デザインの説明に詩をつかう

(※この記事は、2014年12月3日に書いた会社ブログの記事を下敷きに、加筆修正をしたものです。)

デザインの打ち合わせでの一言、補足説明のメール、デザインに関する雑誌・WEBメディアの記事などで、「このデザインの世界観は〜」と言ったフレーズを見聞きします。デザイン制作に関わったことがある人であれば、一度はこの「世界観」という言葉に出会ったことはあることでしょう。

「トーン&マナー」や「ルック&フィール」と同じニュアンスで、そのデザインが表現する“舞台設定”」としての意味で「世界観」を使用することが一般的な使用例ですが、これは、本質的には誤用です。

本来の意味は「人の主体的な意義づけによって成り立つ世界についての見解」と解説されています。これだけ聞くと、なるほど分からんの印象です。「舞台設定」と何が違うのかというと、最も大事な点は「主体的な価値判断」ということです。

例えば、誰かがあるデザインに対して世界観を感じた状態というのは、その場で何か客観性のある事実や例題、論証などの資料を見て「理解」したということではありません。

その人が主体的にあるデザインに対して価値判断した時に初めて世界観を感じた(デザインがその人に世界観を与えた)と言えるのです。その人が感情的・情動的・情意的に価値判断していると言い換えても良いでしょう。

それゆえに、AさんとBさんに同じデザインを提示した場合、全く異なる価値判断をしている可能性もあるということです。ここはデザインを生業とする人達が恐れている箇所です。

では、デザイナーがそのデザインに込めたユーザーに与える世界観をクライアント側にブレなく感じ取るためには、どういった方法があるのでしょうか?

ひとつのは答えは論理であり、演繹法や帰納法を使って、「なぜそのデザインが最適であるのか」を説明する方法です。これらの具体的な方法は他のブログやデザイン関連書籍などで紹介されていますので、ここでは割愛します。

本記事では、それとはちょっと違った方法を、弊社での事例を参考にしながらシェアしたいと思います。


共感的アプローチをとるために

大学生向けのキャリア支援団体のロゴをデザインするお仕事がありました。初めての打ち合わせで、クライアントからヒアリングした結果、大学生に対して「働く意味と将来の道筋を探すためのキャリア支援」ということが支援団体の柱にしていること(大切にしている考えということ)が分かりました。

そこでロゴのモチーフを考えるにあたって次のような「仮説」を立てました。

(1)まだ社会に進出していない大学生を若鳥に比喩する。

(2)将来の道筋を模索していることを、大空に向かって羽ばたきはじめたことに置き換える

この仮説ですと、モチーフに鳥を採用した理由は分かりやすいですが、感性的な説明理由が欠如しているように感じました。

もしロゴのデザインと一緒に上述したような補足説明文を提出した場合、クライアントさんが「モチーフ選定の理屈は分かるがなんとかなく違う気がする…他のモチーフは無かったの?」という判断を下し、モチーフ選定から再スタートする可能性があります。

というのは、人に論理的なことだけで、説明して伝えると「説得」になってしまうからです。説得ですと、もし何かクライアントさんに言葉にできない“なんとなく”みたいな違和感(心情の揺れ)が走った場合、何か欠点をどこから見つけてきて、「論理」によって、返答されてしまう可能性があります。一言でいうとシコリが残りやすいということです。「説得」ではなく「納得」をしてもらいたいのです。

「納得」するには、論理と感情の両方にアプローチをする必要があります。しかし、感性的なことを第三者に伝えることは難しいです。そこで、デザイナーの考えた感性をクライアントさんに共感してもらうという方法でアプローチします。ここで世界観の出番です。

世界観とは「人の主体的な意義づけによって成り立つ世界についての見解」です。重要なのは「客観的な対象把握にとどまらず情意的に評価されること」は本稿の冒頭部分で記載しました。

つまり、ユーザーに与える世界観をクライアントさんが感じ取った状態とはデザイナーが提案したデザインに対して、クライアントさんが主体的にそのデザインの意義を感じ取り、デザイナーの考えた感性に共感した状態と言えます。

世界観を感じ取るための記述

弊社では、ロゴのデザインに込めたユーザーに与える世界観をクライアント側で感じ取るために、

飛び方を知らないあなたは
NATUReの宿り木で羽を休める
いつか羽ばたく大空を夢見て

という詩を書いて伝えました。詩は美的感動を凝縮して表現した文学の様式なので、感情を凝縮した言葉で世界観を記述できるからです。言葉の表面的な意味だけではなく、美学的な性質を用いてデザイナーの考えた感性をクライアントさんに伝えることができます。

また、詩には物語性が含まれるので読み手を主人公(書き手)の立場へ誘導し、文字に対して主体的に関わることができるという特性をもっています。詩を使うことで、デザインがユーザーに与える世界観をクライアント側で感じ取りやすくし、共感を創出したのです。

もちろん、ロゴのデザインが目的にあった表現であり視覚的にアプローチしていることは大事です!

こういった方法もデザインの意図を説明するための、オルタナティブな手段と考えられます。(下記は最終的なデザイン)


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平野 友規

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