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2-10 黙る学会員、黙らない元学会員

博士 学会や公明党に疑問を抱く会員が増えたのは、何故なのでしょう。

チェ 活動のありようや公明党の方向性に懸念(けねん)が生まれるのは、師匠の教えと矛盾することが出てくるからです。細かいことで言えば、池田先生は「青年を叱ってはならない」と言われていますが、前作にも書いたとおり〈悪しき大勝利主義〉から離れられない幹部はゴロゴロいます。大きな会合ではソフトタッチでユーモアを交えて話をしていますが、幹部だけの密室会議になると、ゴリゴリのハードパワーで成果を求めてきます。
 現場では「この組織体質を改善しよう」という意志だけは表明されていますが、〈厳しく叱らないマネジメント〉の成功イメージを持たない幹部が多いので、なかなか変わりません。
 後期は少しずつソフトパワーへの切り替えを志向していましたが、実質的に池田先生の時代の大部分はゴリゴリのハードパワーでした。それでも会員がついていけたのは、「池田先生が言われていることだから」というだけでなく、社会人としての訓練の要素が兼ね備わっていたからです。社会でもトップダウンの企業が多く、言われたことを忠実に実行する人間が良しとされていました。今は逆です。フラットな感覚を持っていて、指示に従うよりもフレキシブルに自分で判断する人材が必要とされます。
 「社会での訓練になる」と思えばこそ納得感もあった訓練ですが、今は前時代的で特殊な風習と思う青年が増えています。それは、信心が薄いとか、師弟が伝わっていないとかではなく、時代にアジャストした、あるいは時代をアジャストさせる価値創造ができていないだけなんです。
博士 私が創価学会を観察していて、近年もっとも会員が活動に疑問を持ったのは、2015年、集団的自衛権を含む安保法案(平和安全法制整備法案)が可決されたときだと感じています。
 これは武力行使こそ認めないものの、実質的に自衛隊が戦争に参加できてしまう法律です。翌年、普天間飛行場の辺野古移設について、沖縄県は国と法廷闘争を行い、敗訴。18年、沖縄壮年部の野原善正さんが「辺野古基地建設は池田SGI会長の思想に反している」と、公明党県本部が支持する佐喜真淳氏ではなく、辺野古新基地建設反対を訴えた玉城デニー氏を三色旗を振りながら応援したのは、安保法案可決で公明党の姿勢に決定的な疑問を抱いたからと推察されます。
 彼は、19年にれいわ新撰組の公認を受け、公明党・山口代表が立候補する東京都選挙区から参院選に出馬し、あまつさえ学会本部前での演説を敢行しました。21万票を獲得するも選挙には破れ(山口代表の得票は81万票)、「創価学会県本部から除名通知が届いた」とツィートしましたが、現在も創価学会壮年部を名乗っています。

チェ お会いしたことはありませんが、野原さんは学会員を名乗るというより、「自分は池田先生の弟子」と意思表明している印象です。
 ご存じのとおり安保法案については、少なくない学会員が疑問を抱きました。16年の7月3日(池田先生が大阪事件で「出獄と入獄の日に師弟あり」と詠まれた学会の記念日)には創価学会本部前にて、学会員35名による〈安保法制反対〉のサイレントアピールが行われています。

博士 集団的自衛権行使の限定容認が閣議決定されるちょうど1年ほど前、参院選に向けて渋谷で行われた選挙フェスでは、現役創大生(当時)による公明党批判もありましたね。「権力を批判しない宗教は、宗教じゃない!」「自分の思想を、自分の人生、自分の幸せを、組織の意思に任せるだけにするのは終わりにしましょう!」という主張には感じるものがありました。「僕らはかつて、『貧乏人と病人の集まりだ』っていう風に、馬鹿にされて虐められた。でも、今、馬鹿にする側に回っているんじゃないでしょうか」というくだりでは、「『馬鹿にされて虐められた』のは、親やその上の世代であって、君たちじゃないよね」と思わずツッコミましたが。

チェ 選挙フェスに出た創大生は、問題に対して自分にできることを精一杯考えて実行に移したという点で、立派です。ただ博士の言うとおり、病人、貧乏人と虐められた草創の先輩方は、私が聞き取りをした限りでは、渋谷で創大生が学会批判をすることを、まったく望んでいません。憂い、悲しまれています。その点に関してだけは「自分たちは味わってもいない草創の先輩方の苦労を語ってカタルシスを得るのは良くないぞ。メッ!」と思います。
 また安保法制反対の署名運動を一人で始めて9177筆を集めた愛知県の壮年部・天野達志さんは15年9月8日(原水爆禁止宣言の日)、公明党に受け取りを拒否されました。諦めずに風雨の中、立ち続け日参した天野さんに対し、4日目にして公明党は署名を受領。
 19年2月、天野さんは何者かに学会除名の申請を起こされ、除名。理由はツィッター、HP(ホームページ)で執行部を批判し、会員に迷惑をかけたこと、サイレントアピール(16年7月3日)に参加したこと、役職を解任されてもフェイスブックでの執行部批判をツィッターに転載したことなど7点が挙げられています。誰が申請を起こしたのか、学会は「非公開とする」として開示していません。「審査会は、創価学会県審査会規定上、代理人の選任も審査手続きの公開も、‪第三者の同席も認めていない」と回答し、「その為に公開対論にも応じない」としています。これらのやりとりは、天野さんのHPで、すべて実物の書面が公開されています。
 17年7月7日、被爆者の方々の苦しみに寄り添い、献身的に行動したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の尽力により、〈核兵器禁止条約〉が、国連本部にて採択。同年12月、ICANにノーベル平和賞が贈られましたが、唯一の戦争被爆国・日本は条約に参加せず、反対の立場。19年9月8日(原水爆禁止宣言の日)、天野さんは「創価学会として『日本は核兵器禁止条約に参加すべきである』との主張を聖教新聞紙上で表明する事を求めます。」との署名を1000筆以上集めて学会本部に届けるも、受け取り拒否。本部前に6日間、座り込みをするも断固拒否されたようです。

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