会話2.もし私が未来から来たって言ったら
「ねえ、私、実は未来から来たって言ったら、笑う?」
「え、なに急に」
「急に言われてもびっくりするよね。実は、私は未来から来たんだけど」
「ああ、時かけの台詞か、そういえば先週ロードショーでやってたね」
「そ…じゃなくて、ホントに未来からきたの」
「ふーん」
「うん」
「…で、なんで来たの?」
「え?」
「なんか理由があってここに来たんじゃないの?」
「え、ああ、その…そう!未来のあなたがどうしようもないダメ人間だから、過去のあなたを真面目な人間に矯正するために来たの!」
「ええ…それドラえもんじゃない?」
「あ、うう……いいじゃん!そういうことで来たの!」
「そっか」
「そうなの」
「ふうん」
「……」
「でもさ、残念だな。そうすると未来の僕は君と結婚しないかもしれないのか」
「え?」
「まあ、安定した収入もない平々凡々なフリーランスから、しっかりしたサラリーマンになったら僕もまともな人間になったら、君も僕なんかよりもっと素晴らしい人と結ばれるかもしれないね」
「え…なんで?今出会ってるよ?なんでそんなこと言うの…」
「今僕の目の前にいる君は、現在の世界の君じゃないでしょ?」
「うっ……」
「だってさ、君が未来から来てるわけだから、現在の君は僕に会ってないわけだ。未来の技術がどうかわかんないけど、たぶんつじつまを合わせるために色々改変が起こるよね」
「え?うーん、多分……」
「僕がまともな人間になった後、君は未来に帰るでしょ?もしかしたらその時には君に関する僕の記憶が無くなるかもしれない」
「え?」
「まあ無くならないかもしれないけどさ、どっちにしろ確実に君が帰ってからの僕の人生は変わるでしょ?ということは、本来あるはずだった未来も変わってるわけじゃん」
「うん……」
「ほら、今は未来の君と結婚してるわけじゃない。ということは、現在どこかにいるはずの君と出会う可能性として考えられるのは2つ。1つめは君と過ごしている間に本来出会っていた。その場合は、未来で君と結婚している可能性はかなり低いでしょ。だって現代の君と結婚するチャンスが未来の君にすり替わったわけだし」
「え……」
「もう1つが君が帰った後に現在いるはずの君に出会う可能性だけど、その時の僕は今の僕とは違ってるんだよ。君の指導のおかげでもっとまともな人間になっているかも。もしかしたら今の職をやめて安定したサラリーマンになってるかもしれない」
「うん……」
「ということは、生活ががらりと変わっているんだよ。転職で別の県にいるかもしれないしね」
「……」
「というわけで、君と結婚してないかもしれないな。悲しいけど」
「……」
「……」
「…あ、あのね……」
「ん?」
「あのー、ね?良く考えてみたら未来のあなたは別にダメじゃなかったなー、と思って」
「え?」
「だから、ええと、あなたは別にそのままでいいの」
「あ、そうなんだ……ありがとう」
「えー…というわけで私未来に帰るから!」
「え!?何言ってんの?」
「タイムマシンで帰るから!ちゃんと現在の私を見つけてね!ちょっと失礼!」
「おっと……ちょちょ、ちょっと。僕の机に何かあるの!?」
「……あれ?」
「……」
「……」
「……僕の机に引き出しは無いよ?」
・・・
「……恥ずかしい」
「僕もいじめすぎたね、ごめん」
「もう寝る」
「ちょっと、どこ行くの?ベッドこっちだよ」
「……押し入れで寝る」
「やっぱドラえもんじゃん」
【会話2.もし私が未来からやってきたら 完】
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