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出る杭になりたいならコスパ思考を捨てろ

はじめに

最近の若者は、コストパフォーマンスを重視する傾向にあると思う。コストパフォーマンスとは日本語でいうと費用対効果、つまり「効率」のことをさすわけだからコストパフォーマンスを重視することは効率的、ひいては合理的な行動に繋がるので、良いことである。

しかし、コストパフォーマンスをいつも重視する人は大抵「出る杭」、つまり「ひときわできる人間」にはなれない。今更感情論、精神論を展開しても仕方がないとは思いつつも、若干精神論の様相を呈すかもしれないが、できるだけ論理的に展開することを試みる。

なぜ高コスパは良いのか?

我々が日々追い求めがちな「コスパ」について考えてみよう。なぜ「高コスパ」はいいことなのか?そもそもコストパフォーマンスとは、コスト一単位当たりにどれだけの効用(利益、満足感)を得られるかという指標である。

今、あなたが昼食に関して悩んでいるとしよう。あなたの財布には10ドル入っている。

5ドルでとても満足できそうなサンドイッチと、10ドルで前者よりほんの少しだけ満足できそうな定食があったとき、あなたはもちろんコスパの良い前者を選ぶだろう。さあ、なぜあなたは前者を選択したのか。それは、残った、浮いたお金をほかのことに使って効用を得られるからにほかならない。残った5ドルを晩御飯に充てたり、スイーツを食べたり、CD購入に充てたり、いろんな使い方で効用を得られる。最終的にコスパの高い選択をすれば10ドルで得られる効用は最大になる。高コスパは、「限られたコストの中で最大限の効用を得るために必要」なのである。

さて、ここで実際の人生における「出る杭」について考えてみよう。私がつい先日まで受験生で大学受験が身近かつ今回のテーマに都合のいい例なので、大学受験をテーマとして採用してこれについて考察する。

まず、「出る杭」を定義する。今回は東京大学とする。次に「高コスパ」の大学を上げたいが、これは実在する大学の名は上げにくいので、A大学としておく。大学において「高コスパ」とは何かということをきちんと定義しておかねばならない。望ましくない見方だが、大学をいわゆる就職予備校だとみなすと「入学難易度のわりに就職が良い大学」が高コスパ大学にあたる。

A大学はそれなりに努力していれば入れ、しかも就職も結構いい。しかし、東京大学に入ろうとなると、A大学を目指すのに比べて何倍もの努力が必要だが、その努力の増加分に見合うほど東京大学の就職は良くない、とすると、「コスパ思考」においてはA大学に入学することが良い選択になる。ここでは「出る杭」である東京大学に入学することはかなわなかった。

なぜ、サンドイッチの例ではコストパフォーマンスが高い選択をすれば最大の効用が得られたのに、大学の例では最もコストパフォーマンスが高いA大学を選択しても最も良い就職先を得られないのだろうか。ランチの選択と大学の選択の間にある差異は何だろうか。

答えは、投じるコストが有限か、無限かの違いである。

有限か無限かが違いであるというと若干の語弊があるのでもう少しに直接的に述べると、「払えるコスト(予算総額)があらかじめ決められているか、自分で決めるか」となる。先のランチの例では、投じることのできるコストが最大10ドルとあらかじめ決められていたのに対し、受験、ひいては「出る杭になるための努力」には制限はない。

「出る杭になる」という目標において、コスパを重視することは無駄なのだ。もっとコストを払えるのに、払わない選択をしているからだ。ランチの財布のように努力をしなかった分が余ることはなく、しなかった努力はただただ消えてゆく。

誤解を生むといけないので、一応書いておくとこれは「コスパ気にせず努力しろ」ということではない。

成果とは努力と効果の積だから、この「効果」に関してはコスパを重視する必要がある。テストで高得点を取らねばいけないとき、長時間かけても点数がそれほど上がらない勉強ではなく短時間でそれなりに点数が上がる勉強をせねばならない。なぜか?時間は有限だからだ。あらかじめ制限が決められている。時間当たりの効果が高い勉強、つまり高コスパの勉強をせねばならない。

時間やお金など、有限なリソースを割いて何かを手に入れようとするとき、我々はコストパフォーマンスを重視して最も効率的な選択をせねばらならないが、自分の努力など、リソースの制限を決めるのが自分である場合は、コストパフォーマンスを考えるのではなく可能な限りリソースを割く、つまり勤勉に努力する必要があるということを、我々は認識しなければならない。

上記の区別ができていないと、コスパの良いA大学という選択をしてしまい、「出る杭」ではなく「凡人」に収束してしまう。

したがって、「出る杭」になりたい時、私たちは持ちうるリソースを全て割いて出る杭になるための努力を積むべきなのだ。

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