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Vol.2 不正としか思えない不動産鑑定評価に基づく融資

私が新たな収益用不動産の購入をすべく西武信用金庫に融資の申込みをしたのは2017年11月末~12月頭。それを受けて12月中旬、西武信用金庫から以下のような連絡がありました。

購入予定物件の担保価値の確認をするために不動産鑑定評価を入れる必要があります。念のため既に保有されている収益物件とご自宅も一緒に評価させて下さい。不動産鑑定士とのやり取りは全てこちらで行いますので余計な手間は取らせませんが鑑定評価の費用だけご負担下さい。

融資を申し込んでいる立場の私としてはノーチョイス、応じるしかありませんでした。
そして2017年12月末「不動産鑑定評価が結果が出ました。条件付きながら融資OKです」との連絡があり2018年1月5日に融資契約を締結、その契約の後に以下の資料を受け取りました。


<物件1:購入資金の融資を申し込んだ物件>

意見価額 8,800万円
残耐用年数 35年(全耐用年数71年、ちなみに鉄骨造です)


<物件2:既に保有していた収益物件>

意見価額 1,600万円
残耐用年数 35年(全耐用年数83年、ちなみに木造です)


<物件3:自宅>


意見価額 4,160万円
残耐用年数 35年(全耐用年数53年、ちなみに木造です)


この結果を踏まえ


  • 融資額6,500万円(申込みは7,000万円)

  • 返済期間30年

  • 物件2と物件3を共同担保

  • 妻を連帯保証人に

  • 物件2の修繕費用として先に融資を申し込み内諾を得ていた650万円はなかったことに


という条件で2018年1月5日に融資契約締結、そして1月9日に融資が実行されました。
正直、個人事業主にとって1,150万円の減額はかなりの大金、痛い判断ではありましたが、既に融資特約の期間も過ぎており購入しなければ違約金1,400万円が発生、何よりも「買いたい」という気持ちしかなかったので、この時点では「買ってから頑張ろう」という判断で前にすすむことにしました。


これら一連の「経済的耐用年数を活用した融資スキーム」は、国から金融業の営業許可を得て業務を行っている金融機関、そしてそこそこ難関な国家資格である不動産鑑定士がタッグを組んで取り組んでいたこと。
さらに不動産鑑定士協会や国交省もバックアップしていたという事実があったことから、当時の私はこのスキームに不正があるなど1ミリも想像できませんでした。





よってこの時点で私はこれらの鑑定資料は全てノーチェック、単純に国も不動産鑑定士協会も認めているスキームでOKが出てから契約し融資を受けた、という流れでした。


ところが、この物件を購入して数カ月後に想定外の問題が発生してしまいました。その問題とは、それなりにまとまった現金がすぐに必要となる事態でした。結局のところ、1,150万円の減額がここで効いてしまったということです。
そこでまずは西武信用金庫に対して「共同担保となっている物件2を売却したいので共同担保を外して欲しい。売却後に残った資金は内入れする」と相談したのですがけんもほろろ。
となれば共同担保を外すためには借り換えしかないと判断し近隣の5、6の金融機関に片っ端から借り換えの打診をしました。
その際に活用したのがこれらの不動産鑑定評価書です。それなりの担保価値があることのエビデンスですので当時の私は「借り換えできるだろう」と思っていたのです。しかし全ての金融機関から同じようなことを言われました。


こんな資料、何の参考にもなりませんよ。当行で協力できることは何もありません


紙くず同様の扱いだったのです。恥ずかしながら、そこで初めてこれらの記載内容を細かく確認したのでした。
まず大きな違和感をいただいたのが残耐用年数の表記。3物件全てにおいて


残耐用年数 35年


と記載されています。しかし、築年数、構造、修繕履歴等が全て異なる3物件が一律に同じ残耐用年数であることは明らかにおかしいと感じました。
しかも、残耐用年数を35年とした結果、鉄骨造である物件1の全耐用年数は71年、木造の物件2に関しては83年にもなってしまうのです。

前回書いたように法定耐用年数であれば木造で22年、鉄骨造で34年です。法定耐用年数を超える経済的耐用年数が存在することは否定されていませんが、論理的な説明がないままでの経済的耐用年数の設定には大きな無理があります。
そしてこの残耐用年数も影響する計算式によって導き出された評価額、これも下駄を履いているに等しいことになります。
この評価額の正当性を裏付けるために周辺環境の説明などの記載もありましたが、現地調査などしておらずいかにもコピペと想像できるような記載内容になっていました。
後日のことですが、裁判において不動産鑑定士は「3物件全て現地を確認した上で説明を書いている」と証言していました。
しかし、果たして同日に3物件回れるのか?実際には回れるだろうけど回った証拠が一切出て来ないこと(同日に撮影した写真データ等が皆無)、さらに記載事項が現実に全く則していないことから「ストビュー見て書いた?」
虚偽としか思えない表記・証言と受け止めています。

このような事実があっても2018年夏の時点では「投資は自己責任」であることから自分で決着するしかないと考えていた私(業務改善命令が発令されたのは2019年5月24日)。何とか資金繰りの目処をつける活動を行うしかありませんでした。


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