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【Bs投手分析】先発編:充実布陣のその先へ

このシリーズも4年目に突入しましたね😂
そうです、毎年恒例にしている投手陣分析チャートです。

多角的な視点とデータ分析で、今や中日新聞社やSLUGGERさんなどで記事を執筆、今や中日界隈どころかプロ野球界隈をも牽引するロバートさん(@robertsan_CD)が、2019年度オフに作成した【ロバートさん式先発マッピング】。
投球イニング・QS率からそのチームの先発投手層を分析し、その結果によって個人・チーム単位での先発健康度を測れるというものです。

お若。も、毎年この指標を使わせていただいており、今年もオリックスの先発陣を考察させていただきました。
今作は2022年の答え合わせと2023年の先発投手の展望noteになります。

2022年度版はこちらです👆

1.2022年度の振り返り

2021年との比較。
山岡投手の復帰は大きな上積みだった。

2連覇&日本一と、遂にプロ野球の "頂" に立った2022年のオリックス。それを中心になって支えたのは磐石な投手陣であり、先発陣もその磐石の一翼を担っています。

今年も中心は、投手4冠(最多勝・最優秀賞防御率・最高勝率・最多奪三振)にMVP、沢村賞とタイトルを総なめにした、大エース・山本 由伸投手でしょう。

22年シーズンは、26試合で15勝5敗・193イニング・205奪三振 防御率1.68と、正に「由伸無双」と言える圧巻のスタッツ。
この中でも特筆すべきは、26試合中21試合(81%)で7イニング以上を投じ、うち7試合(27%)では完投したという恐るべきイニング処理能力です。
オリックスの「暴力リリーフ陣」とされる選手たちはいずれも経験が浅く、また速い球を投げるということで肉体的負荷も心配される中ですが、彼が毎週のように長いイニングを投げて中継ぎ陣を休ませることができたという点で、中継ぎ陣の負担軽減にも余りにも大きな貢献だったと言えるでしょう。

2021年は、開幕直後に中5日起用が続いたこともあり、5月に1勝3敗 防御率4.10と打ち込まれた時期がありましたが、今季は調子を崩す時期もなく、最初から最後まで好調を維持し続けたという点でも圧倒的で、年々穴のない選手になっている印象です。

山本 由伸投手の球種配分。
どの球もが決め球にもカウント球にもなる、
恐るべき総合力の高さである。

🔗 https://baseballdata.jp/playerP/1600153_4.html


オフの契約更改では、2年連続の投手4冠&沢村賞&MVPの活躍が評価され、球団史上最高額となる6.5億円での契約更改。
また、球団ともポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ移籍についても言及し、米誌「ニューヨーク・ポスト」からも、彼のMLB移籍の可能性について述べられるなど、こちらも順調なようです。
"U25ルール" の対象外となることや、国内外の関係者の発言など、諸々を照らし合わせると、大きな故障などがない限りは、オリックスでのプレーは今年がラストイヤーとなり、2024年からはメジャーリーグに活躍の場を移す可能性が高いと言えます。

※U25ルール…25歳以下のアメリカ人以外の選手と契約する際は、年俸・契約金などを総額で約5億円程度に抑制し、かつマイナー契約スタート、メジャーリーグ昇格1年目の年俸は約7,000万円ほどになるルール。

流石に彼には及びませんが、それでも十分に「エース格」と呼べる活躍をしたのが、高卒3年目ながら主力として定着した宮城 大弥投手です。

シーズン序盤こそ、スライダーやフォークなど変化球を制御できず、甘いコースに投げて打ち込まれるなど厳しい場面もありましたが、状態が良くない日や審判との相性に苦しむ日でも、試合を壊さずに6イニング・100〜110球を投じ続け、最終的には24試合で11勝6敗 防御率3.16と「計算できる左腕投手」として2年続けて立派な成績を残しました。

この世代は、完全試合を達成した "令和の怪物" こと佐々木 朗希(21=千葉ロッテ)投手が目立ちますし、彼のような大衆受けする迫力のあるボールを投げることもないですが、プロ野球の長いシーズンを戦うにあたって必要な、「Unbreakable」(壊れない)「Reproductive」(再現力)の2つの重要な要素をとても高い水準で兼ね備えていて、若いながらプロ野球界への適応の素晴らしさを感じる、とても素晴らしい選手です。身体が大きくなくても、彼のような選手が活躍できるのは大きな希望だと思います。

また、社会貢献活動にも積極的で、自身が幼少期に貧しい中で野球を続けてこられた経験をもとに、将来を経済的理由で断念しないようにサポートしたい、という目的で、「宮城大弥基金」を設立しています。同級生の正ショート・紅林 弘太郎選手との絡みなど、人間的な魅力に溢れていて応援したくなる選手です。

また、2021年は右肘痛で長期離脱を余儀なくされた山岡 泰輔投手が、22登板で6勝8敗 防御率2.60と先発投手として復帰を果たしています。昨年からの上積みという点では、単純に考えて「ローテーション投手が1枚増えた」ことと同義なので、10勝・規定投球回クラスが計算できる山岡の復帰は本当に大きかったです。
シーズン成績に直すと、6勝8敗と2桁勝利には足りませんでしたが、彼が抜群の投球(68イニングで8失点¦防御率1.21)を見せていた交流戦終わりまでのオリックスは、新型コロナウイルスの蔓延や主力選手の不振が相次いだことで得点力不足に喘いでいた期間であり、宮城 大弥投手も打ち込まれるケースが目立った中なので、山岡が苦しい期間を懸命に支えたことで、チームとして順位争いから脱落せず戦えたとも言えるでしょう。

他にも、シーズンを通して安定したピッチングを披露し、9勝3敗(現在8連勝中)防御率2.61のキャリアハイの成績を叩き出した田嶋 大樹投手や、日本シリーズでは大エース・山本 由伸の故障離脱の穴を埋める活躍で、チームを26年振りの日本一に導いた "ヒーロー" 山﨑 福也投手の両サウスポーの活躍も光りました。
良い意味で調子の揺れ幅が小さく、40-60%辺りのQS率を年間通して計測してくれる投手は、ローテーション編成において目処が立てやすく、彼らの存在もまた、優勝・日本一へ大きく貢献してくれました。

この年は、開幕前から大きな戦力流出もなく、またローテーション投手も20歳前半〜後半で固められているため、予定通りに強固な先発陣を形成することができ、それがパ・リーグ2連覇&日本一へ繋がったと言えるでしょう。
今季も大きな戦力流出が無いまま開幕を迎えることができそうで、大エース・山本 由伸投手が事実上のラストイヤーとなる今季を1つの「山」として、パ・リーグ3連覇&連続日本一と行きたいところです。

2.2023年度の見立て

まずは2022年から2023年に掛けての先発スタッフをおさらい。

ここ2年は谷間の先発投手として、チームの窮地を救ってきた増井 浩俊投手が、昨シーズン限りで現役を引退(お疲れ様でした!👏)。
戦力外通告を受けた中村 勝投手も、北海道独立リーグへの移籍が決まりました。
また、外国籍選手のジェシー・ビドル投手とセサル・バルガス投手も退団となっています。
注目は、ドラフト1位ルーキーの椋木 蓮投手の育成選手への移行。右肘内側側副靭帯再建手術(トミージョン)の影響により、23年度はシーズンアウトとなるための措置ですが、後述しますがこれは今季のチーム編成に影響を与えるかもしれません。

一方、補強としては、高めのストレートとバルカンチェンジのような軌道を描くチェンジアップの組み合わせが武器の、ジェイコブ・ニックス投手を獲得。 外国籍選手枠の有効活用(一軍登録5・試合出場4)を目的に昨季獲得した、ジェイコブ・ワゲスパック投手が中継ぎに落ち着いたため、再度有効活用を狙って先発投手を獲得した形になるでしょう。

また、ドラフト1位で曽谷 龍平投手(白鴎大)を獲得。身体の強さを活かした上腕主導のフォームから、150km/h前後のストレートと手元で動くカットボール・ツーシーム・スプリットなどを投げ分ける剛腕左腕で、彼を初めて観た4月の試合(白鴎大vs新潟医療福祉大)では「メジャーリーガーみたいだ」と感じた記憶があります。
ドラフト3位の齋藤 響介投手(盛岡中央高)、ドラフト5位の日髙 暖己投手(富島高)もまた、先発投手としての適性を探ることになりそうです。

白鴎大時代の曽谷 龍平投手
📸:@marimura_


今年も投手陣の中核となるのは、大エース・山本 由伸投手と、若き左のエース・宮城 大弥投手の日本代表コンビでしょう。共に2年連続で規定投球回超え&QS率60%超えの「エーススタッツ」を残しており、大きな故障離脱などがなければ高い確率で10〜15勝、150〜200イニングを計算できそうな彼ら2人の存在は、チームにとって大きなアドバンテージになりそうです。

また、年々着実に成績を伸ばしながらも、毎年 "あと一歩" で2桁勝利に届いていない、田嶋 大樹投手の「殻を破る」活躍にも期待。
彼は、驚異的に柔らかい肩関節周りを活かした低いアームアングルが特徴的の左腕で、特にカットボールは左打者の想像よりも大きく・鋭く逃げるような球で魔球になっています。また、低いアームアングルの左投手では珍しい、鋭く落ちるフォークを持っていることも、左打者相手に強い要因でしょう。
このため、左のコンタクトヒッターが多く並ぶロッテや楽天、ソフトバンクとの相性が良く、ロッテには3試合で防御率1.99(22.2イニング)、楽天には9試合で防御率2.28(55.1イニング)、ソフトバンクには5試合で防御率1.99(23.1イニング)と安定した成績を収めました。
一方、左打者でも左方向に強い打球を放つ柳田 悠岐選手(35=ソフトバンク)や、右の強打者・浅村 栄斗選手(32=楽天)らには相性が悪く、初の規定投球回到達&2桁勝利には、苦手な相手でも「壊れない」結果を出せるかが鍵になるかと思います。

ここに加えて、右肘痛からの復帰を果たした山岡 泰輔投手、日本シリーズで敢闘賞を受賞した山﨑 福也投手、新外国籍選手のジェイコブ・ニックス投手ら、実績があったり "即戦力" として期待されている投手がおり、この6名を基本線に先発ローテーションが組まれることになりそうです。
※開幕時はWBCの影響で流動的

🌟2023年度予想先発ローテーション🌟
山本 由伸(25) 15勝5敗 193回 ERA1.68
宮城 大弥(22) 11勝4敗 148.1回 ERA3.16
ニックス(28) 新外国籍選手
田嶋 大樹(27) 9勝3敗 125回 ERA2.66
山岡 泰輔(28) 6勝8敗1HP 128回 ERA2.60
山﨑 福也(31) 5勝8敗3HP 114.2回 ERA3.45

※年齢は24年3月31日

また、中核を担う山本 由伸投手と宮城 大弥投手がWBC日本代表に選出され、蓄積疲労への配慮やボールへの再適応の時間を与える必要が出るため、中嶋監督は(御歳40歳を迎える平野投手と比嘉投手を除く)『全投手に先発調整』を発令。
中でも、念願の先発チャレンジとなる黒木 優太投手、2019年にはチーム3位の102.1イニングを投げた鈴木 康平投手、中継ぎとしてブレークも先発再チャレンジを狙う山﨑 颯一郎投手の3人が有力視されており、彼らの配置は1つ大きな注目ポイントでしょう。

この中で個人的に注目しているのが、黒木 優太投手の先発転向。2019年には、金子 千尋投手、西 勇輝投手(阪神)、ドン・ローチ投手らが一気に移籍したことで、先発転向が予定されていましたが、春季キャンプで右肘痛を発症しシーズンアウト(後にトミージョン手術)。この時叶えられなかった「夢」を4年越しに叶えるシーズンになります。
春季キャンプを観た感想ですが、中継ぎ時代には一発警戒のため分量を抑えていたカーブを、トップスピンの効いたパワーカーブ型(130km/h前後)に改良している様子が印象に残りました。1点が致命傷にはなりにくい先発では、積極的にこの球を使うことが予想され、フォークで仕留めることへ逆算する配球にもバリエーションが出るように思います。
ライブBPでは高めの失投を投げてしまう場面もあり、一発長打のリスクは有りそうですが、カーブ自体の球速・縦変化量が増しており、打者の目線を上下にズラす球・空振りを奪う球etc色々な面で重宝しそうです。

一方、二軍に目を移すと、191cm102kgの大型右腕・山下 舜平大投手が、一軍・二軍を昇降格しながら均一的な登板間隔で投げ、「シーズンを通して投げ続ける体力」「一軍で通用する部分/しない部分」を養うシーズンになりそうです。
球自体の破壊力は抜群で、2022年には二軍ながら35イニングで42奪三振(奪三振率10.7)を奪うなど大器の片鱗は既に見せ始めていますが、プロ入り後にも成長期が続き登板制限をしていたこともあり、実戦経験は少ない投手です。
プレーオフでの先発予定(4試合で突破したことで登板自体はなし)など期待を抱かせる面も大きいですが、まずは「球の強さに依存しない」投手としての在り方を作っていく、そのための一軍登板が見られる年になりそうです。

もう一人楽しみだったプロスペクトが、昨季のドラフト1位ルーキーの椋木 蓮投手。
先発マッピングでも19イニングながらQS率50%と、彼だけ異端な場所にプロットされていますが、それも頷けるような支配的な投球でした。
意図しない投げ間違いでさえも、球速・威力ともに力強いため、打者に強く飛ばさせるパワーを発揮させることなく被本塁打0。どの球でもストライクで勝負できて被打率.133、WHIPは0.91とプロの打者さえも制圧するほどの完成度です。
7月20日の日本ハム戦では、あと1球でノーヒットノーランまで行き、大いに期待を抱かせてくれました。

🔗 https://baseballdata.jp/playerP/1650221_4.html

が、オーバースペックな多彩な球に対してフィジカルが追いついていないのか、2月に左脇腹腹斜筋損傷、8月に右足首捻挫と故障離脱を重ね、9月には右肘痛でトミージョン手術を受け22年・23年度をシーズンアウト。
凄まじい支配的な投球と凄まじい故障離脱の多さの「光と影」の両面を見せつけ、ひとまず大きな期待は再来年まで持ち越しとなりました。

球団としては、椋木の投球を「即戦力」になりうるとして獲得し、実際に投げさえすれば即戦力以上の投球をしていたため、来年度に山本 由伸投手のメジャーリーグ挑戦と山﨑 福也投手のFA権行使での流出リスクを2枚抱えるオリックスにとって、この回り道は痛手になるかもしれません。

とはいえ、22年ドラフトでは3名の大型投手を獲得し、翌23年も常廣 羽也斗投手(青山学院大)、上田 大河投手(大阪商業大)、松本 凌人投手(名城大)、細野 晴希投手(東洋大)など、アマチュア野球界も久々の「投手大豊作」の年。

名城大・松本 凌人投手
📸:@marimura_

投手が育つ土壌があるオリックスでは、今年の強さはもちろん、山本 由伸投手のメジャーリーグ挑戦を見据えた『先々の強さ』、誰かが抜けても壊れない強さを求める1年にしたいところです。

パ・リーグ3連覇&連続日本一での「黄金期の証明」へ、先発陣の実は熟しています!😎

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