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20240507 みんなで話し続ける

かつて演出家の鵜山仁さんがアフタートークに来てくれて、演出という仕事についていろいろと話をしてくれた時に印象に残っているのが、「Aという意見とBという意見があった場合に、Cを導くのが演出という仕事」という話だった。

▼個人的にはその話を創作過程のコミュニケーションの質が創作の質につながるということなのかなと理解して、今もその話を折に触れて思い出す。ある意味では弁証法的に、その途中に生まれるコミュニケーションにもきちんと丁寧に時間をかけて進めていくことができたら理想的だなと思う。

▼たとえば創作の現場に10人の人間がいて、10人全員が同じことを考えながらものをつくっていることなんてほとんどない。いや、絶対にない。ルールやコンセプトについて共通の理解があったとしても、たとえばひとつの文章を前にしてもそれをどう読解し、どう理解し表現するかということについての可能性は「絶対にひとつではない」。

▼私たちの稽古場だと俳優がよく喋る。たとえば割と存在のしっかりとした演出家がいる劇団だと俳優がただひとこと台詞を喋ったのに対して演出家が90分以上滔々と喋り続けるというようなことが(これは極端な逸話だけれども)実際ありうる。

▼演出家の考える世界観や演劇というものを集団でしっかりと表現するためにはそういうコミュニケーションのあり方もありなのだと思う。けれども、私たちの集団は成り立ちからしてそうした「トップとフォロワー」という集団のありようについてすこしの疑問を感じていたから、誰か一人のトップに委ねることなく俳優同士が果てることなく話し続けるという道を選んだ。

▼そうして俳優がお互いに稽古場でよく話し、言葉を尽くし、全員が創作の意思決定に参加しながら「AとBという意見からCを導く」というようなやり方で、常に自分のアイディアがすこし斜め上の方向に展開していくことを楽しんでいる。いつも自分の考えていることがすこし自分の想像を超えていく。そうしてそれを積み重ねていくと、自分たちも想像していなかったような演劇が出来あがる。稽古場での果てしのないコミュニケーションの先に見えているのはそんな景色である。だから私たちは、対話を閉じない、話し続ける俳優であり続ける。

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
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【公演詳細】
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