神奈川沖浪裏と北斎の飛沫

私が相当好きな絵に神奈川沖浪がある。他にも若冲やモネの中にも相当好きな絵があるが裏葛飾北斎の作品は他の肉筆画を含めてもどこか違う構図の妙と言うべきか配置が期待どおりで作者の意図がいやらしいくらい感じられる。
 特に富獄36景は、それで真っ向勝負していて神奈川沖浪裏が完璧なくらい、その最たるものに思える。全体の構図、バランスにも惚れ惚れするが、特に私は波から出ている水飛沫に惹かれる。遠くには富士をみあけ、近くには水飛沫が今にもかかって、その冷たさまで感じ取れる気がする。実際に船から見たとしても認識出来ないが、写真で切り取れば確かに存在するもの。それを描くことで臨場感を増している。もはや作者と見る者の真っ向勝負で絵から溢れ出るパワーさえ感じる。
 私が、北斎に惹かれるのは、他の絵描きとは違う作者の意図で、どちらかと言うと現代のイラストに近いものを感じる。作者の意思と対峙しているかのようで、絵の向こう側に作者の企みを突きつけられているかのようだ。
 そして、それ以上に驚きだったのがこの神奈川沖浪裏を含む富獄36景を描いたのが70歳を過ぎてからのことだと言うことだ。さらに、死の床につく直前までの30年間創作意欲が衰えるどころか増して行ったようにすら感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?