「わたしを離さないで Never let Me go」 カズオ・イシグロ 氏(読書感想文)(*ネタばれ注意)
既読かな、と思ったけど、
初読みだった。
まず、この小説、
設定がすごい。
1980年代くらいの、
イギリスでのクローン施設、
ヘールシャムでの話。
ここの子供たちは、
誰かのクローンで
ゆくゆくは、介護人を経て、
提供者(内臓の)になって
4度目で、たいてい使命完了、
死ぬ。
そのクローンにも、
個性があることを、
絵とか芸術で
示そうとしたのが、
ヘールシャムなんだけど、
中にいる子供たちは全然わからない。
主人公、キャシーは、
優秀な介護人のまま31歳。
子供の頃からの女友達ルース、
男友達トミーは、
じきに提供者となって死ぬ。
その特殊な環境下での、
主人公たちのささやかな感情の揺れを
細かすぎるほど描いている。
天才。
子供も作れない、
誰かの治療のために作られた
クローン人間・・・
かつて倫理的に問題になったころの
小説なのかもしれない。
でも、そんな社会的話題性よりも、
もっと深い人間の根本的な
苦しみが描かれてると感じた。
すごい。
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