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民俗と「常なるもの」

 佐藤光・中澤信彦編「保守的自由主義の可能性 知性史からのアプローチ」という本を眺めていた。中川八洋の悪影響もあり昨今忘れられがちな、保守主義と自由主義の関係についても示唆に富む良書だ。

 佐藤光は保守主義における時間感覚を、「回帰する時間か同時存在する時間」と表現している。「カール・マンハイムが鋭く指摘したように」と述べているが、これは「保守主義的思考」のことだ。

 時間体験の相違を図式的にとらえるならば、進歩主義者はその時々の現在を未来の発端として体験し、保守主義者は現在を過去の終局段階として体験する、ということ ができよう。保守主義的体験にとっては、前者の説く歴史的過程の直線性などということはなんら本源的なものでないという点で、その相違はより大きく、かつまた真により徹底的である。
 それは人々を魅了させる永劫回帰というきわめて古い理論であるか、さもなければ過去と現在とを相互に融合させる体験として現われる。

カール・マンハイム著、森博訳「保守主義的思考」(ちくま学芸文庫)
筑摩書房、1997年

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