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素敵な靴は、素敵な場所へ連れていってくれる。 18

 依田に名前を呼ばれたとき、有美は一応、「はい」と彼の方を見て返事をした、その時向かいに座っている男の同僚が、またかという目で有美を見た。ふと、端の方に座っている紗季をみると、目をしかめて有美の方を見ている。有美たちが座る、グループ全体に少しの緊張感のようなものが滞留し始める。再度、依田が名前を呼ぶと、有美は小走りに依田の席へ向かう。
 


今朝の依田の小言は、昨日、有美が依田へ出した資料の件だった、様式が違うだの、データの配列が違うだの、相変わらず詰まらない内容の指摘だったが、今日は、彼の虫の居所がわるいのか、いつもよりかなり強い口調で、有美を叱責した。
有美は、いつもように、俯き加減で、「はい」とか「すみません」とか小声でつぶやくように言うばかりだ。 
 依田は、以前の有美への指摘を踏まえて、厳しい言葉で、有美を叱責した、その声はフロア全体に響き渡るかのようだった。
 前回は、拓海の事を考えるほど、気持ちに余裕があったが、さすがに今日は、なぜかしら涙が出そうになるほど、悔しい気持ちがした。
 興奮気味に依田が、
 「・・・・・だから、前にも言っただろう!・・・・」と言いかけた時、ふいに有美の後ろから声がした。
「・・・・課長、ごめん、ちょっといいですか?」
 有美が、振り返ると、そこに大津が立っていて、申し訳なさそうに、依田に話しかける。
 「取り込んでいるときに、申し訳ないんだけど、ちょっとこの子、貸してもらえるかな?」
 一応、年上の部下に気を使いながら、話しかける。
「なんでなんだよ?・・・・」
 依田は、上司とはいえ、年下の大津にぞんざいな言葉で投げ返す。 
「いま、ちょっとシステムがダウンして、急遽修復してるんだけど、ほら、いまうちのところ、みんな、夏休み取ってて、人いないんですよ、それで人が足りなくて・・・それにこの子システムも詳しいし、プログラムも組めるし・・・前も彼女に手伝ってもらったんですよ、その時すごく助かったんで、それでちょっと、彼女をお借りしようと思って・・・・」
大津は、年下だけど、依田にとっては二つ階層が上である、一介の課長がラインの部長には逆らえないことは、依田だってわかってる。
依田は、大津に向かって、小さく分かったというと、プイっと顔をパソコンの方へ向けた。
それを見て、大津は有美に、用意して上に上がってくるようにいうと、速足でオフィスから出て行った。

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今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。

もう会社員ではないので、OLたちの日常を描くのはむつかしいです。


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