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お局ナイフ

我が夫はお局ナイフの話が好きだ。夫は文筆業を生業としているためキャラ立ちしているというのはオモシロイに尽きるみたいだ。

お局ナイフは40代独身女性で「触るもの皆傷つける」タイプのキレる女性だ。数々の国家資格を右手に経験年数を左手に振りかざし、日々是無双状態だった。

お局ナイフにとって「私の言う事を聞く」か聞かないかは非常に大事で後輩も、管理者も、社長もお局ナイフに逆らえない。利用者も利用者の家族も「私の言う事は聞くから、大丈夫」と自分のコントロール下にあることは凪を示し、平穏を示す。

会社で自分の車で訪問看護に行き自家用車のガソリン代を請求しているのはお局ナイフぐらいで、お局ナイフだけはそんなことも許された。

私は結局、窮屈だったんだ。お局ナイフのご機嫌取りやお局ナイフの言う事(たとえそれが明らかに間違っていても)を聞くだけの業務に辟易していたんだ。今回のパワハラで休職という動きに対し管理者は話を聞きたいと時間を設けた。2時間ほど不毛な時間が流れた。思い出せる管理者の有益な言葉は「ヨガ、いいですよ。ヒンドゥー教のヨガ。どこで働いても同じような人はいる。同じようなことは起きる。その時に動じない自分をヨガで作る。おすすめです」。

それから管理者は言った「お局ナイフの言う事は、全部聞いていればいいのに」。

私がお局ナイフの仕事から学んだのは、彼女の美しい陰部洗浄と便処置の所作と、コンパクトにゴミをパッキングする技術くらいだ。知識はネット検索で何とかなる。

こうして仕事を休職していると、訪問看護の仕事に戻りたい衝動に駆られる。

お局ナイフは自分に反旗を翻した私を許さないだろう。


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