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【保育者に聞く!vol.2】おじさん保育士 さん

◆​ おじさん保育士さん(男性・40代)
いくつかの一般企業を経て、現在は保育士として活躍中のおじさん保育士さん。保育ならではの「やりがい」に魅入られ、国家試験で資格を取得するなど、自身の成長を楽しみながら保育に関わる保育士さんです。

―これまでご経歴を教えてください。

もともと、大学ではロシア語やっていました。せっかくだからロシア語を使いたいなと思い、出身である東京を離れて、北海道の水産会社に就職しました。その会社では、希望した輸入の担当部署ではなく、経営企画をする部署に配属になりました。そこの部署は、土日も仕事で、13日間連続勤務も珍しくないとかっていう状態で、結局、働きすぎのため1年ぐらいで体調を崩してしまいました。そのあと、療養して戻ってきたんですけど、カニの出荷した数とかを入力する部署に配属になって、「これ、別に北海道じゃなくてもいいな」って思ってしまって、退職して東京のIT会社に転職しました。そこから、いくつか一般企業に勤めてから、30歳ぐらいのときに保育業界に入りまして、今も都内の保育園に勤めています。


―最初は保育とは全く違うお仕事をされていたんですね。

そうなんです、そもそも、どちらかというと子どもは苦手でした。なんか、子どもって、どう扱っていいか分からないっていうか、接し方がよく分からなかったんですよね。だから、親には進められた教職課程も、大学では取りませんでした。でも実は、最初の水産会社にいた頃に、シングルマザーの方とお付き合いしたことがありまして。そのときに、ちょっと飛躍はするんですが、もし方と結婚したら、子どもの父親になるんだなーとかって思ったら、なんか、子どももいいなって思って。そのときに、苦手だった子どもに対する考え方が、少し変わりました。


―東京に戻られたときは、どうしてIT会社を選ばれたんですか?


うーん、よく覚えてないんですよね。その時は、色々と選択肢はあったと思うんですが。なんか、「とにかく仕事しなきゃ」っていう焦りはあって。でもその会社は、正社員っていう名目で入社したんですが、実際に仕事がないときは給料が出なかったりとか、給料も2〜3ヵ月遅れで支給されたりとか、とにかく、正社員といえるような待遇ではなかったですね。そんな状態だったものですから、そのIT会社は、1年ぐらいしか続かなかったんです。

その後、30歳までになんとか正社員になりたいうという気持ちが強かったので、別のITの会社のサポート部門に就職しました。ところが、そこが土建関係ならではの風土だったこともあって、ちょっと私には合わなくて。分かりやすく言うと、アルハラみたいなのがすごくて。私、全然飲めないんですよね。それなのに、かなり飲まされて、きつかったんです。それを直接上司に相談したら、そこから、ちょっと、いじめみたいなのが始まっちゃって。当時、仕事は車で回っていたんですが、その最中とかにも電話越しで怒鳴られて、みたいな。しかも、首都高を叱られながら運転したら、事故ってしまいまして。車の方は、ほとんど傷がなくて大丈夫だったんですけど、事故処理はしないといけませんでした。でも、事故処理をしているときも怒られてて、そんな感じで、とにかく精神的にキツくて辞めちゃいました。このままだと、また「事故になるだろうな」って思って、身の危険を感じて。


―そんな中で、保育業界に入ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?


1つは、先ほども話した、水産業に勤めていた時にシングルマザーの方と付き合っていた経験があったからです。それから、ネットの記事だったと思うんですが、男性が保育園で働きながら保育士の資格試験を受けて取ったっていうのを見たのが印象に残っていたというのと、櫻井翔がやっていた、「よい子の味方」っていう保育士のドラマがあったんですが、あれが好きで見ていたので、保育園っていう選択肢が頭の片隅にあったんですよね。そのときに、たまたま地元の保育園が、短期で臨時職員を募集していまして、そこに申し込みをしました。初めての業界だったんですけど、「とりあえず、お試しでやってみますか」みたいになって。期間としては、半年間の限定だったんですけどね。なので、正社員ではなかったんですが、30歳のときに、アルバイトっていう形で初めて保育園に入ることになりました。定員120人の認可園だったんですが、主に0〜3歳を見る形で、フリーで、週5で8時間入りました。

その仕事は期間限定だったので、期日をもって退職をしたあとは、一旦、また別の業界で派遣社員として仕事をしていました。そのころ、保育士の資格を取りたかったので、通信制で学校に通い始めたんです。それからしばらくして、また保育士の仕事に戻ろうと思い、神奈川県にある保育園に転職をすることになりました。32歳のときですね。最初に入った園が、ものすごくお局さんがいて、仕事に行くのがきつくなってしまったんですよね。上司に相談したら、違う園に行ってと言われて、園を移してくれたんです。次の園は、昼休みにも連絡帳を書いたりとか、やることが多くて休憩が取れないとかっていうことがあったんですが、環境は良かったです。その後、もう1度別の園に移りましたが、6年ぐらいは勤めました。保育士の資格も、その園に勤めている間に取得しています。


―初めて保育業界で働くときは、不安はなかったのでしょうか。


もともと、色んな業界を見るのが好きなので。あと、私、普段は潔癖症なところがあるんですけど、いざ保育園で仕事をし始めたら、トイレ掃除とかも全然抵抗なくて。こういう、細かい仕事1つ1つが、子どものためになっている、全部が子どもにつながっているんだ、って思ったら、全然苦じゃなかったんですよね。だから、この仕事をやっていきたいなって思えました。それこそ、大学生の頃からアルバイトとかしてきましたけど、1回も、仕事が楽しいって思ったことなくて。でも、保育園での仕事は本当に楽しかったですね。

最初の保育園を辞めるときに、職員の皆さん全員からってことで、送別の品物をいただいたんです。さらに、ゼロ歳児の先生から、個別にプレゼントもらったりして。すごく重宝されてたんだな、って思ったら、すごくやりがいを感じて。それまで、仕事で自信を持つってことがあまりなかったんですけど、そのときの経験はすごく自信になりました。大体、初めての業界で、経験もなくて、周りの方から教えてもらうことばっかりだったので、まさかそんなに必要とされているなんて、思ってもいなかったです。本当に、資格もなくて基本のキから教わることだらけだったので、自分の仕事が、ちゃんとできているかどうかって、まったく自信がなかったんですよね。それが認められていたっていうのが分かったら、とても嬉しくて。あと、月並みですけど、やっぱり子どもとの信頼関係が築けたときは、嬉しいですよね。特に0歳とか1歳とかって、なかなか慣れてくれないじゃないですか。そういう中で、気を許してくれるようになったときって、やっぱり嬉しいです。あとは、お昼寝のときとかに「あの子が呼んでいるから行ってあげて」って言って、トントンしたりとかね。そういうやりがいとか楽しさがあるから、ずっと保育やりたいなって思いますよね。


―最初に保育をやり始めた時と、今とで楽しさは変わりましたか?

働きたいって思うぐらい楽しい仕事であることは変わらないですよね。でも、そう聞かれると、最初に保育やり始めたころと、楽しさは変わったと思います。昔は、保育の勉強も全然しなかったんですけど、最近はSNSとか見て、他の方の保育の仕方を見たりするのが好きです。前職で担任をやっているときに、思い返してみれば支配的な保育になっちゃっていたなって、反省したりして。本を読んだりとかすると、覚えた内容を日々の保育で活かしたいと思います。勉強していなかった頃の保育とは、違う保育ができているっていう、違う意味での充実感がありますよね。専門職としての試行錯誤が活かされたときのやりがい、というか。あとは、子どもと信頼関係ができたときにやりがいを感じるっていうのは、ずっと前から変わらないですけどね。

今、フリーなんですけど、1歳に入ったときに、走っちゃう子どもにダメっていわないようにするにはどうしたらいいかって考えた時に、手遊びとか苦手なんですけど、手遊びやってみようって思って。下手くそながら、覚えた手遊びをやってみたら、子どもが集まってくれたんです。それがすごく嬉しかったです。どうやったら、その子が満足する保育ができるかっていう勉強をして、それを経ての信頼関係ができた時の充実感はすごいですよね。


―男性保育士ならではの苦労はありますか?

ないんですよね。最初の園のときに少し、保護者から、女の子のおむつ替えに男性が入らないで欲しいっていうのはあったんですけど。正直、あまりそういう声が上がること自体には否定的じゃなくて、そういう方ももちろんいるよなって思っていて。事件とかありますし、そう思う方がいるのは仕方ないですよね。以前の保育園だと、女性ばっかりで、「男の先生を初めて見ました」みたいなこともあったんですけどね。今の園だと、男性は結構多くて、全体で先生が30人弱いて、うち5人は男性です。だから、今は全然、不便なことはないです。


―今後の目標があれば教えてください。

そうですね、やっぱり、担任がやりたいですよね。フリーはフリーでやりがいはあるんですけど、前職で、2歳の担任をしていたときが楽しくて。自分の考えた月案とかで、子どもが喜んでもらえたときとかって、直接保育に入っているときとは違う充実感ありますよね。それに、やっぱり担任って、そのクラスの子どもを深く見ることができますしね。


―最後に、他の保育士さんに向けてメッセージがあればお願いします。

そうですね、やっぱり、「子どもの最善の利益を追求しましょう」ってことですかね。SNSの発信内容とかを見ていると、質の低い保育士さんって増えているんじゃないかって感じることがあります。今って、保育士不足だから、資格さえあれば誰でもなれちゃうし。資格がなくたって、人手不足の園は採用しますよね。例えば、園に行って面接を受けるときに、履歴書を出して、応募書類を書いている間に、面接担当の先生に「この条件でどうですか」って出されちゃうこともあるんですよね。面接っていうのは名ばかりで、全然人物見てないじゃん、っていうか。だからやっぱり、保育士によって質の差があるっていうのがあるし、ニュースとかでも痛ましい事件があるじゃないですか。だから、やっぱり子どもの幸せのために働いてほしいなって思って、専門職としてのプロ意識は一緒に持ちながらしていきたいですよね。

(おわり)


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(ひおっきー)

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