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90分をマネジメントできなかった日本のベンチワーク(ワールドカップ 日本vsベルギー)

勝てた試合を取りこぼした、が僕の率直な感想です。

後半立ち上がり、あのベルギー相手に2得点。
それも、右サイドと左サイドの両方からベルギーDF陣を切り裂いて。
前半スコアレスというだけでも上出来なのに、2点も奪うなんて。

問題は、この後の日本の対応だったと思います。
採るべき方法は2つ、
1)セーフティリードとなる3点目を奪いに行くのか
2)このままリードを保って試合を終わらせるのか
のいずれか。

ここからのベンチワークが遅かった。
2点を先制されたベルギーがフェライニとシャドリを投入したのが後半20分。
カラスコを早々に諦めたのもそうですが、フェライニ投入はベルギー対策に組み込まれていたはず。

ところが日本の交代は後半36分。
ヴェルトンゲンはともかく、後半29分のフェライニのゴールから7分後です。
これはさすがに遅い。
定石に従うなら2点目を奪った直後。
どれだけ遅くとも、後半24分のヴェルトンゲンのゴールの後に動いていなければいけません。

投入選手のチョイスも「?」。
山口蛍は分かりますが、本田圭佑は「なぜ?」というところ。
高い位置どりでボールキープさせてチーム全体を押し上げさせる……という意図かもしれませんが、それは攻撃に転じるときに必要なスキルで、守備的な山口の投入と矛盾が生じます。客観的に見ても、選手も「え?同点なんだけどこのまま延長戦まで引き込むの?それとも3点目を取りに行くの?」と戸惑ったのではないでしょうか。

また、チームのコンダクターとして才能を発揮していた柴崎岳を下げたことも不可解。
見ている限り運動量は落ちていなかったし、前半から通して見てもベルギーの攻撃陣をしっかり封殺していました。そう、ベルギーのスピードについていけていたんです。さらに言えば、2得点に絡んでいたとおり彼を経由することでチームに潤滑油が与えられていました。
柴崎を下げたことで、「ボールの預けどころ」がなくなっていました。

投入された本田も、やたらと積極的に攻撃参加します。
あの動きを見たら「あ、3点目を取りに行くの?」と誰もが思うでしょう。
ただ、聞いたことがないですね。
「リードしているチームが攻撃に出る」なんて。
なんにしても、リードしていた2点を取り返されたという事実がすでにアウト。
完全にベンチワークの失敗です。

GL第3戦のポーランド戦で惰性のボール回しをしたチームと同じとは思えない攻撃性を見せつける日本。
それを今ここで発揮し、延長戦を狙うべきでした。
なぜならば、ベスト8以上を狙っているベルギーこそが延長戦を嫌がっていたからです。

なぜか攻勢に出た日本とカウンターを狙うベルギーという真逆のパワーバランスが生まれ、結果そのカウンターでロスタイムに一撃を見舞われての敗戦。

悲劇?
いやいや喜劇でしょう、これ。

選手のパフォーマンスは素晴らしかったです。
際どいシーンこそあれど、あれだけルカク、アザール、カラスコを封殺したのはお見事。
そして8年前の2010年南アフリカ大会の時とは違い、したたかにカウンターを狙う姿勢まで見せ、あのベルギーから2点を奪ってみせた。サッカー専門誌にならって選手個々の採点をしろと言われたら、全員7点代をあげたいほど。

ベンチワークの拙さが、勝てる試合を逃した。

浮き足立ったのかどうか、それはおいおい分かることでしょう。
ただ、海外リーグで活躍する選手が続々と生まれるなかで、指導者レベルがまったく上がっていないことを浮き彫りにしたゲームだったな、と。
それも元をたどれば、2ヶ月前のハリルホジッチ解任騒動に端を発するわけです。

ハリルホジッチだったらどういう結果だったか、それは議論しても仕方がないこと。
日本で指折りの日本人指揮官を(2ヶ月前というタイミングで)投入した結果が、マネジメント能力不足とは。
これで「感動をありがとう」「よくやった」なんて、とてもじゃないけど言えません。

「試合の終わらせ方」に対する課題は何年も前から言われていて、この大一番で仕出かした日本。
まずないですよ、こんなビッグチャンス。
初戦の開始3分での退場劇から始まるサクセスストーリーでここまで走ってきて、眼前でベスト8を逃すなんて。
これを喜劇と言わずして何と言いましょうか。

お涙頂戴でこれまでの積み重ねをうやむやにする文化を続けるなら、日本は向こう数十年、ベスト8の壁を破ることはないでしょうね。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

敗北には必ず原因があり、それと向き合い克服することで、次のステージへと進めます。
この試合の余韻だけで4年過ごすのは、歩みを止めるのと同じ。
繰り返しで恐縮ですが、敗因は「ベンチワークの拙さ」とはっきりしています。
2006年、2010年、2014年と同じことを繰り返す日本。
ある意味「得点力不足」よりも深刻な病と言えるやもしれません。

「感動をありがとう」なんて薄っぺらい言葉で彼らの戦いを彩っているうちは、2022年クウェート大会でも同じことをやらかすでしょうね。

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