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パリが素敵な理由は「プレゼンの上手さ」にあった

またしても久々な感じになってしまいました。これから頑張って投稿します詐欺はやめます。でも後半戦は巻き返しますよ。

7月の頭に、3年ぶりにパリに行ってきました。
せっかくなのでいくつか証拠写真を。夏は陽が長くて得した気分になりますよ。暑いけどカラッとしてるので日陰に入れば涼しいのも嬉しい。

マレ地区のオアシス、ヴォージュ広場
オペラ座は改装中。ティモシーシャラメが看板に。
みんな大好き、赤い車が目印のセレクトショップmerci

それまで10年くらい最低年1では行ってたので、本当に久しぶりでしたね。パリか…何もかも皆懐かしい状態。古いセリフだな。

そもそもなぜ行っているかと言うと、顧客さま向けの洋服買い付けがひとつと、もうひとつは現地を直に訪れて、見て、触れて、すべてを学ぶことがひとつ。後者は現地に行って、活きたものを感じることが重要ですからね。

レストランひらまつの創業者である平松シェフが「フランス料理を作るには血もフランスに入れ替えないといけない。だから今もフランスへ行くんだ」ということを仰っていましたが、まさにその通りじゃないかと。行かないと得られないもの、戻らない感覚ってあるなと思います。

ただ、実は僕とフランスの出会いは最悪だったんです。

最初に行ったのは学生の頃だったけど、フレンドリーなイタリアから移動したこともあって「なんてスカして高慢そうなヤツらなんだ!もう二度と来ないわよ!」とキャシー塚本のようなキレ方をした覚えがあります。

ただ、大人になって再訪してみると、個人を尊重するがゆえの距離感だったり仲良くなったり認めてくれると急に距離が縮まる感じがむしろ心地よく。僕が歳を重ねたせいなのかなとも思うけど、すっかりフランス派になってしまいました。いやイタリアも好きなんだけどたまにめんどくさい時もあるのよ。パートナー選びにも通じるかも知れない。

それはさておき、久々にパリを訪れたこともあって、パリの・フランスの魅力ってなんだろうと改めて考えてみたんです。

魅力的なスポットはたくさんあるし、料理だって美味しい(好みはあるけど)。いろいろ要素はあるんだけど、結局は「プレゼン上手」ということだと思うんです。

なぜ「パリ症候群」が起きるのか

聞き慣れないという方のために説明すると、憧れて住んでみたものの理想とのギャップを受けて精神にダメージを負ってしまうことです。wikiにはこんな解説が。

パリ症候群(パリしょうこうぐん、: syndrome de Paris, : Paris syndrome)とは、「流行の発信地」などといったイメージに憧れてパリで暮らし始めた外国人が、現地の習慣や文化などにうまく適応できずに精神的なバランスを崩し、鬱病に近い症状を訴える状態を指す精神医学用語である[2]。具体的な症状としては「日常生活ストレスが高じ、妄想幻覚自律神経の失調抑うつ症状をまねく[3]」という。

https://ja.wikipedia.org/wiki/パリ症候群#:~:text=パリ症候群(パリしょうこう,精神医学用語である%E3%80%82

シンドロームデパリ。フランス語だと病名もおしゃれだな。
主に2〜30代の女性が多いとのことですが、NY症候群とかトーキョー症候群とかは聞きません。実際はあるのかもだけど。

これって、ストレートに言うと「思ってた感じじゃなかった!話と違う!」ということですよね。なぜそうなるかと言うと、パリに対して過剰に憧れを抱いて渡仏したものの現実に跳ね返されてしまっているわけです。

そこには、フランスが「いいところをより良く見せる」のが上手いことも影響しているんじゃないか、と思うんですよ。僕はマイナスから入ったので、逆に良かったのかも知れない。

そういう「良い部分」ばかり見て行った結果、そうでない部分も沢山あることが分かりショックを受けてしまう。これはフランスが悪いわけでもその人が悪いわけでもないのですが、憧れや期待を抱かせる見せ方、というのはフラットに考えて学ぶべき価値があるかなと思うわけです。

機内安全ビデオに”見せ方の教科書”があった

フランスのナショナルフラッグといえばAir Franceですが、その機内で流れる安全ビデオのクオリティが異常に高いのです。まずはご覧ください。

いやもうこれは一企業の安全ビデオを超えて、フランスの観光案内ですよね。必要事項を組み込みつつお洒落に繋いで、色々な名所を盛り込んで期待感を高めている。個人的にはEXIT案内がファッションショーになってるとこが好き。

ルーブル→オペラ座→南仏→パリコレ→セーヌ川→エッフェル塔と繋いだ映像はまさに名所プレゼン。それと内容を上手にリンクしているセンスも良いのだけど。

ポイントは、機内安全ビデオという「面白くなくて当然」なものを最大限お洒落に、面白く作っているということです。

必要上どうしても見せなきゃ・見なきゃいけないものという発想を大胆に転換して、300人が必ず観る=プレゼンのチャンスと考えた。これが素晴らしいと思う。そして、観てもらうために全力で面白く作った。その遊び心は観る側にも伝わります。

確かに視聴率が高いこと確定なので頑張って作る価値はあるし、エールフランス自身にとっても好感度獲得のチャンスでもあるわけです。これにGOを出せる柔軟な発想も素敵なんですけど。

エールフランスに乗ってる人はフランス関連の人がほとんどなので、フランスに対する親和性は高い。これを観て否定的な反応をする人はまず居ないでしょうし、旅行者にとっては気分を高める効果しかない。好意を持っている人にそれをさらに即すアプローチをしてロイヤルティを高める、という基本が詰まった教科書と言っても良いのではないかと思います。

観光名所がひと目で分かる街並み

そういう「見せ方上手」な一面は街づくりにも表れています。そんな写真はこちら。

これは市内最大の百貨店、ギャラリーラファイエットの屋上からの景色ですが、ご覧の通り建物の高さが均一で見通しが良いのです。中央にエッフェル塔がそびえ立ち、左手にはアンヴァリッド廃兵院が見えます。こういう景観も魅力のひとつですよね。

これは今から150年ほど前、ジョルジュ・オスマンという人物が行なった”パリ改造”によって生まれたもの。当時は細く入り組んんでいて不便、不衛生だった街に大々的にメスを入れ、大通りを増やし、都市景観を守るために建物の高さや屋根の仕様、外壁の材質にまでこだわった成果です。

中々ここまで景観を意識した街づくりは例がないのかなと。あまりにも大改革だったため当時は賛否両論渦巻いていたようですが、時を経てその価値は高まっていると言ってよいでしょう。この景色でなければエッフェル塔のシンボリックさはここまで際立っていないかも知れない。

日本でも高さや新しさではスカイツリーが勝りますが、東京で聞くとシンボルは「東京タワー」と言う人が多い。それは東京タワーが一番高い建物だった時代の景色の印象が強いからだろうと思います。

他にもオペラ座前の大通りの一直線に開けた眺め、凱旋門から伸びる放射状の道路などパリに絞っても景観を意識した場所は多数あります。結果そこがフォトジェニックなスポットとして、各国の旅番組や旅行案内、SNSで拡散されさらに観光客を呼んでいく。150年前に作られたものの価値を守り、しっかり今も使っているわけです。めちゃくちゃコスパが良いですよね。

イタリアなどヨーロッパは特に多いですが、特にフランスは「ここ見て!ここ来て!」というのが上手い。分かりやすいから選ばれやすい。ちゃんと自国の魅力を把握してプロモーションしてるなと感じるわけです。

「特別感」を守るブランディング

ファッションに於いてもフランスブランド、というと特別なイメージがあるかなと思いますが、そこにもプレゼン=見せ方の手法やマインドが活かされているのではないかと。

シャネルやルイヴィトンを例に考えてみます。

この両ブランドはフランスを代表するだけでなく、業界を代表するブランドなわけですが、それを支えているのは「特別感」ではないかと思う。

多様なブランド、より高級なブランドだってある中で、その地位は揺るぐことがない。今も昔も憧れやステータスの対象であり続けています。それはしっかりとブランドがコントロールしている”見せ方”にポイントがある。

要は、主導権をブランドから渡していない。距離感はブランドがコントロールしている。大ブームになって消えてしまうブランドを研究してみると、ブームになった時に主導権が消費者側に移ってしまっているんです。そっち側で勝手に盛り上がってブランドのコントロールから離れ、ブームの沈静化と共にもう時代遅れと捨てられてしまう。

この両ブランドは、そこを決して渡さない。
ブランドをどうするか、どうプロモーションするかは私たちが決める、ということを明確に示し、拙速に動かない。
だからその決断に重みが増し、特別感が生まれていくわけです。

プレゼンでも、何でもやります従いますという感じより、出来ること出来ないことをはっきり言って指摘してくれる方が「違い」を印象付けられますよね。そこに意思も感じられるし。いい意味での重みはあって良いと思う。

一方で、エントリーしてくる人に対してはフレンドリーで一流の対応をするよう徹底している。パリの本店に密着したドキュメンタリーを観たことがあるのですが、フランスの地方からヴィトンのお財布を買いに来たティーンの女性に対してとても丁寧な接客をしていました。

スタッフいわく「私たちにとってヴィトンの商品を求めるお客さまは皆等しい。よい買い物体験を提供するのがモットーです」と。コワモテの人が実は優しかった的な感じで、これはもうファンになりますよね。

他とは違う、主導権を渡さない特別感をプレゼンしつつ、実際に接してみるとフレンドリーで丁寧。もう最強です。その姿勢を長年崩していないからこそ、今もそのポジションにあるのだと僕は思います。

プレゼン=どう見られているかが大事な時代

今は、どう見せて、どう見られているかを考える、知ることが大事な時代です。

SNSをはじめとしたビジュアルや投稿文から受ける印象がファーストインプレッションになるし、みんな深く掘り下げない時代なので一発目の印象がより大事になる。

そういう意味で、フランスは歴史的にそういう印象術、プレゼン術に長けているなと。しかも、中身のないものを良く見せるのではなく良いものを更に良く見せる、その良さを多くの人に知らせるという王道をやっている。それは大いに学ぶところがあると思う。

僕もそこから学び、スタイリングの基本を「その人の持っている魅力を最大限引き出す。持ってないものを無理に服で借りてこない」と決めています。変に借りてくると違和感が出るんですよね。これを守ることで、結果クライアントの良さを広めるお手伝いができているのかなと思う。

ファッション含めた見せ方やヴィジュアルは、まさに一番分かりやすいところ。そこに力を入れるかどうかで、イメージや存在感、ひいては成果や業績まで変わってくる。これは個人はもちろんのこと、商品や企業もそうです。

日々そんなお手伝いをしていますが、そこに意識を馳せる人はまだまだ少ない。だからこそ、早く乗り出した人にアドバンテージができるのにな、と思っています。
 

折しも、某党の議員がパリ視察旅行に行って、エッフェル塔をバックにはしゃいだ写真をアップして炎上していますね。

個人的には「国民のイメージが何より大事な議員さんが、この写真をアップしたらどんな反応が起こるか分からない」ということに軽くショックを受けましたね。どう考えてもアカンやろと。

あの写真は記念としては良くて、仲間内で共有して楽しめばよかった。エッフェル塔のワンショットに、真面目な文章添えて公開しとけばこんな騒ぎにはなってないでしょう。

たぶん真面目に視察している(と信じたい)でしょうし、悪気はないのは分かります。でも当然政党アンチな人もいるわけで、あの写真は格好の攻撃材料になってしまった。そこで「これはこうなる可能性があるな」と思えなかったのが問題です。自分のプレゼンテーションを深く考えられてない。僕はそういうSNSの見せ方見え方みたいな講義を専門学校でしてますが、先生方にもレクチャー差し上げたいくらいです。

あとあのポージングにもツッコミたいですが、今日はこの辺にしといたろ。

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個人の方や企業様より、ファッションスタイリングを含めた見せ方やブランディングのご相談を日々承っています。何かお手伝い出来ることがあるかも知れません。「タイタンの学校(校長・太田光代)」でのファッション講師、専門学校ファッション科での講師などスピーカーとしての活動や専門家としてのコメント・執筆なども。まずはフォームからご相談、お問い合わせ頂ければ幸いです。

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オーダーメイドスタイリスト 神崎裕介

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