バスの座席をなぜか順番に
お年寄りがお年寄りに譲り
運転手さんも困惑しながら
動きますよーと呼びかけて
最終的には私が立ったけど
なんだかおかしかったなあ
そんなことを思っていたら

前方に見えたのは親子連れ
お母さんに抱っこされた子
バスに向かって手を振って
というかお母さんが懸命に
子どもの腕を動かしていて
まだ自分で手を振れない程
赤ちゃんっぽかったけれど

運転手さんはごくゆっくり
注意深く白い手袋の左手を
赤ちゃんに向かって何秒も
その横を通り過ぎ切るまで
はっきりと振り続けていた
席を譲って立ったばかりで
前面の景色を眺めてたから
数秒の物語を私も見ていた

広い世界で
老若男女が
幸せを求め
待ちわびる

ほんのささいなことだけど
日常の中の素敵のかけらを
見落とさずに拾っていたい
席を譲り合う互いの笑いも
バスに手を振る親子の姿も
応えるバスの運転手さんも

やさしいせかいを
今日はちょっとだけ
やさしいせかいを