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【Bs投手分析】中継ぎ編:泣きのもう1回をモノにするのは誰だ?

今回も投手分析note、今度は中継ぎ編です。

引き続き、多角的な視点とデータ分析で、中日新聞にて記事を執筆するなど、中日界隈を牽引するロバートさん(@robertsan_CD)が、2019年度に作成した【ロバートさん式中継ぎマッピング】。
中継ぎ版では、登板数とHP+Sの合算値から、そのチームの中継ぎ投手層を分析する形式で、3年連続でオリックスの投手分析をしている形です。

今回は、2021年の答え合わせと、2022年の陣容を分析した、中継ぎ陣noteになります。

↑2021年度版はこちらです↑

1.2021年の答え合わせ

🔗 https://baseballdata.jp/p/

2019年から2年連続で中継ぎ防御率がパ・リーグワーストに落ち込んでいたオリックス。
ですが、ついに中継ぎ防御率でも最下位を脱出することに成功しました(といっても5位ですが😅)

まず光ったのは、中嶋 聡監督・髙山 郁夫投手コーチら首脳陣の「中継ぎ陣に3連投をさせない」絶妙な継投策。12球団で唯一3連投をすることなくシーズンを完走し、毎年のように見られていた台頭⇒酷使⇒破壊の負のループに終止符を打ちました。
巧みなブルペンワークで終盤までバテることなく完走し、劇的な丑年優勝に繋げたことは言うまでもありません。
先発編でも言及しましたが、山本 由伸(23)・宮城 大弥(20)ら強力先発陣の存在や、コロナ特例で延長戦が行われないレギュレーションだったことも結果的に追い風になったでしょう。

ただし、12球団でもトップレベルの投手運用を行いながら、中継ぎ防御率はパ・リーグ5位までしか "伸ばせなかった" と見ることもできます。
「ブレークが期待される」若手中継ぎ投手は多くいますが、ブレークして一軍戦力になった訳ではなく、一軍戦力になれる駒数をどれだけ増やせるかが大きな焦点になるでしょう。数が増えれば更に隙のない強力なチームへなるでしょうし、増えなければ昨季のように終盤の綱渡りを余儀なくされます。

2020年の中継ぎ陣

全体的な中継ぎ陣の浮き沈みとしては、MLB・マリナーズから復帰の平野 佳寿(38)が頑張りました。
アメリカ代表守護神 ブランドン・ディクソン(37=現カージナルス)が抜けた抑えの穴を、しっかりと埋める活躍で優勝に大きく貢献。
加齢に伴い渡米前ほどの球速・球威は色褪せたものの、カーブを効果的に織り交ぜほぼ1年間抑えを務めきりました。打たれても動じない貫禄の姿は、漆原・張奕・K-鈴木らへの大きな課題書でもあります。

また、チーム最多の51試合に登板したセットアッパー・富山 凌雅(25)の活躍も見逃せません。
2020年に中嶋監督(当時は代行)に見出され、今シーズンは結局一度も二軍に落ちることなく完走。疲労の山になった5月(9試 1勝0敗 ERA5.63)を乗り越えた後は吹っ切れて、6月からは35登板で僅か5失点の安定した投球で、若手中継ぎ陣の中ではただ1人立場を確立することに成功しました。
左右関係なく威力のあるストレートを連射し、ほぼ変わらないスピードのフォークをしっかりと落とすことでゴロを量産。制球力も安定しておりリスク管理の高さを証明したことがブレークの要因だと考えます。

また、敗戦処理からクローザーまで穴を埋める働きをした能見 篤史(42)や、左右の殺し屋 海田 智行(34)・比嘉 幹貴(39)のベテラン陣の要所での働きも目立ちました。
若い選手が揃う投手陣において、彼らベテラン投手が試合内外を問わず適宜アドバイスを送る姿もあり、単純な成績以上の面でも大きな貢献を果たしたと思います。

一方で、かつての中継ぎ陣を支えた黒木 優太(27)・澤田 圭佑(27)の同級生コンビは、相次ぐ故障離脱に悩まされ殆ど戦力になることはできず。
澤田は14イニングで14奪三振と、"サワネロ" と評されるような支配的投球も、投げられない時期が続き今オフに右肘のクリーニング手術。黒木もトミー・ジョン手術(右肘内側副靭帯再建手術)からの再起を目指したものの、今度は右肩を故障し登板0。
また、吉田 一将(31=BCL新潟に移籍)も球速面での衰えが隠せず戦力外通告を受けるなど、時代の移り変わりを感じる陣容になりました。

結果として、ブレークが期待される高いポテンシャルの若手投手は多いものの、殻を破って定着したのは富山ただ1人と不安材料が多く、抑えの平野も今期39歳と高齢なため、2021年度は中継ぎ陣の根本的な課題解決にはあまり繋がりませんでした。
一方で即行的な補強といっても限度があるため、中継ぎ陣のSTEP UPには「泣きのもう1年」を誰が掴み取るか?が焦点になるでしょう。

2.2022年の見立て

まずは2021-22年度の中継ぎスタッフをおさらい。
大きな痛手になるのは、セットアッパーとして29HPを挙げたタイラー・ヒギンス(30=MLB・パドレスに移籍)の流出でしょう。
新型コロナウィルスの影響で単身来日を余儀なくされたこともあり、単身だった時期は打ち込まれ、家族が来日すると無双状態とかなりメンタル面に苦労していたのかなと推測します。それでも、チーム最多の29HPを挙げ優勝に貢献してくれたのですから、個人的にはすごくありがたかった想いですね🥲

また、金田 和之(31)が三菱重工Westへ、鈴木 優(26)が育成契約で巨人へ、グレン・スパークマン(29)がKBO・ロッテへそれぞれ移籍しました。

一方で、補強としてはMLB・ブレーブスからジェシー・ビドル(31)を獲得。196cmの長身からえげつないくらい曲がり散らすカーブ・シュートの横変化が武器の投手ですが、制球力に一抹の不安。
決まるとMLBの一線級の打者もお手上げのボールを投じるだけに、期待とハラハラが詰まっているのかなと推測しています😂

ドラフトでは、東北福祉大より椋木 蓮(22=ドラフト1位)が加入。
セガサミーより横山 楓(24=ドラフト6位)、TDKより小木田 敦也(23=ドラフト7位)がそれぞれ移籍加入。

椋木は、ロースリークォーターからスピンの効いたMax154km/h Ave150km/hのストレートを投じ、変化球もスライダー・チェンジアップを始め空振りを奪える質の球を複数保有するなど「ドラフト1位」に相応しい大型投手ですが、インナーマッスルの弱さや負荷点の集中など故障耐性が弱い節が伺えるため、開幕からすぐ中継ぎ・抑えというよりは、少し長い目で観る必要がある選手でしょう。
逆に言えば、身体ができてくれば十分一軍でも勝負できる球質の選手だと考えています。

横山は、タイミングを取りにくいショートアーム型フォームから、スピン量の多いストレートとフォークを武器とする「縦変化で勝負する」パワーリリーフ。
変化球の制球面に課題が残り、年齢・投球スタイル・利き腕のどこを見てもK-鈴木・漆原・張奕と被る選手なので、誰がこの競争から抜け出すかに注目です。

Wikipedia

ーーーーーー2022年度中継ぎ陣予想ーーーーーー
能見 篤史(43) 26試 0勝0敗2S 4.03  左
吉田 凌(25)    18試 1勝1敗0S 2.12  右
漆原 大晟(26) 34試 2勝2敗2S 3.03  右
J.ビドル(31) ーーーーーーーーーー  左
山田 修義(31) 43試 1勝0敗0S 2.27  左
村西 良太(25) 18試 1勝0敗1S 3.75  右

7富山 凌雅(26) 51試 2勝1敗0S 2.72 左
8平野 佳寿(39) 46試 1勝3敗29S 2.30 右
9鈴木 康平(29) 34試 0勝1敗2S 3.03 右

※年齢は2022年シーズンに迎える
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やはり1番の注目点は「8回・9回を誰が担うか?」の中継ぎの顔になる部分でしょう。
昨季は38歳の平野が抑えを全うしましたが、中嶋監督が『根本的に(抑え問題が)解決した訳ではない』と断言するように、後継者の台頭が今すぐにでも望まれるところです。

(平野を除いて)その抑えの座に1番近いところにいる選手がKー鈴木(鈴木 康平(29))。
オリックス日本人歴代最速の158km/hのストレートを武器にする投手ですが、パフォーマンス発揮に波があり、いわゆる0か100か?とされる投手。
1番嬉しかったのは、『自分のボールに自信が持てないことがあった』と正直に告白していた低迷時の姿を脱却し、『ヒギンスが抜けたので8回を狙っていきたい。30ホールドを超えたい』と力強く宣言している姿です。
ネガティブシンキングで「抑えなければ…」と削る思考になり、相手打者よりも自分で選択肢を狭めて打たれたところから、ポジティブシンキングで「打ってみろや!」と考えられるようになれば、ぼくは昨年の機会失敗は無駄ではなく寧ろ価値があると思います。
OP戦では8回平野・9回Kー鈴木を軸に模索中。打たれた後にどう切り替えられるかに1つ注目ですね😊

また、個人的に今シーズン注目している選手が、村西 良太(25)。昨シーズンは比嘉 幹貴が故障離脱している期間に右のワンポイントリリーフを務める機会が多かったですが、常時150km/h超のストレートを投じるうえ、サイドスローにも関わらず落差の大きいフォークを操る個性もあり、ここは左右関係なく有効な武器になれるでしょう。
カットボール・スライダーで役割を補完し合い、スライダーとカーブの役割を持たせているのも面白い点です。
ただし、2021年シーズンは12イニングに対して被安打15・四死球11と「どうして防御率3.75で済んだのか怪しい」ツキもありました。この手の投手は高低を間違えるとハードヒット(どころか一発長打)のリスクが高くなるため、今季の飛躍の鍵は横幅を "拡く" 見せて勝負するゾーンを拡げられるかにあると思います。ストレート・変化球ともに横のボールゾーンを振らせられるようになると、一気に成績も残るのではないでしょうか。特にスライダー(カーブ)ですね。

Photo-supported by @marimura_

中継ぎ陣は全体的に計算できる選手が少なく、屋台骨を担う選手の流出や高齢化も起きているので、整備には少し困難な道のりが予想されます。
とはいえ、若手中継ぎ投手のポテンシャルは高く、(変則タイプの齋藤や中川颯を除く)全員がいつでも150km/h以上を出せるような状態なのは悦ばしいこと。昨年1年で誰もが「あと一歩を乗り越えれば主戦格」というところまで来ているので、泣きのワンチャンスをモノにする覚悟で立場を確立して欲しいですね。

昨年は、強靭な先発陣がチームを引っ張ったことで中継ぎ陣は「助けられる」形が多かったですが、中継ぎ陣の台頭も絡めば『真の投手王国』を創りあげられるのではないでしょうか。
K-鈴木を筆頭にブレークはもうすぐそこだと思います😊

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