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世界各国の食を巡る:クルド料理編

唐突に思いついた。
東京近郊で、世界各国の料理を食べよう。

ことの発端とあらまし。

・海外旅行に行きたい
・そこまでの時間とお金はさすがに厳しい
・海外で自分が楽しみにしていることは何か
・全てではないけれど、やっぱり食事がかなり大きい
・食事だけでも海外旅行気分を味わえれば良いのでは?

よし行こう。
最初は……最近なにかと気になっている中東付近だ。

というわけでやってきたのは埼玉は越谷。

埼玉のこの界隈、クルドの人々が拠点にしているらしく、現地人のためのお店がいくつもできているとか。川口の周辺は中国の人たちで本格的な中国料理(ガチ中華)が栄えているし、東京近郊にはいくつものリトル◯◯ができてきているのだろうか。

クルドの人々については、ちょっといろいろと問題が発生しているのは承知しているけれど、それはそれ。全員が問題を起こす人たちとは思っていない。


訪れたのは、越谷駅から30分ほど歩いた場所にあるSKY CAFE&RESTAURANT。正直、徒歩では行きにくい場所ではあるので、アクセスには車が一番良さそう。現に、訪れる人たちはほぼ全員車だった。そして客は1組を覗いてクルド人らしき人々だった。

メニューを見てみると、なんとなく想像していたトルコ系の料理なのだけれど、知らないものも多い。スタッフにメニューに載っているものについて訊くと、「まだ作っているところ」というのが多かったので、既に出来上がっているものを見て注文させてもらうことに。メニューのものと似ているが別物らしい。

TAVAの一種。茄子とピーマン・パプリカ、トマトとひき肉をひたすら煮込んだもの、という趣き。セットでかなり大ぶりのプレーンなピデがついてくる。TAVA(タワ)というのは一般的には鍋のことを指すわけだけれど、ここでは鍋というか鉄板料理。すでに一度煮込み料理として作ってあって、それを鉄板に載せた後、提供直前にオーブンで温める、というか表面を少し焼き付ける。提供直後の香り立ちが良くて食欲がそそられる。

味付けは意外にもシンプルで、香辛料や塩がドバドバ使われている感じが全然しない。ほんのり辛さがある程度で、どちらかというと肉と野菜の滋味深い味わいが口の中に広がる。ただ、油は多め。そのおかげでリッチというか野趣あふれる味わいというか。

煮込み料理とは言ったけれど、汁気が殆どなくどちらかというと油なので、多めの油でつくる無水の蒸し炒めもの、なんだろうか。パプリカの種まで取り除かれずに加わっているところから考えると、とにかく野菜をざくさく切って大鍋に入れている感じがする。

ピデは、結構もちもちで単体で食べても美味しい。インドのナンともまた全然違う。最近のインド料理屋のナンは特に甘さが強く出ているので、それと比べるとシンプルで素朴。これまた料理とも同じ傾向。味が強すぎないので、料理の素朴さとちょうど良くマッチしている。

レストランとなっているけれど、どちらかというと家庭料理的な味つけなのでは。なんというか、ハレの料理ではなく、どちらかというとケの料理に近い気がする。家庭料理とはまた違うのかもしれないけれど、大衆食堂的な感覚がある。

と、ここでメニューにAyran(アイラン)を発見したので、嬉しくなって勢いで注文。久しぶりに見かけた、塩ヨーグルトドリンク。ひき肉が羊肉じゃなかったのがちょっとだけ残念だけれど、こういう料理にはやっぱり合う。

アイランは羊肉との相性が最高だと思っている。むかし旅をしたボスニア・ヘルツェゴビナで、チェバプチチと共に初めて飲んだアイラン、あのマッチングは衝撃的で、甘くないヨーグルトの飲み物がここまで料理に合うのか、と本当に驚いた。あのときの、炭焼きの香りが漂うチェバプチチは最高だった。

軽く昔の風景にトリップしつつ、こうしてまた日本で体験できるのは、なんだか面白い。お昼時が近くなり、周りのお客さんたちの会話は当然のように日本語ではない、まったく耳馴染みのないことばが行き交っている。本当に日本じゃない異国の地に来ているみたいだ。

周りの人も思い思いの食事でお腹を満たしている。持ち帰りの人もかなり来ていて、このあたりのクルドの人たちには人気の店らしい。そして、ほぼ全員が飲んでいるのが、アイラン。やっぱりこの飲み物がスタンダードなんだなあ、と改めて気付かされる。持ち帰りの人も、ペットボトルにアイランをつめてもらっている。割と薄めでドロッとはしていないから、ペットボトルに入れるのも簡単らしい。個人的にはもう少しドロっとしていた方が好きなのだけれど。

食事は割とボリューミィで、特にピデが1.5枚分もあるので、かなりお腹いっぱいになってしまった。本当はもう少し別のメニューも試してみたいところなのだけれど。また来れば、というにはちょっと遠いのが難点だけれど、異国の雰囲気を味わいたくなったら、ここを目指そう。

ごちそうさまでした。


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