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ロッテルダム国際映画祭で上映

『Shell and Joint』が、2020年1月に開催されるロッテルダム国際映画祭で上映されることになりました。

私のnoteもだいぶフォロワーの方が増えているので、まずは『Shell and Joint』の説明からさせて頂きます。

『Shell and Joint』は私が作った長編映画になります。まだ日本では劇場公開されてはいません。来年公開出来る気がしています。まだ断言は出来ませんが。映画は劇場公開してしまえば同じなのですが、『Shell and Joint』は商業映画として作られた映画ではなく、自主映画とかインディペンデント映画と言われている、作りたい映画を勝手に作った映画です。「勝手に」と言うのは、作りたい様に、思いのまま作ったという意味です。

この映画は短いシーンをたくさん積み重ねて作った映画なんです。「いや、全ての映画は短いシーンをたくさん積み重ねて作ってるわ!」と言われそうですが、そのそれぞれの短いシーンにストーリーとしての繋がりがないんです。関係ないと思いきや繋がってるグランドホテル方式ではなく、どちらかというとカプセルホテル形式なんです。なんちゃって。

あ、そうなんです。本当にカプセルホテルが映画の構造のコンセプトになっているんです。あの「9hours」さんでロケもさせていただきました。本当に9hoursさんには大変お世話になりました。

そして、映画のメインのモチーフは「節足動物」なんです。テーマじゃなくてモチーフなんです。他の映画で例えるのは難しいのですが、dancyuでいう「肉特集」みたいな感じと言いますか。例えなんで、寿司特集でも、カレー特集でも何でもいいんですが、テーマではないんです。テーマって言うと「多様性」とか「格差問題」とか「人間の欲望」とか、そういう重さがあると思うんですけど、「節足動物」はモチーフなんです。特集なんです。

ここの説明が一番難しいんです。だって、私が好き勝手にやらせてもらってるだけですから。狙いとかコンセプトとか、人を納得させる説明にはならないんです。「節足動物を観客に見せる必然性は?」とテーブルの向こうの8人ぐらいの背広のおじさんに詰められたら、カニ歩きで退場するしか無いですね。

そしてこの作品には、堀部圭亮さん、筒井真理子さんはじめ、60人ぐらいの方々に出演して頂いております。出演者の方々については、書きたいことがいっぱいありますので、また別のnoteで書こうと思ってます。

そんな『Shell and Joint』ですが、ロッテルダム国際映画祭での上映は、4月のモスクワ国際映画祭に続き、2つ目の国際映画祭での上映になります。大きな映画祭に2つ決まりましたが、実は4月から今までどこの映画祭でも上映されていません。

なぜなら、エントリーしても決まらなかったからです。わかりやすく言うと、応募したのに落ちたからです。腹立つわ〜

その理由の分析の前に、映画関係じゃない方々にも分かるように、国際映画祭のルールを説明させていただきます。

映画祭のルールとして「ワールドプレミア」という条件があります。これは、世界で初めて上映する、という条件になります。劇場公開はもちろん、日本だろうが海外だろうが、どこの映画祭でも上映されておらず、ネットでも配信されてない作品でなければなりません。まさに「世界で初めて公開する」のが、「ワールドプレミア」という条件です。

大きな映画祭は、このワールドプレミアが条件だったりします。ワールドプレミアが「must(でなければならない)」と書いてある映画祭もありますし、「prefer(が好ましい)」と書いてある映画祭もありますが、最も優先される条件になります。

このワールドプレミアは、とても貴重な条件なので、映画祭も私たちもワールドプレミアに対してシビアなのですが、どこか1つの映画祭でも、そのワールドプレミアを使うと、ワールドプレミアが失効してしまうんです。当たり前の話ですけど。

例えば、みなさんが良く知っているあのカンヌ映画祭で上映された映画は、ベネチア映画祭でもベルリン映画祭でも基本的には上映されません。それは、カンヌ映画祭でワールドプレミア上映されてしまったので、他の映画祭が「自分の映画祭で上映する価値」を感じなくなるからなんです。それほど、ワールドプレミアというのは貴重で、どこの映画祭もワールドプレミアで上映したいんです。

私たちが作った『Shell and Joint』は、4月のモスクワ国際映画祭でワールドプレミアされましたので、その瞬間に、大きな映画祭のメイン部門にエントリーする資格が無くなりました。

もう少し詳しく説明しますと、大きな国際映画祭では、ワールドプレミアあるいはインターナショナルプレミアが推奨されます。インターナショナルプレミアというのは、制作した国以外での初上映という条件です。なので、日本国内で劇場公開していても、インターナショナルプレミアという条件はまだ残っているんです。

でも、最初に海外の映画祭で上映してしまうと、ワールドプレミアとインターナショナルプレミアの2つを一気に使ってしまうことになります。私たちの『Shell and Joint』は、モスクワ国際映画祭から上映のオファーを頂き、モスクワで2つのプレミアを使いました。「モスクワでプレミアを使おう!」と決心したんです。後戻り出来ない判断なので、腹をくくるしか無いんです。

ちなみに、モスクワを断って、カンヌやベネチアに賭ける事も出来るんですが、「映画と映画祭は出会いが大事」と聞きまして、速攻でモスクワに決めました。カンヌやベネチアに賭けるって、宝くじを買うみたいなものだったりもしますから。

だいぶ説明が長くなってしまいましたが、この話、面白いですかね?

話を続けさせて頂きますけど。

モスクワ以降、そのワールドプレミアとインターナショナルプレミアを失った状態で、『Shell and Joint』は映画祭にエントリーして行ったんです。

また話は逸れますが、世界にはたくさんの映画祭があります。出せば必ず選んでもらえる映画祭もたくさんあります。世界は広いですから、出しまくれば選ばれまくります。怪しい映画祭もたくさんあります。エントリーした映画のほとんどに「賞」をくれる映画祭もあるんです。「海外の映画祭で賞をもらった」という実績が欲しければ、それをくれる映画祭に出せばいいんです。一般の人は映画祭について詳しくないですから「凄すぎる!」と言ってくれます。

余談になりますが、カンヌ映画祭に「ショートフィルムコーナー」という部門があるんですが、それと「短編コンペ部門」は全くの別物です。ショートフィルムコーナーは毎年2000〜3000本の短編映画が選ばれるマーケット部門になりますが、短編コンペ部門は毎年10本以下しか選ばれません。最優秀作品は「パルム・ドール」と呼ばれます。ショートフィルムコーナーに選ばれた事を「カンヌ映画祭正式出品」と書く人が割と多いのですが、たぶん間違いなんだと思います。「カンヌ映画祭に正式に出品料を払って応募した作品」かもしれませんが、そうじゃないんです。短編の場合、短編コンペ部門に選ばれて初めて「カンヌ映画祭正式出品」と書けるんだと思います。「Official Selection」て事ですね。余計なこと書いてすみません。

でも、カンヌ映画祭のショートフィルムコーナーはとてもしっかりしたマーケットなので、ここから選ばれてロカルノみたいな大きな映画祭に行く映画もたくさんあります。ちなみに私は、カンヌ映画祭の短編コンペ部門に選ばれたことはありません。今まさに、一生かけて狙い続けている部門になります。

話を戻します。

私は『Shell and Joint』 が初めての長編映画だったので、映画祭に手当たり次第出してみたい欲にかられましたが、グッとこらえました。泣きながらこらえましたね。枕を涙で濡らしました。いや、涙で枕を、まあどっちでも良いんですけど。

人生を賭けて作った商品ですし、ディスカウントストアに置けば「売れた」という実績は即席で作れるかもしれませんが、次にオファーが来るのはディスカウントストアからだと思ったからです。

「売れた」とSNSで言いたい気持ちは痛いほど分かります。みんな「凄すぎる!」と言ってくれますから。「いいね!」がいっぱい付きますよ。でもディスカウントショップで売れた事は、素人だったらダマせますけど、「玄人」が見たら茶番なんです。「映画祭に入選したゴッコ」なんです。玄人の目は恐ろしいです。私は一線級の映画祭に精通している方々と繋がっているので、「映画祭ゴッコ」は出来ないんです。失笑され、失望されますから。

だから私はグッと我慢しました。SNSで「凄すぎる!」って言ってもらえなくてもいいやと腹をくくりました。そして、ハイレベルの映画祭だけに絞って出しました。

そして、面白い様に落選メールが来ました。ジャンジャン来ました。特に映画祭のハイシーズンである9月〜10月なんか、毎日落選メールが来ましたね。

ハイレベルの映画祭というのは、それぞれの国のフラッグシップの映画祭とも言えるかもしれません。分かりやすいところでは、フランスのカンヌ、ドイツのベルリン、イタリアのベネチア、スイスのロカルノ、スペインのサンセバスチャンなどなど。第30回〜第50回ぐらいやってる映画祭とも言えます。調べてみると、大きな国でなくてもその国のフラッグシップの映画祭は一流だったりします。ポーランドのワルシャワとか、ギリシャのテサロニキとか、韓国の釜山とか。不思議なのはイギリスで、カンヌ、ベルリン、ベネチアみたいな映画祭があってもいい国なのに、無いんですよね。

『Shell and Joint』がどの映画祭に落ちたのかを、一部具体的に言いますと、東京国際映画祭はワールドプレミアが必要なので出せませんでしたが、関係者経由でもダメでした。東京フィルメックスはプレミアは関係なく落ちました。私の作風は日本の映画祭との相性はあまり良くないのですが、日本の映画祭に決まると、スタッフやキャストの皆さんが参加出来るのでエントリーしたいんです。

一度行ってみたかった釜山国際映画祭もダメで、香港、トロント、サンセバスチャン、ロンドン、テサロニキも落ちました。カンヌ、ロカルノ、ベネチアはプレミアが引っかかって出せませんでした。他にもたくさん落ちました。そういうハイレベルの映画祭にプレミア無しで突っ込んでいくのは、なかなか厳しいんだなと思いました。

「いやいや〜、落ちたのはプレミアとかそういう理由じゃないぞ〜」という声も、遠くからも近くからも聞こえて来ますね。ですよねですよね。よーく聞こえてますよ〜

『Shell and Joint』のWebsiteを御覧ください。

何だかよく分からないですよね。ハッハッハッハ。

更に154分という長さ。この長さによって険しい旅が始まったのは間違いありません。映画祭もそうでしょうし、劇場公開の壁も154分なんです。作る当初は「85分の作品にする!」と豪語してたのになアイツ。アイツって私ですけど、テヘ。「テヘじゃねえよ!」の声が、Wi-Fiを伝わって、薄っすら聞こえてきますが、ワーワーワーワーワー。

そして、落ち続けていた時に、私の心を支えてくれたのが「麻雀の経験」なんですね。急に話が飛びますけど。飛び過ぎてますけど。私はそのうち麻雀についてnoteを書きたいと思っているのですが、私は「運」や「運の流れ」は麻雀で学びました。学生の頃、ブッ続けで36時間ぐらいやり続けた事もありました。

麻雀では、勝てない時は勝てません。最初に配られる配牌が良くても勝てないんです。これは「運の流れ」が悪い時なんですね。そんな時は勝とうとせずに「負けない麻雀」をするんです。でもしばらく我慢すると、運が回ってきます。運の流れが良くなってきたら、一気に攻めを再開します。運の流れがいいので、ジャンジャン勝ちます。でも、あまりにも勝ち過ぎちゃって、ちょっと手を抜くと、運の流れが突然悪くなって、大負けさせられます。

私は麻雀で、「回遊してくる運」の存在を知ったので、上手く行かない時でも、ジッと待っていれば運が回ってくると、心の底から信じることが出来てるんです。子供たちにも早いうちに麻雀はやらせようと思います。運の心構えを鍛えられますから。

ロッテルダム国際映画祭の話がちっとも出てこないので、そろそろ書かなきゃなのですが、オランダのロッテルダム国際映画祭は巨大な映画祭です。世界的にもかなり重要な憧れの映画祭です。そして、アヴァンギャルドな映画を上映することでも有名な映画祭で、『Shell and Joint』がそこに選ばれたことは、本当に嬉しかったですし、作品のテイスト的にはピッタリな映画祭な気がしています。

選ばれた部門は「Bright Future Main Programme」という、その監督の長編映画の1本目か2本目の作品を集めたプログラムになります。『Shell and Joint』は、ワールドプレミアもインターナショナルプレミアも無いので、コンペの対象外になります。

ロッテルダムが終わると、ほぼ1年が経ってしまうので、映画祭の旅も終わります。多くの映画祭は制作してから1年以内の映画しかエントリー出来なかったりするからです。

『Shell and Joint』は、結果的に大きな映画祭のコンペ部門に選ばれることはありませんでした。やっぱりコンペ部門というのは映画祭の花形なので、長編映画で行ってみたいと思っていました。コンペ部門に行くためには新作を作らなきゃならないので、近いうちに長編映画をまた作りたいと思っています。2020年に撮影できたら最高です。

どなたかお金出して下さい。

『Shell and Joint』に関連するnoteも割とたくさん書いているので、リンクを古い順に貼っておきます。

↓これは『Shell and Joint』を完成させた直後に、関係者に集まって頂いて開いた試写会の記事になります。

↓これは『Shell and Joint』で、どうやってシナリオを書いたかを書きました。シナリオの書き方講座ではなく、具体的に『Shell and Joint』のシナリオをどういう方法で書いたかを書いてます。

↓これは『Shell and Joint』の撮影について書いてます。撮影も私ひとりでやりましたので、その裏話みたいなものでしょうか。

↓ここでは、モスクワ国際映画祭に行った一部始終の話を書いてます。割と長めの記事です。

1月のロッテルダム国際映画祭には行って来ようと思いますので、もちろんnoteでその一部始終を書きたいと思ってます。

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