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熱い想いがあるのにうまくいかない人に読んでほしい話

ーー自分は正しいことを言っているのに、協力してもらえない。

ーー熱い想いを持って一生懸命やっているのに、伝わらない。


このようなもどかしい経験をしたことがある人はいませんか。

特に若くてやる気のある人や、大きな組織に所属している人ほど、このような想いを感じやすいかもしれません。

うまくいかない理由は、内容そのものに問題があったのかもしれませんし、言い方や態度が悪かった可能性もあります。
でも、本質的な問題は全く別のところにあると私は思います。しかも、これは情熱を持って一生懸命がんばっている人ほど見落としやすい問題だと思います。

私自身の失敗経験を元に、人に理解してもらい、協力してもらうためのポイントについて書いてみたいと思います。

シンプルに伝えることは出来ていますか?

人に協力してもらうには、第一ステップとして、自分の想いや意見を理解してもらう必要があります。想いがある人ほど、人への伝え方でよく失敗します。
当たり前かと思うかもしれませんが、シンプルに伝えることが一番大事です。

シンプルに伝えることが出来ていない人がよく見逃している点は、想いや意見の”終着点”です。終着点とは、最終的に想い・意見を受け取り、実際に実行してくれる人のことです。その人まで伝わらないと、実際に実行に移されることはなく、ただただ、様々な人の時間の損失にしかなりません。

私自身がそのことに気付いていなかった張本人です。当時の上長から受けた指導が今でも心に残っています。

工場の立て直し案を上長に提案したときのことです。上長からのフィードバックはこうでした。

「朝田さんが言っていることは正しい。だが、私にこの提案を理解させるのに何分かかった?」
「もし、朝田さんが工場長にこの提案を説明し、工場長が工場の幹部に説明し、工場の幹部が職場長に説明し、職場長が現場のスタッフに伝えきるのに、どれほどの時間がかかると思う?」

この指導のとおり、相手に簡単に受け取ってもらえない提案は0点です。本当に伝えきるには、自分ではない他の人が伝えても、伝わるぐらい、伝えたい内容をシンプルにすべきです。 (良い企画を出すだけで満足しては絶対にいけません。)

ちなみに、提案をシンプルにする為の思考はとっても大変でエネルギーがいることです。私自身とっても苦手意識があります。(*毎回のnoteが4,000字を超える長文なことからお察しください。) ですが、ここを苦手だと逃げずに向き合い、思考することはとっても大事なことだと心から思います。

“思考”については、別のnoteで書いております。

“シンプルに伝える”ということは1つ目のポイントで、理解自体はしてもらえますが、協力してもらうところまではなかなかいきません。

昔は、持ち前のピュアハートで仕事をしていた私が、大きな失敗を経て、腹黒くなっていった過程から、2つ目のポイントを紹介したいと思います。

あなたのチーム、みんなに得点が入ってますか?

私はいま、タンザニアで事業を行う社内ベンチャーの代表を務めています。残念ながら、ひとりでは吹けば消し飛ぶほどの能力と財力で、社内の様々な部署や経営陣ひとりひとりからの協力が必須です。さらに、社外の全く知らない業界の人も含めて巻き込んでいく必要があります。

このように、できることの幅を広げるためには、とにかく様々なバックグラウンドを持つ仲間を増やしていくことが求められます。

そのときに一番重要なのは、相手に「得点」が入る仕組み、つまり自分とかかわることの見返りを用意することです。(いと腹黒しですね。。。)
そんなの当たり前じゃないか、と思う人も多いかもしれません。でも、目的や成果に向けて一生懸命になっている人ほど、この点を見落としやすいと私は思います。

何を隠そう、私自身が「相手の得点」を見落としたせいで、大きな失敗を経験しました。

20代の頃、海外事業の立て直しのために現地子会社に駐在したことがあります。その会社のダメなところは当時の私の目から見ても明らかで、再生に向けた道筋を何となく見通すことができました。何とか成果を上げたいと意気込んでいた私は、再生に向けた戦略プランを作成し、現地の経営陣にプレゼンテーションしました。

正直、プランには自信がありました。
でも、誰も賛同してくれませんでした。

なぜだと思いますか?

当時の私は、プランに足りない点があったからだと思いました。そこで、今の状況がなぜダメで、どうすれば解決できるかをさらに深く突き詰め、伝え続けました。

それでも、誰も耳を傾けてくれません。その間にも業績はどんどん低迷し、結局、明確な成果を出せないまま帰国することになってしまいました。

何がいけなかったのか、今ならはっきりとわかります。私のプランを採用しても、これまで事業をやってきた人たちに何のメリットもないからです。私のやり方では、経営陣からすれば怠慢を徹底的に指摘されていることになります。しかも、プランを採用して業績が上向いたとしても、それは私の成果になるだけです。

そう、私は会社のことを一生懸命考えているように見えて、実は「自分の得点」しか考えていなかったのです。

当時の私にそのような意識があったわけではありません。とにかくどうすれば会社が良くなるかだけを一生懸命考えていました。でも、どれだけ一生懸命でも、事業を進めてきた人を切り離して考えていたのでは、その人たちからは「自分の得点しか考えていない」と思われて当然なのです。

大義名分と同じくらいメンツやプライドも重要

確かに、プラン内容にみんなが賛同し、過去の怠慢も認めて、あるべき姿に向けて動けば素晴らしいです。でも、そんなのはキレイごとだと私は思います。

人は、頭で理解しただけでやる気になるのではありません。相手のメンツやプライドなど、人の気持ちも非常に重要な要素です。

人の気持ちを無視して頭で考えた戦略を押し付けるのは、無防備な相手に剛速球を投げ付けるようなものです。当時の私は、相手の様子に全く関心を持つことなく、ただただ剛速球を投げまくっていたのです。

今の私なら、子会社の人たちと一緒に再生戦略を考えるというアプローチを採ります。問題点を指摘したり答えを示したりするのではなく、真剣に考えてもらう環境を作ることに全てのエネルギーを注ぎます。「自分たちで考えた戦略」とすることで、成功したときの成果も自分たちのものになるようにします。

ダイキン工業の井上会長の言葉に「一流の戦略と二流の実行力よりも、二流の戦略と一流の実行力」というものがあります。いくら優れた戦略でも、他人が投げつけるのでは意味がありません。多少穴のある戦略だとしても、自ら考えて納得感がある方が、ずっと大きな推進力になります。

リーダーの仕事は「みんなに得点が入る」仕組みを作ること

駐在で悔しい想いをした私は、起業するにあたって、とにかく「みんなに得点が入る」仕組み作りを目指しました。私が代表としてやっている仕事はこれに尽きると言っても過言ではありません。

一般的な起業と同じく、今回の社内起業でも様々な関係者を巻き込んで協力者になってもらう必要がありました。「タンザニアにエアコンビジネスを広め人々の生活を豊かにする」という大義名分だけでは、残念ながら(というか当然ながら)人は動きません。そこで、それぞれの関係者にとっての直接的なメリットを伝えました。つまり、それが「みんなにとっていいこと」であれば、うまくいくはずだと思いました。

ここで、私が起業した社内ベンチャーについて簡単に述べておきます。事業内容は、タンザニアでエアコンのサブスクリプションサービスを提供すること。現在タンザニアでは壊れやすく省エネ性能も低いエアコンが大半であるため、高品質のエアコンをサブスクリプションによって利用しやすい形で広めることで生活水準の向上と環境配慮を目指します。

株主はダイキン工業とWASSHAという東大発ベンチャーの2社です。ダイキン工業は省エネ性能の高いエアコンを提供し、WASSHAはスマートフォンを使った決済システムを提供します。

ちなみに、会社名はBaridi Baridiと言います。Baridiとは、スワヒリ語で「冷やす」という意味です。

この事業が成功すれば、各関係者には次のようなメリットが想定されます。
・海外事業の担当役員⇒アフリカ進出の足掛かり
・CVC(企業内の投資部門⇒外部の資金を使って事業化した実績
・経営陣⇒WASSHAという東大発ベンチャーとの協業による産学連携の成果
・WASSHA⇒決済システムの拡販。ダイキン工業との協業による知名度向上

このように、それぞれの立場の人にとって、メリットを作ることを意識してビジネスモデルの企画をしました。

少し苦労したのがインド法人です。ダイキングループでは、東アフリカはインド法人の管轄になります。成功するかもわからない、しかもサブスクリプションのため収益化が遅い事業ですから、少なくとも短期的にはインド法人の経営成績を傷つけることになります。

そこで私は、本事業はインド法人の傘下には入れないという特例対応を取り付けました。さらに、エアコンを販売した際の利益はインド法人に付けることとし、事業が始まれば、インド法人の経営成績が上がる仕組みにしました。これにより、インド法人からもGOサインが出ました。

文字にすると簡単に見えますが、この解決策を採れたのは、相手を知るためにとにかくコミュニケーションを重ねたからです。相手を知っていく中で、「損しないことさえわかればよい」という相手の関心事が見えてきました。そこで、先に述べたような対応策が浮かんだのです。

このように仕組みを作っていくと、様々な立場の人がかかわるプロジェクトでも、意外と物事は進んでいきます。

一番の「得点」は、その人の能力を最大限発揮してもらうこと

ここまで、相手にとっての「得点」、つまり自分とかかわることの見返りを示すことが重要という話をしてきました。

何が「得点」かは、その人の立場や関心事によって異なります。でも、ひとつだけ、人間なら誰にでも共通する「得点」があると私は思います。

それは、その人が自分本来の能力を最大限発揮することです。

人は誰でも、自分の能力を全力で発揮できている状態を心地よく感じるものではないでしょうか。逆に、得意でないことをやらされ、他人の目的のために働かされる状態が続けば、「協力したい」「その場にいたい」と思う気持ちも薄れていくでしょう。

組織のリーダーが自分自身の夢を語ることは重要です。でも、組織のメンバーがリーダー自身の夢への共感だけでついてきてくれることは珍しいのではないでしょうか。

リーダーの夢への共感に加えて、メンバー個々人の夢やありたい姿を叶えられる組織こそ、多くのメンバーが付いてきてくれると思います。つまり、リーダーは自分の夢によって仲間になることを説得するというよりは、仲間がそれぞれの夢を叶えやすい場づくりをすべきだ、ということです。

実際に、私はいま会社の初期メンバーを集めていますが、前の場所では十分能力を発揮できていなかった仲間たちにどう輝いてもらうか、毎日毎日考えています。いまの私はこれに全てのエネルギーを捧げていると言ってもいいです。

相手への思いやりを大切に


“シンプルに伝えること””相手にとっての得点を考えること”の2つのポイントを説明してきました。その根底にあるものは”相手への思いやり”です。

つまり、"相手への思いやり"さえあれば、自然とこの2つのポイントは満たせます。
(ちなみに、半沢直樹に出てくる箕部幹事長はこの2つのポイントを完璧に悪用しきっちゃっていますが、こんな使い方はダメですよ。)


最後に一言。やりたいことの「炎」を一人で燃やし続けることはできません。やりたいことがあって一生懸命になっている人ほど、自分の主張から一旦離れて、相手のことを意識してみることをおすすめします。この文章が多くの人の協力を得て「炎」を燃やし続けていく助けになれば、とても嬉しいです。

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