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[旅行記] 祈りの街 ブラガ

ポルトの街はひと通り見てまわったので、近場の別の町へ行こう、と思い立つ。

地図を見てみると、どうやら北にあるブラガという町がなかなか良いらしい。宿に近いサンベント駅から電車が出ているので、行ってみる。

霧に烟るサン・ベント駅

朝のラッシュ時間帯の電車から降りてくる人の多さ、みんな足早に歩いていく姿は日本もポルトガルも大きく変わらない。ブラガ行きの電車は下りになるので、列車内はガラガラ。自分ともうひとりしかいない。

ポルトガルの通勤ラッシュ

と思ったら、女性が声を掛けてきた。
「あなた、ブラガへ行くつもり? この車両は次のカンパーニャ止まりですよ」

そうなの? 慌てて外へ出る。なんでも、後ろ側はカンパーニャ止まりで、ブラガに行くには前側の車両に乗らないといけなかったらしい。出発の2分前。親切な方のおかげで助かった。お礼を言って、改めて席につく。

のんびり田園風景が広がる車窓を眺めながら、1時間ほど揺られてブラガの町へ。
電車内は寝ている人がちらほら。こういうところも日本と大きく変わらない。治安が良い証拠だと捉える。

それまで降っていた雨は、ブラガに到着したらちょうど止んで晴れ間が。
とりあえず駅を出て、町の中心の方へ向かって歩く。

ブラガは「祈りの町」というキャッチフレーズがあるらしい。そんな知識だけを持って町を見てまわってみると、なるほど確かに教会が多い気がする。試しにひとつ入ってみると、ちょうどミサが行われていた。

日本にいるときには教会なんて行かないし、ミサにも参加したことがなかったので、まったく知らないのだけれど、なんにしても興味がある。後ろの席に座らせてもらい、暫く聞き入る。意味は良くわからない。けど、雰囲気は感じ取れる。自分の中のイメージと、これまでの主に仏教神道の経験とも比べてみる。

ちょうど終わり際だったのか、5分ほどで終わる。最後に人々が起立し、言葉を口々に帰っていく。これはたしか、「行きましょう、主の平和のうちに」だったはず。なるほどこういう感じなのか、と思いながら自分も教会を後にする。

その後もいくつかの教会を訪れ、ミサが行われているものもあった。平日の午前中なのだけど、参加している人が思ったよりも多い。もちろんほとんどはご老人なのだけど、普通に中年くらいの働き盛りと思われる人も結構多い。

また、小さな町なのに教会がいくつもあって、しかもその内部は驚くほど壮麗。外からではまったくわからないのだけど、中に入った瞬間のあっと驚くような内装を見るのが、途中からかなり楽しみになってくる。

それぞれのスタイルがあり、由来も様々。

そして、そこに集う、祈る人々。
そして説教に耳を傾ける人々。
たしかにブラガは「祈りの町」と呼べるかもしれない。

異国の中にあって、更に異国な空気。でも人はさりげなくも優しい。教会の扉を開けていいのか分からなかったけど、問題ないから入りなさいとジェスチャーで伝えてくれたり、通路を譲ったり譲られたり、そこで一言挨拶をもらえたり。

少し離れた墓地にも赴く。墓地も、海外に行くときにはだいたい訪れるようにしている場所。なぜなら、そこに人々のふだんの振る舞いが見えるから。失礼にはならないように特に気をつけながら、でも日本と、そして他の国々と比べるために見させて頂く。

自分が知る、西洋の墓地ともまた違った。小屋のようなものが立ち並んでいる。

キリスト教の墓地は、地面に埋葬してその上に十字架や墓標を立てるような姿だと思っていたので、このような小屋が立ち並ぶ姿はまったく想像していなかった。ガラス扉になっているものもあって、中を伺うと棺がいくつか収められている。小さな家のようにも見える。最後の審判の日まで家族が共に過ごす家、なんだろうか。

自分がイメージしていた姿の墓地もあったけれど、主流ではないように見えた。また、小屋を建てられない人向けなのか、集合住宅のようなスタイルの墓地も。生前の家のように、一軒家とマンション、みたいな対比を感じる。

これだけの人生が、歴史があったんだ。そう改めて思うと、なんだかちょっと暗い心持ちにもなる。途中、自分と同じ年に生まれて20歳ころに亡くなった人の墓標が見えた。刻まれている文字を翻訳して読むと、生前のことが少し伺える。なんともいえない気分になる。

決して楽しいものではないけれど、でも、やっぱり次の国でも墓地を訪れると思う。言葉にできないけれど、自分の中に気づかされるものがあるから。


ちょうどお昼時になって、店を探す。途中、町の中心にある大きな教会の前で良さそうな店を見つけるが、ブラガの名物らしい バカリャウ・ア・ブラガ(Bacalhau à Braga)という料理を食べてみたかったので、そちらの店に向かってみる。

実際に店を訪れたのだけど、なんというか、値段的にも雰囲気的にもちょっと Not for me な感じがしたので、退散する。なんか違う。もっとこう、普通の人たちが気取らずに食べているようなものを食べてみたいんだ。

そう思ってふらふらしてみるも、あまり良いところが見つからない。実は後で見つかるのだけど、このときは残念ながら気づかなかった。

やっぱりあそこかな、と町の中心に戻る。仕事中にちょっと小腹がすいたので食べに来た、という出で立ちの地元のおじさんたちで賑わっていて、それがとても印象的だったので、この店に。

Pastelaria A Favorita

パン屋というかクロケット屋みたい。店の周りに手描きのイラスト付きメニューがあって、なんだかちょっとかわいい雰囲気。お店のトレードマーク? も、なんだかちょっとかわいい。でも、店主はなかなかにいかめしい顔つきのおじさんで、ギャップが面白い。

店の前でおじさんたちが食べていたのが気になって、クロケットを何種類か、そして店先で存在感を出していた大きなパイのようなものも。これらはきっと軽食扱いなのだろうけど、いろいろと頼んでちゃんとしたランチにしてしまおう。スープを頼んでも良かったのだけど、ちょっと食べ切れなくなりそうだったのでコーヒーで。

なんだかちょっとしたパーティのようになってしまった。これだけいろいろと揃うと楽しくなってテンションが上がる。

フリジデイラ(frigideira)というのは、フライパンという意味らしい。なるほど確かに形からしてフライパン。ひと口食べてみると、すごいバターの味と香りがする! 中はひき肉が入っている。けど、ちょっと肉感は少なめなのが残念。

これは鶏肉のパイ。かなりクリームペーストっぽい仕上がりになっていて鶏肉なのかどうなのかわからないくらい。シンプルで素朴な味。

バカリャウのクロケットは、濃厚でクリーミー。そして、バカリャウがみっちりしていて小さいけど食べごたえがある。ちょっと塩気が強いかな。ビールのおつまみにしたらかなり良さそう。

もうひとつのツナは、まるでツナクリームコロッケといえるような濃厚クリーム感。まわりのパン粉? が凄い細かくて、でもカリカリサクサクと良い歯応え。中は濃厚なツナクリームのパテのよう。塩気もちょうど良くて、これは美味しい!

いろいろな味を楽しみながら、ふと目を上げれば美しい大聖堂の姿。外はタバコの煙でやられることが多いのでそこは注意なのだけど、このときは運良くそんなこともなく。地元の人たちで賑わう店で、晴れ間の下で素晴らしい風景を見ながらのランチ。

良い店だなあ、ここ。

クロケットが美味しかったので、地元の人で人気なのも納得。いろいろなクロケットを10個くらい持ち帰って、ビールと共に一杯やりたかったな。

ごちそうさまでした。


大きくはないので夕方前にはひと通りまわり終えて、夕方の電車でポルトに帰る。

ブラガは、かなりおすすめできる町だと思う。

ポルトが京都なら、ブラガは奈良だろうか。歴史的な建物が多くあるけれど、混みごみしてないし、屋外でタバコ吸っている人もそこまで多くない。食事どころもそれなりにあり、しかも探せばかなりリーズナブルに食べられる食堂やフードコートも。どれもかなり美味しそうだったのだけど、見つけたのが昼食後だったので残念がらパス。ポルトが値段高いので、相対的にこちらが安く感じる。5ユーロでしっかり食べられる場所もあったし、7ユーロ程度の場所も多い。

また、自分は知らなかったのだけど、ブラガの郊外にボン・ジェズス・ド・モンテ聖域(Bom Jesus do Monte in Braga)という世界遺産があるらしい。バスでならそこまで遠くないらしく、ぜひ行ってみたかったのだけど、帰ってくるまで知らなかったので残念ながら。

聖域まで含めると、ちょっと1日だと慌ただしいので、ブラガで一泊するのもいい選択肢だと思う。朝にポルトからブラガに移動して、聖域もひと通り観光してブラガで一泊。次の日は、さらに北上してスペインまで行ってしまうというのも、ちょっとやってみたかった。スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)といえば、巡礼の聖地。訪れる価値は十分にあるはず。

ブラガ。ポルトガルの中でも、かなりおすすめの町。

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