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サラリーマン”進撃の巨人”~憲兵団員の働き方~

 読書の秋、「進撃の巨人」を全巻読み直しています。面白いですね。中でも目に留まったのが21巻の巻末イラストの「進撃のスクールカースト」。登場人物を本編とは違った設定で描かれたものです。

進撃のスクールカースト

(コミック第21巻、巻末”進撃のスクールカースト”より)

 「学校編」に対抗して、「会社編」はどうだろうか?と、考えてみました。実際に記事にしてみると、ちょっとマニアック。本編を既に読まれた方でも「こんな奴いたの?」というキャラにもスポットを当てていますので、実際の「進撃の巨人」の世界観をぶち壊しているかもしれません。まず最初に諌山創先生および「進撃の巨人」愛好家の皆さんにお詫び申し上げます。

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(コミック第1巻、第3話”解散式の夜”より)

 以下、紹介するキャラクターです。「進撃のスクールカースト」とは取って代わり、平均年齢がぐっと上がりました。しかも本編で活躍する登場人物は主に「調査兵団」に対し、「会社編」になると殆どが「憲兵団」。今回4人の憲兵団員をご紹介します。偏っていますね・・・。サラリーマンで例えると”他にもこんなキャラがいるのでは!?”との視点で読んで頂いても、面白いかもしれません。では見てまいりましょう。

1.ジェル・サネス(いわゆる”社畜”)

 最初の1人目は、ジェル・サネス。私の押しキャラです。彼は、今の日本社会で言う”社畜”。壁の中の王政権維持のため、壁の外の真実に近づく人々を拷問し、殺害してきました。コミック第14巻、第55話”痛み”の中の回想シーンを見ても、その社畜ぶりが描かれています。本編の主要キャラの親の世代でも、壁の外の真実に近づく活動が行われてきましたが、彼は任務に対して忠実に、ことごとく闇に葬ってきています。「職場の仲間と一緒に王を守ってきた」という自負と忠誠心があり、やり遂げてきたのでしょう。

サネス①

(進撃の巨人キャラクター名鑑FINAL、52ページより)

 若かりし頃より彼は、王への心酔と忠誠心がありましたが、壁の中の王政権維持のため、壁の外の真実に近づく人々を拷問し、殺害という職務を遂行するうちに残虐非道な行為に対して感覚が麻痺してきたと捉えることができます。最初の志は立派でも、所属する組織自体に問題があると最後にコンプライアンス違反してしまう・・・、もし自身が社畜になっていたとしても、感覚麻痺しないように気を付けて行きたいですね。

サネス②

(コミック第17巻、第69話”友人”より)

 サラリーマンたるもの、仕事一途だけではいけない。もちろん家庭はもっと大切。次は家庭の匂いを感じさせる、憲兵団師団長のナイル・ドークを見ていきましょう。

2.ナイル・ドーク(仕事そこそこの愛妻家)

ナイル①

(進撃の巨人キャラクター名鑑FINAL、44ページより)

 2人目は、憲兵団師団長のナイル・ドーク。肩書は師団長とバリバリのキャリアですが、先ほどのジェル・サネス等のいる組織(中央第一憲兵団)に対して実際の指揮命令系統が無い、ナイル・ドークの組織は、いわば”お飾りの組織”。しかも重要な任務は中央第一憲兵団がこなしているので、ナイル・ドークの組織は(後ほどのマルロ・フロイデンベルクでも出てきますが)腐りきっています。家庭を優先して、仕事はほどほどに・・・、ということ。次のシーンは、同期で調査兵団長のエルヴィン・スミスに、現在の王政権打倒のクーデターを打ち明けられる手前の会話です。

ナイル②

(コミック第13巻、第53話”狼煙”より)

 憲兵団師団長のナイル・ドーク。単に組織に安住しているだけの男でもないみたいです。エルヴィン・スミス率いる調査兵団がクーデターに成功すると、いち早く広報マンとしての才能を発揮。時流を見極め、適所に自分の才能を開花させています。(話は外れますが、本編の物語終盤で、他の子供達のために身を挺して守るシーンもあり、彼の魅力は色々ありそうです。)

ナイル③

(コミック第15巻、第62話”罪”より)

 これまで、ジェル・サネスやナイル・ドークと、サラリーマン組織の中で比較的年齢の上の方を見てきましたが、若手社員の視点ではどうでしょうか。次に、マルロ・フロイデンベルクを見ていきましょう。

3.マルロ・フロイデンベルク(入社3年目で転職する若手社員)

マルロ①

(進撃の巨人キャラクター名鑑FINAL、40ページより)

 マルロ・フロイデンベルクは憲兵団に入団したての新兵。この世の不正を正すという理想を求めて憲兵団に入団しています。とにかく彼はアツい!日本のモノづくり産業において、特に自動車業界ではQCサークルと呼ばれる小集団活動が行われてきており、多くの”カイゼン”を積み上げてきました。おそらく、各QCサークルのリーダには、マルロ・フロイデンベルクのようなアツい青年が務め上げ、日本のモノづくり産業を盛り上げてきたのでは、と考えています。

マルロ②

 (コミック第8巻、第31話”微笑み”より)

 ”最近の若手は、なぜ3年でウチの会社を辞めてしまうのだろう?・・・”

 この悩みはどの会社・職場にも共通する悩みのようです。若手社員が3年目で転職する事情は、人それぞれだと思います。マルロ・フロイデンベルク青年の場合、理想と取り巻く職場(憲兵団)にはギャップがあり、彼も色々悩んでいるようです。上司とのやり取りを見てみましょう。

憲兵団上官

 (コミック第8巻、第31話”微笑み”より)

”真面目だな”

”すべて任せた、我々は忙しい”

”だが、ヘマだけはやるな?”

 これはもう、クソ職場・クソ上司の名セリフのオンパレードですね。彼もご多分に漏れず、後に憲兵団を辞め、調査兵団に移籍することになります。しかし、移籍先の調査兵団は、巨人と常に対峙し生き延びてきた奇人・変人のプロ集団。高い志だけではどうにもならず、これを補うだけの相応のスキルが必要のようです。

 残念ながらマルロ・フロイデンベルクは、調査兵団に移籍後、巨人たちとの戦いで命を落とすことになります。死の直前、(早朝の戦いだったので)憲兵団に残った同期達は今頃寝ているだろうな、他方で自分は何で前線にいるのだろう・・・、と考えながら生涯を終えています。転職は慎重に、ということでしょうか。他方、転職市場で”石の上にも三年”の言葉は古い、とも言われていますが、私自身も含め、この言葉の本質を掴む努力は必要そうです。

マルロ③

 (コミック第20巻、第81話”約束”より)

 今まで3人は本編の中でも、ストーリ上3%にも満たない、いわばサブキャラ。でも、サラリーマン視点で見ると、この3人はどうも隅に置けないですね。最後の4人目は主人公の同期で、本編の重要なカギを握るアニ・レオンハートです。彼女は主要キャラの中で、唯一の憲兵団員です。

4.アニ・レオンハート(パラレルキャリア)

アニ①

(進撃の巨人キャラクター名鑑FINAL、102ページより)

※ネタバレ注意※ :ここから、ネタバレ情報を含みます。

 「進撃の巨人」は当初、壁の中の人間と壁の外の巨人の攻防が描かれているストーリで有名です。でもストーリを読み進めていくうちに(コミック21巻で)、壁の外にも人類がおり、この人類の一部(マーレ人)が、壁内の人類を滅ぼそうとしていることが、全て明らかになります。

 アニ・レオンハートも、最初は主人公と同じく壁内の兵団に入団した少女として描かれていますが、実は彼女の正体はマーレ人で、巨人の正体の一人だったのです。アニ・レオンハートが兵団に潜入した目的は壁内の調査。この目的を達成するために憲兵団に入団しています。

 つまり彼女は2つの役を演じなければならない。昼間は憲兵団員として、壁の中の秩序を守る勤務を、勤務時以外はマーレ人として壁内の調査、時には巨人化して、調査兵団と戦ったりしています。・・・考えただけで激務ですね。

 近年、働き方改革による企業の副業解禁等でパラレルキャリアに脚光が浴びられています。生涯1つの組織で勤め上げるのは、今のご時世、考えにくいですよね。コロナ影響の前から、働き方改革は叫ばれてきていましたが、当時から、複数の職場(パラレルキャリア)の労務管理の難しさは課題として挙がっていたのは有名な話です。

 それはもう、アニ・レオンハートの労務管理は本人はもちろん、上司も大変でしょうね。憲兵団勤務中も眠そうですし。これからアニ・レオンハートのような働き方が主流になっていくと思いますので、最後の4人目の紹介にさせて頂きました。

アニ②

 (コミック第8巻、第31話”微笑み”より)

5.まとめ ~憲兵団員4人の総括~

 以上、4人の憲兵団員の紹介。如何だったでしょうか?実はこの4人、程度の差こそあれ、全て自分にも当てはまっているとも考えています。社畜人生だが、家族を大切にしたい。新社会人3年目で転職を経験し、これからはパラレルキャリアを描かなければならない・・・からです。

 既に「進撃の巨人」のストーリを読まれた方には、サラリーマンで例えると”他にもこんなキャラがいるのでは!?”との視点で読んで頂いても、面白いかもしれません。未だ読まれていない方にも、今後読むきっかけになれば嬉しいです。

おまけ:働かない”おじさん”(フリッツ王)

 せっかくなので、憲兵団の上に立つ王様も見てみましょうか。詳細は割愛しますが、壁内の真の王(レイス家)は別におり、レイス家に注目が集まらないように、表向きの傀儡の王様(フリッツ王)が本編では登場しています。寡黙で思慮深そうな王様に見えますよね。

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(進撃の巨人キャラクター名鑑FINAL、84ページより)

 しかしクーデターで政権が調査兵団に奪われたとき、寡黙で思慮深そうな姿は偽りの姿だとバレてしまいます。クーデターによる異常事態が発生したにもかかわらず、状況を把握できておらず、この有様・・・。読者の皆さんの職場にも、このような働かない”おじさん”いませんか?

フレッツ王

 (コミック第15巻、第61話”回答”より)

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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