【百科詩典】しょうせつか【小説家】

才能の次に、小説家にとって何が重要な資質かと問われれば、迷うことなく集中力をあげる。
自分の持っている限られた量の才能を、必要な一点に集約して注ぎ込める能力。
この力を有効に用いれば、才能の不足や偏在をある程度補うことができる。(中略)
僕は記録に挑戦する無心な若者でもなく、無機的な一個の機械でもない。
限界を知りつつ、何とか少しでも長く自分の脳力と活力を保ち続けようとする一人の職業的小説家に過ぎないのだ。

~村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』