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🇭🇰香港「修養」日誌〜テレビ局辞めて休養&修行中〜

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🇭🇰香港「修養」日誌〜テレビ局辞めて休養&修行中〜
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【香港🇭🇰「修養」日誌66】味噌煮込みうどん 20221012

味噌煮込みうどん 日本人家庭で毎週うどんを作る 人生を送ることになったジェシカさんの 腕の上がり方がめざましい 午後五時半に 香港のキッチンに漂う味噌煮込みの香りは 「日本中の住宅街を夕暮れ時に覆う匂いと一緒で ノスタルジックな気分になります」 と英語でお伝えした でも本当は 「午後五時に練馬区のスピーカーから流れる 『夕焼け小焼け』が鳴り終わる前に 急いで帰らなきゃの少年の頃に 駆け降りる下り坂でハアハアと息を吸い込んだ瞬間 ふいに襲われるのです どこからともなくの甘

【香港🇭🇰「修養」日誌65】贅沢な感傷 2022/9/26

贅沢な感傷 2022/9/26 冷蔵庫に貼った付箋ともサヨウナラ 寝惚けまなこで分刻み 毎朝タスクをこなしていた たった半年足らずのなんちゃって主夫修行も ジェシカさんが来てくれて めでたく終わりを告げた 僕がぐちゃぐちゃにしていた水回りは もう いつもピカピカで 冷蔵庫のどこで何が冷えているかも もう よくわからない もう 僕がいなかったみたいだ 台所の端っこに座り込んで電子レンジを睨んでいた 不器用なおじさんは去りました 贅沢な感傷 それだけが僕には残って

【香港🇭🇰「修養」日誌64】ピンク色のビニール袋 2022/9/9

制服の子たちは皆 ピンク色のビニール袋を持っている Zoomで覗く授業参観  小さな画面で一際目立つ 国語の時間 「では班の人と話し合ってみましょう」 先生に言われれば ピンク袋からフェイスシールドを ささっと取り出し装着する 音楽の時間 「春の小川」のイントロがかかれば ピンク色の袋がガサガサ鳴る ささっと取り出し装着する シールドを曇らせながら歌唱する “咲けよ咲けよとささやきながら” 香港政府はワクチンパスの適用対象を 5歳以上の子どもにも拡大すると発表した 外食

【香港🇭🇰「修養」日誌63】この男は何者だろう? 20220907

この男は何者だろう? 奥様はスーツ姿で出勤されたのに 息子たちをスクールバスに乗せただけで ニコニコ帰ってきたタンクトップの男 私が掃除機を差し込む真横で 体を揺らしながら朝からピアノを弾いている この男は何者だろう? とジェシカは思っている 僕は何者だろう? ジェシカさんに怪しまれているのは薄々感じるが さてどう説明しよう 日本のテレビ局の情熱的なジャーナリストでしたが 過去のある事件がきっかけで心に傷を抱えて 今は少し休息が必要で… という気取った設定は長持ちしない

【香港🇭🇰「 修養」日誌62】ついに貴族になった 20220906

僕はついに貴族になった 哲学を修め 和歌を詠む あと蹴鞠とか竪琴とかだろ パルテノンの丘の寝殿造りで 世を憂い筆を舐めるのだ 香港の小部屋で マルクス・アウレリウス・アントニヌスごっこだ フィリピンから ジェシカさんがやってきた 住み込んだ途端 ベッドのシーツがピンとなった 排水口からプルメリアが香った 焼きうどんすら出てきた プロフェショナルだわが口癖になった 勝手に衣食住が回るようになってしまった 有難い極みだが 僕も何かを回さねば 立派な貴族という概念は 言語矛盾を

【あの頃好きだった香港ごはん🇭🇰】2022

【2022年の好きだった順】■張記小廚「蒜茸蒸吻魚飯」$60 @鴨脷洲 4.2 ■青咖喱屋「泰式青咖喱香茅雞扒飯」$55 @黃竹坑 4.2 ■潮苑「手唧魚蛋拼牛肉餅粉麵」$41 @香港仔 3.7

【香港🇭🇰「修養」日誌61】「テレビ局辞めて香港で何すんの?」という真っ当な質問に答えるならば @紅磡 20220728

夜のサッカー場に忘れた水筒を取りに行く 慌てることはなかったので海沿いの遊歩道をひたひた歩くことにした 日中あれだけ熱を運び続けた南国の風もやっとクールダウンし 汗ばんでいた人々も気化熱が奪われる涼感を味わっている 段ボールと台車で自作の移動テレビ台(時計台)を拵えたおじさんが舞っている 対岸では資本主義のネオンが光っている 波間に映る彩色 僕には関係ないけど綺麗だな 40歳になって香港に流れ着いた 自分なりの合理的な人生選択の行先でもある 幼少期に強烈なトラウマがあるわけ

【香港🇭🇰「修養」日誌60】快楽のために…脳内に「reminDO」埋め込み『スリー・ビルボード』を皮蛋醤油漬けにする @紅磡 20220727

久しぶりに日誌を書く 鬱だったわけではない そりゃ多少の躁鬱はある 躁で語り鬱で書く そうやって イビツに転がる多面体サイコロの自分を和らげてきた しかしこの2週間は躁でも鬱でもなかった ただただ勉強をしていた そういえば僕は今 働いていない そのことを時に忘れかける エピクロスは現実の煩わしさから解放された状態を「快」とし 人生をその追求のみに費やすという考え方を唱えた 「快楽主義」真っ只中である僕は 「ほだし」のない自由と孤独は 勉強して埋めるのだ 「reminDO」

【香港🇭🇰「修養」日誌59】「カツッ!シューッ!」青空を流れていく黄色いボールとイワナが棲まない岩山を見上げながら… @紅磡〜石硤尾〜黃埔 20220626日

6時起床 今日もどうか正直・親切・ご機嫌であれ 日曜朝の暗いうちからむくりと起きて 家族眠らせたままユニフォーム着込み グローブ担いで一人そっと玄関を出るワクワク 3ヶ月ぶりの「朝練」だ 未明の俄雨でグラウンドぐっちゃりでも おじさんたち意気揚々 肩回しながら「ベース周りの水溜まりさえ吸っちゃえば」「ぬかるみでダッシュしたら腰やっちゃうねぇ」「九龍公園プールが意外と若いお姉ちゃん多かったぜぃ」 懐かしい会話だなぁ 日頃スクールバス待ちながら奥様方から聞こえてくるのは 担任先

【香港🇭🇰「修養」日誌58】奥様は「アサヤム」…僕は“小田嶋ロス”を堪能しながら実名で「自由」を叫ぶのだ @紅磡 20220625土

午前6時起床 今日もどうか正直・親切・ご機嫌であれ スクールバスを見送った奥様方はどうやら「アサヤム」によく行くらしい 「朝から飲茶」である 飲茶レストランは朝7時から開いていて午前中は4割引とな 僕が水道橋博士の「アサヤン」の録画でニヤニヤしている裏で奥様方は「アサヤム」で小籠包と戯れていた (悔しいのでこっそり行った) “小田嶋隆ロス”真っ只中 遺作の小説『東京四次元紀行』をどれどれと拝読 《おとなしく見えることと、自分を制御できないというのは別のことだ。オレにはわか

【香港🇭🇰「修養」日誌57】小田嶋隆さんが亡くなってしまった @紅磡〜黃埔〜尖沙咀 20220624金

午前6時起床 今日もどうか正直・親切・ご機嫌であれ でもどうしても涙が出てしまう 小田嶋隆さんが亡くなってしまった 後回しにしたいと思うほどの強い悲しみに襲われるのは久しぶりだ この日は晴れやかな空 「免疫ワンプレート飯」でチャージし スワローズ独走にニヤニヤして 広東語でパスタ頼んだらドリアがやってきて 尖沙咀の人いきれにクラクラしつつも 「通利琴行」で電子ピアノをついに購入し ついでにKANの楽譜なんか発見して 帰ってきた子供とアイス食べたりしたけど ずっと悲しかった

【香港🇭🇰「修養」日誌56】“ガリガリくん日和”でもパパは“台風”をやり過ごす…「商業ポエムは」と批判するのも主語が大きいかしら? @紅磡〜佛光街遊楽場 20220623木

6時起床 今日もどうか正直・親切・ご機嫌であれ “ガリガリくん日和”が続く 「かき氷機」を買っても“採算”取れる気がする パーティーを催す口実にもなる 「流しそうめん機」のあるご家庭はそれだけでちょっと行きたい ついさっきまでご機嫌にうどんを啜っていたのに 宿題が面倒臭くて泣き叫び暴れる6歳 算数プリントをぐちゃぐちゃに丸めては広げて鉛筆を投げては拾って それでも引き算は少しずつ解かれていく 「パパどっか行って!」と追放されたので僕は隣室で黙ってじっと待つだけだ 轟音で唸

【香港🇭🇰「修養」日誌55】もう沢木耕太郎より斎藤幸平なお年頃…大停電の夜に「鴛鴦奶茶」でゆあんゆあん @紅磡 20220622

6時起床 「早朝 海はまだ静かだ」なのか「夜明け 九龍灣はまだ眠っている」なのか 描写に迷う 後者を選びがちだが無頼漢を気取る沢木耕太郎みたいで性に合わないのですよ “ハードボイルド”の対極にいるアラフォーとしましては 風邪気味で頭がどんよりする 日誌を書きたいのに 言葉を小分けにして保管している“脳内の薬棚” それぞれの引き出しに付いているはずの“小さな取っ手”が何故だか無くなっていて うまく言葉を引き出せない 中途半端なアウトプットは大抵「後の祭り」なので 体調のらな

【香港🇭🇰「修養」日誌54】「免疫ワンプレート」も「消えるお金」も「一人ぼっち」も…ぐちゃぐちゃですけど赦してね @紅磡〜黃埔花園 20220621

6時起床 今日もどうか正直・親切・ご機嫌であれ イオンのお惣菜だけで子供の弁当を作り 自分は水道橋博士リスペクトの「ぐちゃぐちゃ免疫ワンプレート」を堪能 生ニンニクこんもり 毒親ならぬ栄養親じゃ 『亡き父は晩年なぜ「ネット右翼」になってしまったのか』を読む  《父の中では、その美しかったニッポンに対する喪失感が、「それは何者かによって奪われた」「何かによって変えられてしまった」という被害者感情に置き換えられていた》《父は、その胸に抱えていた喪失感を、ビジネスに利用されたのだ