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「他者と働く」を読みました。

先日、こちらを読み終えました。

 この本は埼玉大学 経済経営大学院の准教授、宇田川 元一さんの著。

よくある組織論や経済書で言われているような"きれいごと"ではなく、「とはいえ、うちではうまくいかないよ・・・」の元とされるあらゆることを"当たり前のこと"とおいて論理的に紐解いています。

 忖度、対立、抑圧、権力差、年齢差などなど。

きれいごとではうまくいかない数々の組織のリアルに一冊丸ごと向き合っているものです。

 このようなリアルをこの書籍では"適応課題(関係性の中で生じる問題)"として扱っており、それ以外の既存の知識・方法で解決できる問題。いわゆる頭で解決できる課題を"技術的課題"と置いています。

 少なくともここで私が手にとってきた多くの書籍は"技術的課題"の解決について書かれた組織論や経済書であったと認識しました。

 ここがこのような類の他の書籍との明確な差別化ポイントの一つでしょう。

 そして、この"適応課題"を"対話"で解決することを説いています。ちなみにこの書籍では 対話 = 「新しい関係性を構築すること」と定義しています。

 会話と会話の掛け合いでも、対面での会話でもなく、それよりもさらに大きな枠組みでの"対話"を実行することで "適応課題"を解決していこうというアプローチです。

 少し考えてみると、当たり前のことに感じます。というのも、組織である以上、2人以上の個人が存在するはずであり、そこには無意識に関係性という言葉では定義し難く、事前に予測ができないふわふわした何かが存在しているわけです。

 この本から少しそれますが、野中郁次郎先生などはこの関係性の中では「暗黙知が飛び交っている」と語っています。すなわち、2人以上がそこにいるとお互いが共通して理解できていない片方向の知(知識というより知恵に近い)が空気中を漂っています。

 空気中を漂っていると私が表現したのは、それが目に見えるものや耳に聞こえるものだけでなく「なんとなく気まずい」「空気が重い」など"雰囲気"として捉えてるものが多いためです。

 話を書籍に戻すと、これこそが知識で解決できるものではない"適応課題"そのものなのではと思います。

 そう考えると「お互い分かり合えないこと」の当たり前さも理解できるのではないでしょうか?

 そもそも、私も含め、「きっと分かり合えるはずだ!」という過信はどこから来るのでしょうか。過度な期待はプレッシャーに変わり、うまくいかなかったときの苦手意識・・・そこから自分はコミュニケーションが苦手だ。人見知りだ。というマイナスな自己解決を生んでしまう気もしました。

と、ここまで序文を元に想いを連ねてきました。そう、まだ序文にしか触れていません。

本編ではこれをさらに深め、「適応課題にはどんなタイプがあるのか」「関係性にはどのようなものがあるのか」そして、「対話によってどのようなプロセスでこれを解決(溝を渡る)のか」などが書かれています。

 最後に触れておきたいのがこの書籍中で常に触れられている"ナラティブ"という言葉です。

 この言葉はきっと著者の宇田川さんがあえて何かの日本語に置き換えることをせずに使っていると私は考えます。

 私はこの言葉をあえて私の解釈で意訳すると"価値観"という言葉かなと感じました。

 価値観という言葉は私の中で何度も探究した言葉です。

「価値観ババ抜き」という形でワークショップとしてそれを何度アウトプットしても答えが見つからないものです。

 価値観とは、その人の内面から染み出すその人らしさだと今の私は思っています。これは強みでも興味でもなく、自ら作り出すものでもないものだと思います(よくマザーテレサの言葉を使って伝えているように、変えることはできますが)。

 それは歴史あるラーメン屋の秘伝のスープのようにただ同じ知識をインプットするだけではなく、寸胴鍋の底にこびり付いたコゲや旨みのように自分自身の経験をもとに染み付いた味が調和して生まれてくるものだと思います。

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 つまり、同じ知識や方法を取得するだけで読み解けるほど、関係性というものは簡単ではなく、だからこそ、どんな天才にも「合う人、合わない人」というのがいるのだと思います。

だからこそ、分かり合えない。分かり合えないことを認めて、"ナラティブ"の溝を超えていく努力をすることが必要だと感じました。

詳しくはこちらを手にとってみてください。




主にPjM、PO、セールスエンジニア、AWS ソリューションアーキテクトなどを務める。「映像業界の働き方を変える」をモットーにエンジニア組織を超えたスクラムの導入、実践に奔走。DevLOVEなど各種コミュニティーにおいてチームビルディングやワークショップのファシリテーションを行う