Clubhouseで毎週 日曜日 正午から「スタートアップ奥義」として、グローバル人材が開催する「スタートアップジャーニー」をテーマとした部屋です。一般的に知られてないスタートアップのこと（奥義）についてオープンに話します。国内外の資金調達、採用、市場展開からファウンダーと投資家の関係管理、チームの精神保健などまで幅広くディスカッションをしよう！起業を考えている方、起業を悩んでいる方、ちょっとだけ興味を持った方でも大歓迎です。

Moneytreeのポール チャップマンさんと、メリービズの工藤博樹の二人ではじめた、この番組には

高階 匡史さん：NTTドコモ・ベンチャーズ Managing Director

中畑 裕子さん：サスティナシード株式会社 創業者・代表取締役CEO、株式会社ナック社外取締役

ナリン・アドバニさん：entomo共同創業者、日本ユニシス社外取締役、等多数のスタートアップの役員・エンジェル投資

今回は、第18回目の放送として、2021年7月25日（日）に開催された回の内容の主だった内容をここにまとめます。

海賊vs 海軍とは？

海賊と海軍という例えは、スティーブ・ジョブズ氏が「海軍に入るくらいなら、海賊になったほうがいい」という言葉から、よくこの番組ででてくる例え・メタファーになっています。

海賊とは、今にも壊れそうな小さな舟で大海原を縦横無尽で航海するが如く、創業まもないスタートアップの混沌としていながら、新しいことを模索いる状態の小さい組織を表現しています。

一方で、海軍とは、どっしりとした大きな船の中で階級や役割も明確になって固定的な大組織のなかでどこか野心に欠け、上司に咎められないように各々が行動するが如く、事業が成熟し、従業員も多くいる大企業の大組織を表現しています。

海賊vs 海軍というテーマを選んだ理由

スタートアップは海賊からはじまり、事業を大きくしていくに従い、社会的な責任をより負う必要がでてきます。「コンプライアンス」を整備するにあたり、段々と海軍に近づいて行かざるを得ないところがあります。

海賊フェーズ（時期）が好きな方もいれば、海軍フェーズが好きな方もいます。よくあるパターンとしては、海賊としては活躍するが、海軍としてはなかなか力を発揮しないパターンです。

今回は、組織のありよう・作り方、どういう人材が活躍するか、いろいろな事例について話します。

スタートアップにおける組織の変化

ここからClubhouseの中で出てきた話題を（個人的に）ピックアップして書きます！（網羅できておらず、すみません！そしてもっと詳しく知りたい方はぜひClubhouseにご参加ください）

工藤：メリービズはプロダクトピボットをした関係で一度大きく組織が入れ替わった。

中畑さん：３名ではじめた会社に社員としていたが、社長は残ったものの上場準備としての役員に代わった。創業メンバーはそのタイミングでかなりやめてしまった。

パイオニア、セトラー、タウンプランナー

ポールさん：スタートアップのカルチャーはミッション達成を目指さないといけない。状況にあわせて、メンバーそして限りあるリソースを活用させていかないと成功はしない。

ポールさん：スタートアップのアーリーステージ、ミドルステージ、レーターステージにおいて、パイオニア（先駆者）、セトラー（開拓者）、タウンプランナー（町づくり）という役割がある。

パイオニアは会社を立ち上げるひとたち。ストラクチャー・組織図も何もない状況、自分のロールも役職の定義もそんなに固まっていない。

セトラーはある程度ストラクチャー、プロセスを制定する必要があるが、まだ流動的な体制が大事。

タウンプランナーを雇いはじめると、そのスタートアップの商品もマーケットも顧客もよく理解されてきている状態。海賊とはいえない、海軍になっていきます。

高階さん：シードステージのスタートアップに投資した体験がある。天才的なエンジニア社長がゲーム会社を創業して、5,000万円から1億円くらいまでは機能して素晴らしい能力で立ち上げてくれる。ただ、エンジニア出身の天才社長はやはり新しいことをやりたいので新しいことをしてしまう。せっかくこれから伸びるところだったのに、ということで何回かこれが繰り返されたあとに新規事業のところに集中してもらうことに。創業者、創業チームのバックグラウンドの影響も大きいと考えている。創業メンバーの役割分担と、新しい役割にあわせて変われるのか？新しく加わる方とどんな風に一緒にやっていくのか？というのはいつも問題になる。

ダンバー数、マネージできる人数

ポールさん：ひとりの人間が社会関係を維持できる人数の上限として「ダンバー数」というのがある。それを超えた人数をマネージしたことがなかった。

0から1が好きな方はマネージャーというのは不要だと思う方がいるかもしれない。バリューを出していないと批判する方がいるかもしれない。

実際はマネージャー職は本当に大事な仕事。

工藤：創業者・経営者・株主・個人とそれぞれの立場でどう折り合いをつけるか、バランスをとるか、というのは難しい。本当は自分の成長のためにはこれをやりたいが、全体のリソースを考えると役割としてこうすべきというのがあり、相反する場合がある。

投資家・株主としてスタートアップをみていて

高階さん：株主としては「ボトルネック」（他を伸ばしても、そこを解決しないと事業自体が伸びない箇所）がどこに発生しているかをいつも見ている。0→1が好きな創業者だと、そのような局面をどのように考えているのか？

工藤：解決方法にクリエティビティを発揮できないかを考えてしまう。

ポールさん：やりたいことをやるには何が必要かということを考える。カルチャーの良いところが弱みになるタイミングで気がつかないといけない。スタートアップのリーダーチームが議論して決める必要がある。

ステージごとに求められる能力が異なる

ナリンさん：初めて外資系会社の日本法人の社長をやったウィンドリバーという会社があり、後に競合と合併し、さらにその後インテルが買収した。

創業者はジェリー・フィドラーとデビット・ウィルナーという二人のエンジニアでした。ひとりは本当にエンジニア系、もうひとりはどちらかというとビジョン系。このバランスが素晴らしかった。

ジェリーがビジョン系の方で、お客様の前に出すのはかなり場面を選ぶ。ただ、ブランド力があるのでお客様は会いたがる。もうひとりのデビットはプロダクトもマーケットも社員もよく理解しているがブランド力は無いのでお客様はあまり会いたがらない。

創業者でも自分の得意と思っていること、周りが「このひとはこういう風に使おう」と思うことが違う。それを自覚することによって成長できる。

ジェリーはCEOをバトンタッチして初めて上場の準備に入った。新しいCEOは上場させてやめた。上場以外には何のパッションもなかった。

ステージごとに求められるパワーや能力は違っている。経営する側としてはそれを把握していれば、会社もうまく成長するし、ボタンの掛け違いがあると成長できたはずのものが成長しない。

またライフステージによってもやりたいことが異なる。

自分も若いときはスタートアップが良かった、30−40代の時は大企業のシニアマネジメント、50代にはいってスタートアップを立ち上げる人たちの立ち上げを支える立場に。

高階さん：Googleも、最初はラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの二人で創業して、VCのジョン・ドゥアーが入ってきて、プロ経営者のエリック・シュミットをもってきて、しっかりスケールアップして、またラリー・ペイジをCEOにもどすという、成長にあわせてうまくいかせる例もある。

ナリンさん：うまくいかなかった例としては、例えばWeWorkのニューマンとか。降りなきゃいけないのに降りないので強引にSBが降ろした。

英語の表現で「When it's time to let go, you have to let go」。他人に言われる前に、自分で引かないといけない。

重要な局面での判断：ニーズとケーパビリティのバランス

ナリンさん：大きなお客様で、「この機能をつくって」と大きな売上になることが見込まれる話があったときにどうするか？

この判断は誰がするのか？みんなでするのか？創業社長がするのか？特定の営業がするのか？

マーケットのニーズと、自身のケーパビリティのバランスをどにょうに保つかという判断をしないといけない。会社の継続性に本当に繋がるかという判断ができるか？というのが重要。

ポールさん：間違いに気がつくまでに時間がかかると危険。

中畑さん：社長がよそ見をしすぎて、メインの事業がおろそかになり、会社が解散したというのも数社見たことがある。社長はハンドルに触れていないとダメ。

リスナーからの質問

ゆかさん：高階さんへの質問で、投資家としてIPOが近いのでファウンダーに残ってほしいという契約をすることはありますか？

高階さん：IPOのときではないが、投資する際に役員としていて欲しいという条項をいれることはある。

IPOして投資家からあれダメ、これダメと何もできなくなる創業者もみているので、そういう方は早くEXITして新しいことをやるのも良いのでは。役割・ステージ等で何が一番ハッピーか、のびのびと人生を歩むのが本人にとっても社会にとっても良いと考えている。

金築さん：「リーダーシップ・スペクトラム―事業のライフサイクルに対応するリーダーシップ」という本の紹介。発明者、促進者、組織構築者、業績達成者、保護者、挑戦者という６つの役割に分けている。

海軍の中で海賊ができる人材

金築さん：ロス・ペローさん、IBMにはいってIBMで長く居なくて、結局EDS（情報処理大手エレクトロニック・データ・システムズ）を創業して。元海軍だけど、海賊タイプの方。

ナリンさん：ロス・ペローさん、大統領選でも民主党でも共和党でもなく、独立候補として出馬、全部自己資金で。EDS（情報処理大手エレクトロニック・データ・システムズ）創業、ペローシステムズもつくって。

日本 vs 欧米スタイル

金築さん：先に組織・機能をデザインしてから誰がいいかな、と当てはめるのがどちらかというと欧米スタイル。日本はひとありきで役割を後で考えるような傾向が結構ある。アメリカのようにスピーディーにリーダーを変更するというのは日本では少なく、結構ダラダラ、ズルズルときてしまうことが多い。

ナリンさん：みんなテスラの創業者はイーロン・マスクだと思っている方が多いですが、実は後から入ってきている。

高階さん：最近は、SaaSモデル等に大きなビジネス、大きな組織で上場している。昔は、ソフトウェア等のスタートアップ100人以下、売上20億から30億で、少人数でIPOするケースが結構多かった。そうすると海賊のままだということがあった。

日本は大企業が製造業・インフラ業が多く、ミドルステージでスケールするのがうまい経営者というのが実は居ない。IT企業の楽天、サイバーエージェント、リクルート、ソフトバンクなどからでてくる勢いのある経営者と組むと欧米的な役割ができるが、製造業の部長がスタートアップにきても７−８割がた喧嘩で終わってしまう。カルチャーが合わなく、機能しないことが多い。

ポールさん：日本では中途採用というコンセプトもそんなに古く無い。15〜20年前、中途採用がほとんど無い。大手企業、海軍経験が長い方がスタートアップにくると適性がそんなに良くないかもしれない。

シリコンバレーでは、海賊も海軍も経験している方がたくさんいるので、各ステージに合わせて人材がたくさんいるイメージがある。

大企業の海賊化

高階さん：日本が80年代すごく成長したのは、製造業でクオリティコントロールして、PDCAを高速で回して、非常に効率的に安く製品を提供していたから。

今回イノベートでGAFAをはじめとした企業がアーキテクチャーを変えてきて、イノベーションを変えてきて、社会的・ビジネス的な構造を変えていく、そういう0→1でイノベーションをおこすのが海賊だという見方ができる。海賊的な要素と海軍的な要素の調和、ビジネスで大企業が海賊的な要素を組み入れないとダメじゃないのか。

毎週、日曜にClubhouseで話しています！

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