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「死で人生は終わる、つながりは終わらない」 〜『モリー先生との火曜日』より

 土曜は、森&モリーの両先生から学ぶ一日でした。お二人ともすでに故人ではありますが、今を生きる僕たちに多くのことを”語って”くれました。

▼午前:森信三先生講話録DVD 鑑賞会(人間塾 東京 特別企画)
▼午後:『モリー先生との火曜日』に学ぶ読書会(第86回 人間塾in東京)

森信三先生 講演「人生二度なし」

 明治〜平成の時代を生き、「国民教育者の友」として生涯を教育に捧げた森信三先生。代表的な著書『修身教授録』は、天王寺師範学校での2年間の授業を記録したもので、森先生は当時 40歳前後。本から受ける先生のイメージは、丁寧に黒板を消す姿、にこやかに話をされる姿、「諸君!」と激を飛ばして熱く語る姿 などなど。

 今回鑑賞したのは、昭和60年、61年の2回の講演を記録したDVDで、先生は御年90歳! 80代に脳血栓で倒れた後遺症で麻痺がのこるため車椅子に座っての講演でしたが、壇上で話す姿は表情も豊かでイキイキとしたものでした。

 2つの講演のテーマは「人生二度なし わたくしの死生観」と「わが一生をかえりみて」。「死」や「生」についての発言のなかで、個人的に響いたフレーズを記録しておきます(手元メモからなので、言い回しが正確ではないのはご容赦を)。

死ぬとは、生まれる前の世界に還ること。これは、誰にも訪れる絶対の真理。だからこそ「死ぬまでの間をどう生きるか」
心と肉体を使い古したから、すっとひっこむ。それが死。役目は済んだということ
散った花は元の枝には戻らない。厳しい。人生二度なし、とはそういうこと。 しかし、無に帰するわけではない。生命の大元にかえる
真剣にやったという趣は遺る。確実に。
その人をよく知っている人物に与えた影響だけは残る
「人生二度なし」というと、「私も日々精進して…」という人がいるがそんな高尚なことはできない。晩年にいたって後悔しない、くらいがいい。
多くの方にお世話になりながら十分な報いができていない。麻痺の手で1日3枚の礼状を書くのが限度。
同行二人。今後開く読書会には、私も影のように参加させてほしい。見えないでしょうが(笑)

特に最後のフレーズには痺れました。『修身教授録』などを愛読する読書会仲間で企画したイベントだっただけに、聴いた瞬間みなから思わず声が…。
「信三先生、毎回いらっしゃっていたのか!」と。

そんな感動で幕を閉じた午前の会でした。

『モリー先生との火曜日』に学ぶ読書会

 午後は、例月の読書会。課題図書は『モリー先生との火曜日』で、著者は当時スポーツライターとして激務のなかにいたミッチ・アルボム氏。大学時代の恩師モリー(モリス・シュワルツ氏)がALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されたことをテレビ番組で知ったミッチが、先生を訪ねて16年ぶりの再会を果たし、その後 毎週火曜に個人授業を受けた内容を綴った本です。

 余命宣告され、毎週会うたびに身体も動かなくなっていくモリー先生。まさに「死」がすぐそこまで迫っているはずなのに、本書内で語られている言葉は、ユーモアや優しさにあふれたもの。だからこそ胸に響きます。

「誰か心を打ち明けられる人、見つけたかな?」
「君のコミュニティーに何か貢献しているかい?」
「自分に満足しているかい?」
「精一杯人間らしくしているか?」
いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べるんだよ
こうしてあげたいと、心の底から出てくることをやるんだな
自分なりの文化を築く。どう考えるか、何を価値ありとみなすか、これは自分で選ばなければいけない。
仲直りすること。自分と。
それから周囲の人すべてと仲直り。
人間は、お互いに愛し合えるかぎり、またその愛し合った気持ちをおぼえているかぎり、死んでもほんとうに行ってしまうことはない。つくり出した愛はすべてそのまま残っている。思い出はすべてそのまま残っている。死んでも生きつづけるんだ──この世にいる間にふれた人、育てた人すべての心の中に

極め付きは、亡くなる約1週前の”授業”でミッチに語ったこの言葉。

死で人生は終わる、つながりは終わらない

午前に聴いた森信三先生の言葉「私も影のように参加させてほしい」にも通じる「つながり」でした。

おわりに

 今回、二人の先生の語る「死」や「生」にまつわる言葉をたくさん聴き(読み)ました。そこで共通的に感じたのは、人と人との「つながり」への強い意識です。特に、時を超えた縦へのつながり。

 もうひとつ感じたのは、お二人ともどう生きる「べき」という言葉を使っていないこと。死や生に対する覚悟や想いは、ご自身では強く持っているはずですが、それを他人に向けて「べき」という言葉で乱暴にぶつけず、柔らかい言葉でニュートラルに投げかけてくれている、そんな印象を持ちました。森先生の「晩年にいたって後悔しない、くらいがいい」や、モリー先生の「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる」もそんなやさしさを感じます。

 投げられたボールを受け取って、自分の生のつづく限り歩み、そしてまた次の人たち(子どもだけでなく、日々関わっているすべての人)にそっと渡していきたい。そんな感想を抱せてくれる2つのイベントでした。

▼こんな読書会活動にご興味あれば、ぜひ覗きにきてください。(次回4月20日の課題図書は松下幸之助著『道をひらく』です)

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▼関連note
 恩師にもらった、生と死に関する言葉です。


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