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『SHELL and JOINT』のレビュー③

今回は、スラムダンス映画祭で『SHELL and JOINT』を観た方のレビューです。いやー、面白いです。和訳は今回も曽根瑞穂さんにやって頂きました。

スラムダンス映画祭2020年のレヴューをお届けします!『SHELL and JOINT』 は、日本人脚本家で、映画監督である平林勇の精神を表現した、幻覚作用をもたらすぐらいに極めて刺激的、哲学的なドラマである。様々なマンツーマンの会話、密室でのシーンを通じて、日本のカプセルホテルの中、及びその周りを取り巻くすべての人々の内に秘めたる想い、理論、感情を密かに知ることになる。男と女が互いを見抜く方法、二人の関係、生、死、実存的恐怖それらを全面的に掘り下げてゆく。
また、映画音楽は巧みな構成で作られており、没入型で独特の雰囲気がある。字幕付きの日本映画ということを考えるに、各シーンの心的状態を読みとるのは難しいのではないかと予想していた。これは外国映画においてはよく見受けられる課題である。しかし、この映画は不吉な音色と美しい舞台装置や背景の設定により、私の感情を操り人形のように巧みに操ったのだ。
映画全体の印象としては、トワイライトゾーンのエピソードの前半部分を連想させるものがある。賞賛されるかもしれないし、上手くいかないかもしれないという両方の可能性を秘めている。不気味な虫の知らせだと予感させる雰囲気を作り出すことに成功している。しかし、それは一部の観客にとってはイライラしてしまうような、実際には起こらない展開にハラハラする中途半端な状態にさせてしまうことにもなり得る。

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様々なマンツーマンの会話、日本のカプセルホテルの中、及びその周りを取り巻くすべての人々。

『SHELL and JOINT』 は、平林勇初の長編映画である。今までは主に短編映画を製作してきたが、それらの作品が今回のこの長編映画に反映されていると言える。この映画は従来の物語的な映画に比べて遥かに自由であり、名目上、つながりのある物語のみでできている。本質的には、ひとつのまとまりのある映画と言うよりも、さまざまな形でなんとなく関係のある短編映画が入り混じった詰め合わせのように感じられる。映画撮影技術においては技量がすぐれており良質であるため、視覚的にすべてのシーンが目を楽しませてくれる。
ほぼすべてのシーンは、この独特な設定の中心に被写体を取り込むワイドショットである。これにより最終的な結果として、才能豊かな動きを伴った一連の油絵をどことなく連想させる。それは、シャッターを切る芸術の概要という印象を与える。視覚的に示唆に富んでいるが、ほとんどの場合あまりにも難解過ぎるとも受け取られる。
『SHELL and JOINT』は、気が弱い人、飽きっぽい人、また浅はかな人には向かないだろう。ただし、あなたが1インチの字幕の限界を拡大することができ、自分の中にいる科学者や哲学者を燃え立たせる映画を探しているのであれば、この映画を観る価値はある。ただし注意しておく。エンドクレジットを観るには、強い意志、少なくとも胃を空っぽにしておくことが必要である。
『SHELL and JOINT』は、2020年のスラムダンス映画祭で上映された。


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