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レジリエンスって何!?

みなさんはレジリエンスという言葉を聞いたことがありますか?

インターネットで検索してみると、解説もたくさん!
どうやら最近注目されている言葉のようです。

このレジリエンスという言葉は使用される分野によって、意味解釈が若干異なりますが、教育関係から心理学の世界では、

簡単に訳すと“回復力”とされ、何らかのリスクに対して適応状態を維持、あるいは引き起こされた不適応状態から回復する能力や過程であるとされる。

齊藤 和貴ほか.最近のレジリエンス研究の動向と課題.明治大学心理社会学研究.第4号.2009

とあります。
また他の論文の中では、

「困難で脅威的な状況にもかかわらずうまく適応する過程・能力・結果」

上野 雄己ほか.日本人成人におけるレジリエンスと年齢の関連.心理学研究 2018 年.第 89巻.第5号. pp. 514– 519

とも書いてあります。
つまり嫌なことや困ったこと、不安に襲われるような出来事を経験したときに、その状態から正常な状態に戻してあげるような力のことをいいます。

 このレジリエンス、コロナな世界情勢の変化など混沌とした今のような社会を生きていくには必要な力なことはなんとなく想像がつくはず。未来もどうなるかわからない今日において、自分の機嫌を自分でとる力、ぜひ子どもたちにもつけて大人になってほしいところです。

どうやってレジリエンスを獲得していくの?

 様々な論文を読み進めていくと、レジリエンスという概念はまだ研究途上の概念のようで、学者によっても意見が分かれているとあります。
 大きく考え方は異ならないようですが、今回いくつか読んだ中でえっぴの独断と偏見で、レジリエンスの獲得過程を紹介します!

今回は、東京家政大学の研究紀要より、二次元レジリエンス要因尺度の内容(平野,2010) をみていきましょう。

 この先生の考え方では、レジリエンスは、持って生まれた気質と関連の強い「資質的要因」というものと発達的に身につけやすい「獲得的要因」というものがあり、どちらも発達の中で随時獲得していけるというもの。
分かりやすい表があったので、こちらも参照いただくと、

 まず、資質的レジリエンス要因では、「楽観性」「統率力」「社交性」「行動力」を4因子としています。これらのものは、生まれ持った性格がそうさせる部分も多いのは事実としてあるらしいですが、年齢があがるにつれ自己理解が進んでいくと、高めることができる因子になるそうです。自分を見つめるような機会に必要に応じて立ち会わせてあげることが大人たちのできることかもしれません。

 反対に獲得的レジリエンス要因には3因子あり、「問題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」があり、こちらについては、発達していく中で身につけやすいものだそう。今日からでもできそうです!
ぜひ文中の詳細を確認してみてくださいね。


これらレジリエンスを育てるには??

 レジリエンスの概念には他にも様々な下位尺度(因子)があり、これをやれば必ず育つというものはないそうですが、幼児期のレジリエンスの育成の仕方を研究している方もいらっしゃいます。

湯及(2018)によると、大人が子どもに対して
・自己の評価を高める
例)できたことをほめたり、何かに興味を持ったら挑戦を促したりする。

・社会的承認を得る
例)少し頑張れば達成できる目標や役割を設定してそれに取り組んでもらいその中での頑張りを認めたり、子どもたちの内面を認める言葉などをかけたりする。

・仲間と共感し合う
例)子ども達同士での交流を見守ったり促したりする。「ふざけっこ」は「楽しい」「面白い」を共有し合うために必要な経験であることを意識する。

・感情をコントロールする
例)「はんぶんこ」や「順番」ができるように繰り返し言葉をかける。じゃんけんなどの運によって決まるもので、どうにもできないことへの耐性を養う。

 というような働きかけをしてあげることによって、レジリエンスを育むことができるそうです。ですので大切なこととしては、子どもたち自身が能動的に動く場面を増やしてあげること、またそれに寄り添い、必要な評価やフィードバックが得られる環境を作ってあげることです。

 可能なことであれば、毎日上記のようなやりとりができるように関わっていきたいというのがすべての大人が想うことだと思いますが、現実問題としてはすべてはうまくいかないもの。
 どうしても大人から一方的に指示を持をしてしまったり、大人がやったほうが早いといとついつい先周りしてしまうことも。もしくは、ここで喧嘩をされるとあとが面倒と考えてあえていばらの道を進むのを避けさせてしまうということもあるかもしれません。

 しかし、大人になるまでにはこのような経験をしておいてほしいものも事実。大人になって急にストレスフルな状況におかれて潰れてしまうのは大変もったいないことです。

子どもたちが頑張る、非日常体験の中でもレジリエンスは育成できる?

非日常体験が多いひの自然学校の活動を振り返ってみると、「リーダーという、家族でも友達でもない存在」がレジリエンスを育てるのにいい味を出しているかもしれません。

 ひの自然学校の活動は、ただただ楽しい!で終わらない活動になっています。ちょっと頑張らないといけなかったり、初めましての出会いを乗り越えて仲間になっていく過程が味わえたりとよくある旅行とは一味違います。
そこが各活動の面白さでもあるのですが、その”楽しさ”を引き出すために、リーダーたちは、子どもたちが安心して楽しく活動できるようにサポートしつつも、子どもたちが勇気を出さないといけない場面、頑張らないといけない場面では見守ってくれたり、背中をちょっと押してくれる存在でもあります。

 もしかしたら、リーダーたちが子ども1人ひとりに合わせて声かけをしたり、チャレンジの場面を応援したりする行動が、レジリエンスを高めるのにかめるのに一役買っているかもしれません。
 ひの自然学校の活動はレジリエンスを高めるためにあるわけでははないので、付加価値的存在になるとは思います。しかし、目に見える力(アウトドアスキルの向上など)以外の芽も育んでいると思うと、今活動に来てくれている子どもたちが大きくなった時にどんな大人になっているのかな?とついワクワクしてしまいます。

 レジリエンスについては、様々な本も出ています。
見解の違いも含めてぜひ、みなさんも検索や近くの図書館で書物を漁ってみてくださいね。

【引用・参考文献】
・齊藤 和貴ほか.最近のレジリエンス研究の動向と課題.明治大学心理社会学研究.第4号.2009
・上野 雄己ほか.日本人成人におけるレジリエンスと年齢の関連.心理学研究 2018 年.第 89巻.第5号. pp. 514– 519
・平野 真理ほか.レジリエンスの資質的・獲得的側面の理解にむけた系統的レビュー.東京家政大学研究紀要.第 58 集(1),2018,pp.61 〜 69
・湯汲英史.子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる.学研プラス.2018

ひの自然学校ブランドバリューマネジャー
井上えっぴ


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