「良いもの」を知ってなきゃ、話にならない。
ユニクロの”Life Wear magazine”をご存知でしょうか?
店頭で無料で配布している冊子なのですが、とても無料のカタログとは思えない読み物やインタビューの内容の濃さなんです。個人的には〇ン〇〇なんかよりぜんぜんファッション誌だと思っている。◯の中身はご想像にお任せしますね。
その第4号に作家の村上春樹さんのインタビューが載っています。村上さんらしい毒の効いたお答えが最高でしたが、これって今の時代を表してるなと共感する部分があり。
ーSNSは一切見ないそうですが、その理由は?
大体において文章があまり上等じゃないですよね。いい文章を読んでいい音楽を聴くってことは、人生にとってものすごく大事なことなんです。だから、逆の言い方をすれば、まずい音楽、まずい文章っていうのは聴かない、読まないに越したことはない。
ーUNIQLO Life Wear magazine より引用
村上さんならでは、でもあるんだろうけど、平たく言えば「駄文なんて読んでも毒になるだけ」ということですよね。
この後のパートで「文章にはリズムが大事」と語っておられるので、音楽からもインスピレーションを得ているのかなと。だから良いものに触れることがクオリティの維持向上に役立つ、ということを仰りたいのだと思う。
結局、何事も”基本となる基準”が高い方がいい。
例えばファミレスのフォアグラフェアで食べるのと一流のフレンチで食べるフォアグラは絶対に違うから、どっちを先に食べるかで食材に対する印象も変わります。良いものを先に知っておけば判断基準が正しく定まって、その後の判断も高いレベルで行うことが出来る。
ファッションもまさにそう。
ファストファッション、大いに結構。でもそれは”良い服”を知った上で、これなら実用に足るとか見栄えも悪くないという判断基準があってこそです。
それを知らない、村上さん風に言えば”上等でない”服を基本として育ってしまったら、基準が低いまま大人になっていってしまう。これはマズいことです。別に小さい頃からブランド物を着せなくたって、時には家族でお洒落して出掛けるとかそういうことで全然いいと思う。もう教育的な話ですね。
もっとリアルな話で言えば、パッと見いい感じの大陸製の服でも、同じようなデザインのハイブランドのものと実際に着くらべたら笑えるくらい違いがあります。
肌触り、着心地、見栄え、、袖を通した瞬間に分かる。それを知っているかどうか、基準として持っているかどうかで選び方も変わってくるはずです。
パリの人はなぜお洒落か
SNSを筆頭に、WEBの発達ですべての敷居が低くなりました。個人の発信も今やどこに居ながらでも出来ます。その分、玉石混交の度合いも高まっているということです。
我々は村上さんのように「意味ないから見ません」というわけにはいかないけれど、それでもなるべく良いものを見聞きしようとすることが大事だと思う。
僕は定期的に仕事でパリに行くので、お客様から「なんで向こうの人はあんなにお洒落なんですか?」と聞かれることがありますが、答えはこうです。
「だって子供の写生の授業がルーブル美術館、お散歩がパレロワイヤルなんだからお洒落に育つに決まってます!」
いやこれチート級です。我々が憧れて憧れてようやく行けるような場所に物心つく前から親しんでるわけですから。鬼ごっこしててよくピラミッドにぶつかったよね〜なんて昔話とか普通にしてそうです。そんな人たちにセンスで太刀打ちするのがどれだけ大変なことかって話です、本当に。
育つ環境が全てではないけれど、影響を及ぼすことは否定出来ない。同様に、我々も日々どんな環境でどんな情報に、食べ物に、文章に、ファッションに接しているかで感覚は変わっていくし、差が付いていくんです。
常に良いもの=往々にして高級なもの、を選び続けるのはさまざまな意味で難しいでしょう。だから基準として知っておいて、ケースに応じて選んでいくというのが現実的だと思う。
よく”頂点を極めた人にしか分からない感覚がある”なんて言いますが、極めなくても、頂点付近を知っているだけでも、物の選び方や評価基準が変わってくるはずです。サッカーでも代表クラスの選手とセミプロの選手では見えている景色や感覚が違うでしょう。
今着るべき服を見つけるために
ファッションで言うなら、やはり世間的に良いと言われているブランドには袖を通してみてほしい。買わなくたっていいんです。試しに着てみるだけでもいい。きっと欲しくなるはず。
そしてその感覚を元に、今の自分が着るべき服という基準で選んでほしい。
若かったらコンフォートな部分から少し背伸びしてみてほしいし、大人だったら年齢に見合ったクオリティのものを着てほしい。仕事だったらポジションやブランディングの観点からも選ぶ必要があるでしょう。特に仕事でそういう概念がない人が多すぎます。
こういう言い方はイヤなんですが、分かりやすくするためにあえて言います。人生で成功したいと思っているなら、良いものを知っていないと無理なんです。アッパーに行けば行くほど”良いものを知っている人”ばかりを相手にすることになるから。
判断の基準を高く持っていないとお互いに共感出来ない。まさに”話にならない”ということになる。だからファッションの分野で、その方が”今着るべき基準の服”をご提案していきたいと思っています。
僕はtwitterを情報収集で使うだけで、日常的には運用していません。やっぱり言葉が汚かったりチラ裏みたいな話が多くて個人的にはいい気分になれないから。もちろん素敵な投稿や面白い投稿もあるのは知っていますが、総量の問題でnoteのような環境の方が好きです。そういう取捨選択を「自分のクオリティの維持向上ために」することも必要ではないかなと。
日常的ではなくても、上等な食事をして、上等な文章を読み、上等な服を着る。
そうやって自分の感覚を育てていく、自分を律していくことが大事だと、何でもありな今の時代だからこそ思っています。
…とは言いつつ僕も上等な生活とは程遠い。基本毎朝菓子パンだし。とりあえず、ここではちょっとでも上等な文章が書けるように頑張りたいと思います。
ちなみにLife Wear magazineはWEB版もありますので、ぜひご覧ください。
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