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【2021ドラフト】ルーキーたちのカコ・イマ・ミライ〈捕手・内野手編〉

2021年ドラフトでオリックスが支配下指名した選手の、アマチュア野球時代〜プロ1年目を振り返るnoteです。
投手編はこちら👇🏻

② 野口 智哉(のぐち ともや)

経歴:鳴門渦潮高→関西大→オリックス
出身:奈良県橿原市
投打:右投左打
ポジ:内野手(SS/2B/3B)・外野手
一軍:54試 .226(155-35) 1本   6点 OPS.561
二軍:45試 .245(155-38) 4本 20点 OPS.758

走攻守に無限の可能性を秘めた「ポテンシャルの塊」のような選手が、関西大からオリックスへ加入しました。

打撃では、投手側に極端に入れ込むヘッドの使い方から凄まじい速さのボディーターンとスイングスピードでライナーヒットを量産する天才肌。
守備では谷口スカウトをもってして「アマチュア野球で1番」と評される強肩を武器に、三遊間の厳しい打球も持ち味の身体能力でアウトに変えてきました。
天才的な肌感覚×驚異的な身体能力を兼ね備え、NPBまで駆け上がってきた "ポテンシャルモンスター" の枕詞が1番似合う選手だと思います。

彼がすごいのは、天才的な肌感覚×驚異的な身体能力で基本的になんでも "できてしまう" ことでしょう。器用にそつなく熟しているというより、身体能力でどうとでも "なってしまう" ほどの理不尽なポテンシャルを持っている感じだと思います。
体育の授業で教えてすらないバク宙が1発でできるような子っぽい。笑(ぼくには無理です😂)

昨今の投高打低のパ・リーグにおいて、(三振率などの細かい部分はさておき)大卒1年目から150打席以上立って一軍で打率.226は、まずまず通用できている部類といえるでしょう。

ゾーン別の打撃では、特に高めのボールに対して全体的に相性がよく、NPB一軍レベルの投手が多く投じる高めの強いボールに対しても振り負けない、強靭なフィジカルパワーやスイング時の回転運動の鋭さ、スイングスピードの速さがこの要因になっていると思われます。
球速帯が一軍よりは落ちるウエスタンでは、極端な打者地獄の舞洲を本拠地に置くにも関わらず、4本塁打・長打率.387・OPS.758と押し負けずに弾き返せており、対ストレートに関しては十分に一軍でも勝負をかけられる能力があると思います。
スイングスピードが早くギリギリまでボールを見極めても間に合うため、二軍ではIsoD(出塁率-打率)が.126もある(打率.245 出塁率.371)ことも特徴。
将来的には、出塁能力・打撃力・走力を兼ね備える総合力の高い中距離打者として武器にしていきたい選手です。

🔗https://baseballdata.jp/playerB/1751068_course.html

一方で課題として浮き上がってきたのが、ローボール、特に変化球に対しての対応力。
一軍では三振率.335(167-56)とかなり高い数値。また、56三振のうち39三振(70%)がストライクゾーン低め〜ボールゾーンに掛けてのものと考えると、一軍投手の変化球の強度・精度の高さに対するアプローチはかなり粗め。

野口選手の場合、低めの変化球に対しても下半身で壁を作って待つ動作がなく、腕力を頼りにバットを操作しようとする傾向が見られます。
"ゾーンに残ってしまった" 変化球に対してはバットが届いて合わせられるので華麗なライナーヒットになるのですが、低め〜ボールゾーンまで落とすことができればバットまで届かないため、重心が高く力の抜けた弱いスイングでノーチャンスなことが多いです。

二軍投手が相手であれば、投手側も「届かないゾーンに投げきれない」精度の低さを課題とする投手が多いため、課題を抱えていてもある程度の数値は残る傾向があるのですが、一軍のように高い精度で投げる舞台では粗さが目立ってしまうのが現状ではないでしょうか。

📸 @marimura_

守備位置は、ショートを中心に、セカンド、センター、サードと複数ポジションを熟しました。この辺りにも彼が「器用になんでもできる」素質があることを表しています。

ショートとしての姿は、身体能力先行で粗い面も多く見受けられますが、そもそも肩が圧倒的に強いことと、本拠地が大阪ドームかつ他球場もアウェー楽天戦(と交流戦の阪神・広島戦)以外はほぼ人工芝球場であるため、粗くとも形にはなるのではないかという印象です。

セカンドとしての姿は、正二塁手・安達 了一(35)選手の休養日に起用される機会がありましたが、基本的にSS/3Bでの起用に慣れてきた選手なので、ボディーバランス的にあまり得意ではないように見えました。
緻密な動きを得意とする選手でもないため、チーム事情で守りはしているもののプラスを生み出すポジションではない印象です。

センターでの守備はかなり軽快。
軽く投げても矢で射るような低く強い送球(肩の強さ)が行く、脚力・加速力がある分捕球範囲が広い、といった身体能力の面に加え、正面後方の伸びる打球にも迷わず一直線に打球に入れる判断力の良さが1番印象に残っています。
もっとも、同じく出塁能力・打撃力・脚力を備えた杉澤 龍(CF¦176cm)選手が東北福祉大から加入したこともあり、しばらくはセンター起用は減るように思います。

③ 福永 奨(ふくなが しょう)

経歴:横浜高→國學院大→オリックス
出身:神奈川県横浜市
投打:右投右打
ポジ:捕手
一軍:5試 .125(8-1) 0本 1点 OPS.250
二軍:85試 .206(199-41) 1本16点 OPS.581

📸 日刊スポーツ様

大学時代は、古賀 悠斗(中央大▶︎西武)選手や久保田 拓真(関西大▶︎パナソニック)選手に次ぐ評価が大筋の評価でした。
とはいえ、本番では彼らよりも早い(大卒捕手では)最速の指名であり、オリックス球団は彼の指名に確たる自信を持っていたように見えます。
特に評価の高かった「人間力」と「肩の強さ」の2点は、教えて伸びるものではない "天性の魅力" とも言われており、彼の大きな魅力でしょう。

セガサミーに入社した高本 康平選手の後を受け、3回生の秋からレギュラー捕手の座を手にし経験を積んできました。始めはバッティングの確実性に苦労し、20年秋は.160(25-4)、いずれも全て単打と苦しみますが、一旦トップを置いてから振り下ろすスイング改造が功を奏し、4回生のみで3本塁打・5二塁打と身体に秘めた長打ポテンシャルを開花させました。
打順も当初の9番から4番にまで上げ、川村 啓真(西武を自主退団)元選手、山本 ダンテ武蔵(パナソニック)選手らとともに強烈なクリーンアップを形成するほどに成長。セガサミーを経て6位指名された横山 楓選手とは大学の先輩後輩で、OP戦等でも何度か組む機会がありましたね。

この選手の良い部分は、攻守に活きるフィジカルの強さ。
175cm87kgと筋肉で引き締まった肉厚な身体を持っており、「2枚看板」としてチームを連覇&日本一に導いた若月 健矢選手が180cm88kg、伏見 寅威選手(23年より日本ハムに移籍)が182cm87kgと、彼らと比較しても遜色のない逞しさをしています。

このフィジカルから繰り出される2塁送球1.8秒〜1.9秒代の低く強いスローイングが1番の武器。
ただ単に肩・上肢が強いだけでなく、体幹が安定しているからこそ大きく横にブレることが少なく、高い再現力を持って盗塁を刺すことができています。二軍での盗塁阻止率は.400(55-22)。

打撃は一長一短。芯で捉えたときの長打力が魅力的な一方で、大きな並進運動で体重ごとぶつけにいくことから確実性は低め。
「当たれば飛ぶものの当たる確率は低い」といった9番・捕手の打撃像が強く、特段大きなアドバンテージを生み出す選手ではないものの、甘く入れば大事故に繋げる長打力があることから、伏見 寅威選手のような強肩・長打のリーダーシップを持った姿が想像できます。ただし、二度引きのような打撃はストレートへの振り遅れを生むことが多く、この辺りは改善点ではないかと思いました。

一方、アマチュア時代は "ディフェンス型捕手" という評価を受けていたものの、プロ1年目は守備に大きな課題が出る結果に。
捕手失策6・パスボール7と、捕球技術やブロッキング、盗塁阻止の動作とは別の部分での送球動作にはそれぞれ粗さが目立ちました。
捕球では低めの変化球に対して "上から下" へ被せて捕る動作(いわゆるバッタ捕り)が見られ、決め球にフォークを要求しながら後逸し振り逃げされるetc捕球動作は全般的に改善が必要でしょう。
捕球動作自体はもちろん、グラブだけで球を追わずに身体を入れて前に弾く脚の捌き方や身体の向け方など細かいスキルを、プロ野球のスピードでも遂行できるよう、地道に数を重ねていく必要がありそうです。

捕手失策に関しては、走者を刺そうと投げて悪送球…という形が見られました。
しかし、守備機会505に対して補殺が70もあることが示すように、捕手としての視野が広いが故に飛び出しているランナーを刺そうとして悪送球するなど、"視野が広いからこそ" という教えても中々できるものではない捕手スキル(俯瞰的な視野)を備えている彼の良さを示すものでもありました。
もちろん、技術的改善点はあるでしょうが、この7失策の中には「高いレベルのことをしようとしている」裏付けでもあるのかなと感じています。

西武からMVP経験者の森 友哉選手が移籍してきたこともあり、まずはディフェンスで出場機会を掴むところから始まるでしょう。
かつての伏見選手も、ディフェンスが難があるところから懸命な努力で1億円プレイヤーまで成り上がりました。福永もまた、人間力と愚直な努力で一軍を掴み取って欲しいところです。

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