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第8回 命の天秤

天秤とは

 天秤って、質量(重さ)を正確に測るための、目的に使われた道具らしい。前にも記載したように、骨髄移植(命)と家族離散を天秤にかけられ、ありがたいことにご意見を頂戴した我が家族は、家から離れて、古いアパートに引っ越した。車が通るたびに揺れるアパート、家賃も安かった。
 そのときの母親は、特に泣いたり、弱音を吐いたりしなかった。でも、その時から、きっと少しずつ歯車がずれていたのかもしれない。
 それで、天秤の皿に乗った命はどうなっただろうか。もちろん離婚もして、義理の父親の詳細についは、知るよしもない。
 知ったのは、中学の帰り道で見た葬儀の看板だった。あぁ、自分と同じ苗字の人間が葬式をあげている。そう、義理の父親は死んだらしい。
 その時、中学の終わりを迎えていた。
 
また、父親のいない家庭に逆戻りになった。
 
 本当の家族になりたい人間は、望んでないのにいなくなってしまったらしい。
 いまいち、人の死については理解が追いついていない自分は、悲しみに暮れることも、あんまり良くわからなかった。
 そして、高校生になった。

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