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HOLY NIGHTS 第28話「いつもの温かい胸」(連続短編小説)

その日の深夜、
純は、洋介のところに行った。

純はかれんに、
洋介は藤田に会った日。

お互い、なにがしか
疲れていた。

「泊まりでもないのに、
何でデライラを
うちに置いて行った?」

洋介の言葉の裏には、
誰かと泊まりがけの
デートのつもりが、
すっぽかされたんだろう
という純への嫌味があった。

まんざら外れてもいない
嫌味に、純は苦笑する。

もしかしたら、かれんと・・・
という下心があって自分は、
デライラを洋介のところに
置いて行ったのだろう。

が、下心どころか、
もっと重たいものを背負わされて
帰って来た純は、
洋介の質問に答える気力もない。

「・・・良樹とは、どうだった?」

すっぽり話を反らす純に、
洋介は怪訝な顔をする。

「まずは、オレの質問に答えろよ」

滅多にそんな言い方を
しない洋介の反応に、
純は苦しそうな溜息をつき、
洋介の体にすがりつく。

「・・・ヨウ・・・」

洋介は余計ムッとして、
純を突き放そうとする。

「お目当てにフラれて帰って来て、
いきなり、オレかよ?」

純は黙って首を振る。

「・・・お前の予想通り、
かれんさんと会った。
でも別にフラれたりしてない」

「かれんさんと会って、
フラれてないのに、
帰って来た??」

「また、いろいろ話すよ。
ちょっと疲れちゃって・・・
ヨウ・・・」

純の甘えるような声に、
洋介はフンッと鼻を鳴らすと、
ぐいっと純の体を抱きしめる。

「身勝手な奴!」

「百も承知だろ?」

「わかってても腹が立つ」

純はおかしそうに笑うと、
安心しきった顔で、
洋介に身を任せる。

自分の胸の中で、
目を閉じて、
浅い呼吸をしている
純に気付き、洋介は、
そっと純の背中をさすってやる。

すると、純の呼吸は
徐々に深くなり、
洋介の胸の中で、
うつらうつらし始めた。

間近で見る純の寝顔は、
男の寝顔なのに、
美しかった。

いや、ビジュアル的に
美しいというだけではなく、
洋介には愛おしいのだ。

しかし、洋介は、決して
ゲイでもバイでもない。

男であれ、女であれ、
‘国沢純’という人間に
惚れ込んでしまったのだ。

「バカみたいだ」

洋介は苦笑して、
眠っている純をやさしく揺さぶる。

「おい、純、お前のせいで、
オレはバカみたいじゃないか」

一方、純は目を覚ますことなく、
洋介に抱きしめられ、
すやすやと眠っていた。


             続


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