わたしを離さないで

自らに課せられた宿命を静かに受け入れること。あるいは、無常の風に逆らうことなく、儚い諦念とともに理不尽な死を迎え入れること。沢木耕太郎が的確に指摘したように、本作は英米映画であるにもかかわらず、じつに日本的な印象を感じさせる映画である。

臓器移植やクローン技術といったテーマが物語に独特の緊張感を与えているが、登場人物の若者たちは不当な運命に抗うこともないまま、物語は淡々と進行する。その静かな佇ま

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静かに広がる痛み。 カズオ・イシグロ「私を離さないで」

優秀でいて、介護という仕事に誇りをもつ介護人キャシーの語りから、これから語られる登場人物が既にこの世に居ないことを知る。介護の物語において、亡くなった人たちのことをまず語り始めるというのは、おや、という感じだ。こういった語り口をはじめ、全ページにわたって「何か伏線があるのでは?」と思わされた。

さて、物語における介護とは、私たちの知るような、生活を豊かにするケアというより、臓器提供者の痛みを和

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読書ノート②わたしを離さないで

就活の移動時間に読んだ本の2冊目だ。
2冊目はこちら。

カズオ・イシグロの最高傑作との呼び声高い作品だ。
今回もネタバレ有で書いていこうと思う。

あらすじ

主人公キャシーはイギリスで暮らしており、「介護人」として「提供者」の世話を日々こなしている。

ヘールシャムは、いわゆる養護施設のような印象を受ける施設だ。
子どもたちと幾人かの先生が共同生活を送り、自由時間もあるし、勉強も教えてくれる。

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『わたしを離さないで』を読みました

わたしを離さないで、つい昨日読了しました。今更。

うーーん、すごく良かった。
良かったなあ。
うーん、良かった。

が感想です。

緻密に作り上げられた世界観、人間関係。
素晴らしい。。
最近、自分の物語の中の惹かれる要素のひとつに、緻密さがあるな、と自覚したところだったので、
すごく刺さりました。

物語の設定や描写の緻密さってリアリティに直結するので、ちょっとした表現がものすごく大事だなと思

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カズオイシグロをめぐる、しむちょんとの対話

前のノート、(初めはFacebookに投稿しているのだが)、ジョン・バンヴィルについて書く中で、カズオイシグロについて言及したところ、読書人生師匠のしむちょんこと志村浩二君が反応してくれて、面白いやりとりになったので、記録のためにアップしておこう。今、きちんと書こうとしているカズオイシグロ論の要旨、のような形になっています。

私の投稿の一部抜粋

「人生の後半、終わりちょっと手前に来た時に、若い

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大人の道徳

なんと表現したらいいか難しいこの本。

あえて表現するなら、「大人の道徳」というふうに表現したい。

この本のあらすじは書くのは避けようと思う。なぜなら、繊細かつ緻密かつ曖昧な本なので、何も事前の知識を持ち込んでほしくないと思うからである。

モヤモヤという感情が残り、複雑な気持ちになる本。

なにがいいのか、私の語彙では鮮明に表現をしきれない。しかし、自分の芯の部分にずしりと問いかけるこの本。結

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「るうす」がるうす の理由

まずなぜ私のペンネームが「るうす」なのか、何処からとったのかを紹介しようと思う。
私のことをまず何かしら知ってほしい。

何処からとったのかというと私の心底気に入っている小説、「わたしを離さないで」(カズオイシグロ)の作品からである。

その作品の主要登場人物のルースからとっているのだが、そのルースは主人公の親友に依存して、構って欲しいのか、その親友に邪魔や意地悪をしてしまう。親友への独占欲も

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ウツウツ日記 2/20

今日は朝7時にいちど起きた。もう一回寝て8時半にまた起きた。昨夜は得体の知れぬ不安蟯虫にサワサワ身体を襲われているような感覚があって、中々寝付けなかった。3時くらいに寝た。夢はハッピーな内容だったから安心した。

朝起きたとき、夜寝るとき、彼氏くんに今日の気持ちをラインで報告している。

ウツウツしはじめた時は、マイナスの内容ばかり送って迷惑だろうと控えるようにしていた。でも電話で辛い状況を思い切

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「わたしを離さないで(イシグロ・カズオ)早川書房」
受け入れがたい運命を受け入れるようになるために、高度に洗脳していく課程がリアル。
知ってるのに知らない。表層的には知ってるけど、深くは追わない。
未来のことは考えない。
これは私たちの日常にもよくあること。特別のお話ではない。

カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は、やっぱり『本』で読むのが最高だ。

私とカズオ・イシグロ作品との出会いは、2015年11月――。
この年の秋の大収穫は、村上春樹・翻訳の『グレート・ギャツビー』を読み終えたことと、ついにカズオ・イシグロ作品に突入したことだった。

(ちなみに『グレート・ギャツビー』は、読み進むのにめちゃくちゃ苦戦した作品だった。『フラニーとズーイ』同様、村上春樹の翻訳じゃなければ読み終えられなかったと思う。なんというか……古き良き?アメリカの富裕層

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お礼に「エメラルドグリーン」のエネルギーを送ります。真実の道をゆけ。
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