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気温は走行距離と相関するのか。

「気温が上がると走行距離は伸びない」は本当?

 サガン鳥栖は昨年から、1試合の走行距離が J1 クラブの中で最も多く、今シーズンも他クラブを寄せ付けない圧倒的な記録を更新中です。しかも今年はスプリント数でもトップを走っている。そこでつけられたニックネームが『爆走プレス軍団』(笑)。

 しかし、スポーツ紙やSNSなどでよく書かれているのが「夏場になれば走行距離が伸びないのでは?」といった冷めたコメントが散見される。おいおい、ちょっと待て。何を根拠にキミたちはそう言っているのだ?私にはさっぱり。意味がわからんぞ、検証したんだろうなぁ。

トラッキングデータの解析

層別するための気温について

 ということで、先ず昨シーズンの試合開始時の平均気温をみてみると、2021年は 21.37 ℃でした。中央値でも 22.6 ℃なので流石にこの気温で熱いとまではいかないですね。気温が高い、低いを分けるためのボーダーを決めないといけません

表1 2021年および2022年の平均気温・最高値・最小値・中央値

 
 そこで、とあるアンケート調査で職場環境における設定温度が、25.7 ℃ということだったので(屋外と室内では条件が違うだろという、ごもっともなご意見は一旦無視するとして)、25 ℃未満と 25 ℃以上で層を分けることにしました。

図1 職場の冷房設定温度アンケート


2021年の層別解析

 25℃未満が27試合で25℃以上が11試合でした。その結果は図2の通り。

図2 2021年 サガン鳥栖と対戦相手のトラッキングデータ
層別(左:25℃未満/右:25℃以上)

 黒の棒が走行距離( km )で白の棒がスプリント(回)となっています。

走行距離の結果(2021年)

 25 ℃未満も 25 ℃以上もサガン鳥栖が対戦相手の走行距離を優位に上回っています。気温の層別でみてみると、鳥栖の走行距離は 25 ℃未満より 25 ℃以上の時で有意に距離が短くなっていたものの、対戦相手も同様にも短くなっています。

 結論『気温が上がると走行距離が伸びない』という仮説は正しい。ということになります・・・なんか悔しい。ただ言い訳をすると、相対的に対戦相手も伸びてないので、鳥栖だけが伸びなくなるのではありません!!!

スプリントの結果(2021年)

 気温の層別で比べると数値上では、25℃以上回数は落ちるようにも見えますが有意な差まではありませんでした。ということで、スプリントに関しては温度による変化はないという結論になります。


2022年の層別解析

 今年はここまで18試合を消化したところで、夏本番はこれから。ですが25℃を超える試合が3試合あったので、2021年と同条件で層別に解析してみました。

図3 2021年 サガン鳥栖と対戦相手のトラッキングデータ
層別(左:25℃未満/右:25℃以上)

 見方は2021年と同様です。

走行距離の結果(2022年)

 2021年と同様に25 ℃未満も 25 ℃以上もサガン鳥栖が対戦相手の走行距離を優位に上回っています。しかし、気温の層別で比べても有意な差がないことから、昨年と違って現状では『気温が上がると走行距離は伸びない、ということはない。』となり仮説は間違っていることになります。


スプリントの結果(2022年)

 スプリントも2022年の走行距離と同様に、25 ℃未満も 25 ℃以上もサガン鳥栖が対戦相手の走行距離を優位に上回っています。こちらも気温の層別で比べても有意な差はないことから、スプリントに関して温度による変化はないという結論になります。


総まとめ

 まとめると・・・
【走行距離】
・2021年では、気温が上がると走行距離は伸びなくなることは正しい
・しかし、対戦相手も相対的に伸びなくなるため、サガン鳥栖だけ走行距離が伸びなくなるとは言えない
・2022年では、気温が上がると走行距離が伸びなくなるということは、正しくない(ただし、第18節までのデータまでは)
【スプリント】
・2021年、2022年いづれも、気温が上がるとスプリントが伸びなくなるということは、サガン鳥栖でも対戦相手でも言えない

 要は、言っていることは正しいですが、「サガン鳥栖が」に限定するとそれは間違っていると言えそうです。いずれにせよ、サガン鳥栖は今シーズン『爆走プレス集団』と言われ続けることだけは、揺るぎなさそうですね。

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