手(両翼)
一軍:6試 .150(20-3) 0本1点 OPS.300
二軍:103試 .239(327-78) 4本32点 OPS.666

📸 @marimura_

当日のドラフト会議での流れや、身長が173cmと小柄でプロ野球では中距離打者にカテライズされる可能性もあること、守備位置が両翼専門(大阪桐蔭高ではCFも脚力・スローの強さ・判断能力等を鑑みると適性は薄い)になる可能性が高かったことなどが響き、ドラフト5位での指名となった池田 陵真。
しかし、オリックススカウト陣をもってして『5位まで残っていたことが驚き』とされるほど、打撃面での評価は元々高く、個人的にも『彼が5位で取れていいんですか…?』とスカウト同様に驚いた記憶があります。

そして、彼は高い打撃の評価を裏切らないバッティングセンスを1年目から見せてくれました。

阪神・森木 大智(19)投手や才木 浩人(24)投手、ソフトバンクの杉山 一樹(25)投手を筆頭に、当たり前のように155km/h前後のストレートと大きく高速変化する球を持つ投手が多く居るウエスタン・リーグ。
(幾ら大阪府の高校野球レベルが高いとはいえ)高校生とは比較にならないほど高い実力のリーグに身を置く中で、12球団の高卒ルーキーで唯一二軍規定打席に到達するほど試合に出場し、.239(327-78) 4本32点 OPS.666の成績を収めました。

そもそも大抵の高卒ルーキーは、二軍とはいえプロ野球水準で戦えるほどのフィジカルを持っておらず、まずはそこを鍛える所から始まるのでどうしても1年目の出場機会は少ない傾向があります。規定打席どころか、一軍・二軍を通じて100打席以上に立てた選手も11名と少ない結果に。
その中で、もちろんオリックスの指導方針もありますが、まずは高卒1年目から試合に出し続けても大丈夫と判断され、また故障離脱することなく試合に出続けて応えた彼のフィジカルを評価すべきでしょう。

100打席以上の高卒ルーキー打撃成績。
阪神・中川 勇人(京都国際)は103打席で基準到達。
ロッテ・松川 虎生(市立和歌山)は一軍での打撃成績。


そして、高卒1年目から試合に出続けたこともすごいのですが、. 239(327-78) 4本32点 OPS.666と凡そ「高卒1年目」とは思えない好成績だったので尚更凄い話です。確実性・長打力ともに既に適応している時点ことはもちろん、特筆すべきは、IsoDが.106と捉えるボールの取捨選択や選球が既にできていることでしょう。
ここでいう凄さは、「フォアボールを選べている=指標的に良い」みたいな話よりも、既に150km/h以上ならいつでも投げられる投手が多く居るウエスタン・リーグの球速水準にも適応できている彼の打撃スキルの高さです。メカニクス的にもかなり洗練された選手なので、大崩れしなさそうなのも良い部分ですね。

守備力がLF/RFと限られるうえにその守備力も高くなく、決して鈍足ではないですが脚で勝負できる選手ではないため、分かりやすく「打つ」こと一択で存在価値が決まるタイプです。
自身の選手タイプが限定されている中で、主軸の吉田 正尚選手や杉本 裕太郎選手、外国籍選手との争いに殴り込み、出場機会を掴めるかが全てでしょう。

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