見出し画像

夏の外遊び ”熱中症”との付き合い方

 関東圏では連日のように猛暑を通り越したような暑い日が続いてますね。
 そうなると気になるのが「熱中症」。毎年ニュースを見れば夏は毎日のように搬送された情報や熱中症〇〇人!のようなものばかりが流れます。かといって心配になりすぎるとせっかくの夏を外で遊べない…なんてことにもなりかねません。この夏、熱中症とどう付き合っていこうか、具体的に何を心配するべきなのか、、いくつかの視点で考察してみました。


熱中症の客観的指数「WBGT」は万能か!?

 WBGTは環境省が発表している、「暑さ指数」のことを指します。”熱中症予防を目的に創られたWBGTは人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。”(環境省HPより) 
 このうち、WBGT28℃という値を超えると急激に熱中症の救急搬送件数が増える傾向あり、「激しい運動は原則中止」というメッセージもでることから屋外遊びを中止する、あるいは室内に切り替えるという対応をしているところも多いと聞きます。

暑さ指数(WBGT)が28(厳重警戒)を超えると熱中症患者が著しく増加する傾向がある
(環境省HPより)

 確かに合理的で客観的な対応です。ところがちょっと気になったので過去のデータ調べてみたところ、2021年8月は31日間のうち20日(64.5%)、2020年の8月に至っては31日全て(100%)でWBGT28℃を超えていました。しかも長い日は8:00-18:00まで。これの意味するところは「太陽が出ている時は原則危険」ということになります。WBGTだけに判断を委ねると、行きつく結果「夏場は外で遊べない」ということにもなってしまいそうです。
 それはそれでモヤっとしますね。ただ、危険信号を知るという観点においては有益な情報です。

暑さにつよい体をつくる「暑熱順化(しょねつじゅんか)」

 人間はなかなか賢い生き物で、暑さや寒さの環境に自分自身の体を慣らしていく作用があります。この作用を計画的に実施することで暑さに強いからだをつくり、熱中症の抑制にもつながる、というワケです。
 暑熱順化によって手に入る能力は…
ーーー
・熱をより速いスピードで分泌でき体温の上昇が抑えられやすくなる
・汗の中の塩分が減り、体内のナトリウムを失いにくい
・血液量(血しょう量)が増えることで、体表面での熱放出が促進される
ーーー
などがあるとされ、暑い環境で活動するにはいいことだらけですね。
 暑熱順化をするには「暑くなりはじめる前からの準備」が大事そうです。暑くなる前にウォーキングやサイクリング、熱めのお湯に入浴することで1~2週間ほどで暑さにならすことができるそうです。簡単にできそうですし、この先徐々に取り組みたい準備ですね。

サイクリングなどで、楽しく「汗をかく練習」が暑熱順化の近道

 ただ、暑熱順化できた体も2週間ほど何もしないと元に戻ってしまうそうなので、暑さに適度に体を晒す継続した取り組みが夏の間は必要だと言えそうです。

帽子が熱中症予防になるのはホントなの…!?

 暑い季節は帽子だ!帽子をかぶろう!と昔から言われてますし、僕自身もよく指導されましたが、ある時これって実際本当に効果あるの?と疑問に思い調べてみました。
 肌感覚的には帽子があると頭の暑さが軽減される気がしていましたが、いくつかの研究でも着帽は直射日光下の頭皮温度をはじめ頭の温度を下げてくれる効果があるそうです。帽子をかぶる、簡単な方法ですが役に立ちそうですね。お気に入りの帽子、僕も今年の夏に向けて揃えようとおもいました♪

事前の準備だけでは防ぎきれない。それが熱中症…

 残念ながらどれだけ事前の準備をしても暑い環境にいれば誰でもなる可能性があるのが熱中症です。熱中症にはいくつか段階があり、必ずしも順序だてて発症するものでもないそうですが、早いうちに異変に気付き、適切な対処・処置ができることが必要です。

熱中症には段階がある。適宜「どの段階にいるか」の評価ができることが大切

 よく「様子を見る」と言いますが、暑い環境でどんな様子を見ればいいのか。熱中症の段階にはどんなものがあり、どんな症状を出すのか、こうした知識を身に着けることで熱中症も早い段階で気づくことができそうです。気づければ対応することができます。それは結果的に重症化も防ぎ、外での活動への柔軟性を高めることに繋がるハズです。
 こうした知識技術を伝えている「野外災害救急法」などを受講して知識と評価技術を身に着けることも有益ですね。


まとめ:熱中症とうまく付き合っていくために…

 いくつかの観点で暑い環境への対応を検討してきました。その結果をまとめると…
✔ 暑熱順化によって暑さに強い体をつくる
✔ WGBTの数値も気にしながら数値が高いときはより慎重に観察する
✔ 帽子やウエア類を駆使して涼しく保つ
✔ 指導者や保護者が「熱中症とは何か」について知り、判断する物差しを身に付け「具体的な項目で心配」する。


 熱中症を上手にコントロールしながら、ヒートアイランドが加速する日本でも子どもたちと元気に外遊び、自然の中での活動が運営できるといいですね!指導者や保護者が不安に感じるときは活動を中断、撤退する勇気も必要ですが、暑い季節との付き合い方に参考になれば嬉しいです。
 
ちなみに、夏場になると脱水が心配になりやたらと水を飲むことを勧めがちですが、特に運動中はやみくもに多く飲めば良いということでもないようです。
「喉の乾きにあわせて」適量を都度飲む。(いつでも飲める環境を整備する)
ことにヒントがあるようです。これも一つの予防指針になりそうですね!

ひの自然学校 リスクマネジャー 寺田(まめた)

Enjoy Summer!


【参考文献】
〇日本における熱中症予防研究(芳田,2015)
〇スポーツ活動および日常生活を含めた新しい熱中症予防対策の提案(中井ら,2007)
〇日射病予防としての帽子運動帽の検討(寄本ら)
〇熱中症ゼロへWebサイト:https://www.netsuzero.jp/
〇環境省熱中症予防情報サイト:https://www.wbgt.env.go.jp/
〇Sawka, M.N. American College of Sports Medicine posi:on stand. Exercise and fluid replacement. Med. Sci. Sports Exerc. 2007, 39, 377–390
〇Wilderness &Rescue Medicine/First Aid(WMA International)
〇環境省平成24年度ヒートアイランド現象に対する対応及び震災後におけるヒートアイランド対策検討調査業務参考資料1-4「暑熱順化が熱中症に及ぼす影響の整理」
〇Garrett AT. Induction and decay of short-term heat acclimation. Eur J Appl Physiol. 2009;107(6):659e70. 
〇Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Treatment of Heat Illness: 2019 update.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?