【第17話】 午睡のリキシャ🇮🇳
自動車やバイクが当たり前の日本人にとって、人力車は異様だ。この取材の旅でも人力車を実用的に利用することはなかった。どうしてもタクシーになる。だからこそ興味が湧く。何を思って仕事をしているのだろう。
新聞を一心に読んでいる彼に話しかけるのは気が引けた。しかし、取材の提案をすることに迷っているようでは今後何もできないだろう。そう思うことにして、ダメ元で話しかけてみた。
「すいません、ちょっといいですか」彼は無愛想な視線をこちらに向けてきた。
カメラはガタガタ揺れている。客を待っていてもなかなか来ないので、それでは自分が、ということで乗せてもらった。映像はどうなっているのだろう。ちゃんと撮れているのだろうか。
宿に戻るとハードディスクに映像データをコピーする。だが綺麗に撮れたかどうかの確認はしない。街を一日中うろつき回ったせいで疲れているし、そもそも映像の良し悪しについてなんの知識も見識もなかったからだ。撮れていればとりあえずそれでOK。気にしない。
次の日も同じようにガタガタとカメラを揺らす。「進歩は後でいい。今はこれが自分の仕事なのか、とにかく味わおう」この時はこう思っていた。
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