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女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存 48

 流れゆく時間の中で、一瞬、理佐の目に触れても、いずれは流れるように消えいってしまう、なにも痕跡を残すことなく。それは人でもものでも同じことだ。
 それでも、かすかに残るもの、まるで金鉱の砂から見つけ出す小さな金塊のように
心の奥底に静かに沈んでいくもの、それがあの女神たちだったのかもしれない。
 理佐は自分のこれから行き着く先は、あの女神が指さす荒野なのだろうか?それともあの絵の青の様に透き通ったような世界なのだろうか? あの女神が指さした先には、荒野しかないのだろうかと?その先にえがかれていたもの、理佐は、あの青色の事を思い出した。そうだ、あの青色、海岸で海を見ながら、瞼に焼き付いていたあの青色。
楽し気に語らう3人を見ながら、ふとそんな事を考える。


「ママ、どうかしたの?」 
会話の輪から外れ、外を眺めているだけの母を気遣って、由香が聞いてくる。
理佐は、笑顔でなんでもないわ、と娘に答える。
「また、ワイン飲みすぎたんでしょ?」
と由香が、いたずらっぽい目をして言う。
 理佐は、そうかもねと言って、視線を夜景へ戻す、きれいねぇと小さく独り言の様に呟くと、由香も、きれいだねぇ、と由香が理佐の後ろで呟いた
理佐は急に、あの「青」にもう一度会いたいと思った。

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今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。


あと2回でこの物語は終わりとなります。

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忘れられない恋物語

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