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ラフォンテーヌの寓話

17世紀に活躍したフランスの詩人ラフォンテーヌの寓話より

『狼と子羊』

ある森の中で一匹の子羊が川の水を飲んでいました。するとそこへ狼がやってきてこう言います。『俺様の水飲み場を汚すとは許さん』子羊は『お許しください』といいます。『私が飲んでいる所は閣下のおられる所から20歩も離れています。ですから閣下の水は汚していません』すると狼はこう言います『お前は去年俺の悪口を言ったな。知っているぞ』『私は去年は生まれていません』『では、お前の兄が言ったのだ』『私に兄はいません』『ではお前の身内の誰かだ。いずれにせよ、その仇は討たねばならぬ』狼はそう言うと、子羊をさらって食べました。

この短い物語には恐ろしいまでの真理と教訓があります。つまり強者の言い分と理屈は常に通るという事です。これは人間関係や国と国の間にも成り立ちます。大国が小国を侵略する時はたいていこんな滅茶苦茶な理屈で軍隊を送り込みます。

先日TVニュースで習近平さんがまじめな顔で『強いものが弱者をいじめてはいけない』といっていました。ロシアも何食わぬ顔でクリミア半島に軍隊を送り込み、此処を併合しました。今は大きな橋を移設し、モスクワからの所要時間を大幅に短縮したとの事です。ウクライナのお金でシンフェロポリのTV基地局のスタジオ改修工事を実施した事があるので特に気になりました。

クリミア半島のセバストポリにはロシア海軍主力の黒海艦隊があり、日露戦争の海戦の時、ロシアはこの艦隊を使いたかったが、トルコが出口のバスボラス海峡の幅1㎞程しかない狭い海路に左右から大砲を向けて『通れるものなら通ってみろ』と門番をしてくれたので、仕方なく北方のバルチック艦隊を派遣するしかなかったとのことです。この事はイスタンブールに出張するといつも日本人の私に説明してくれます。幸い日本が勝ったのでトルコ人はみんな留飲を下げたとの事です。

『カエルと王様』

民主体制のもと、リーダーがいないカエルたちは、天に向かって『王様が欲しい』とねだります。天は一本の杭を池に投げ込みます。カエルたちは『王が来た』と喜びますが、杭は動きもしなければ話しもしません。カエルたちはその内に不満を言い出します。そして天に向かって『動く王様が欲しい』といいます。天は仕方なく今度は一匹の鶴を送ります。鶴はカエルたちを次から次へと食べていきます。カエルたちはまた天に向かって不満をいいます。

『お前たちが動く王を欲しいというからやったのだ。それで我慢しておけ。さもないと今度はもっと恐ろしい王が来ることになるぞ』

この話は近世になってヒットラー、スターリンやポルポトを望んだ大衆を連させします。その王は次々とカエルたちを飲み込む鶴だったのです。ラフォンテーヌの寓話が書かれたのは17世紀ですが、まるで今の社会を予言しているような物語です。

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