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【香港「休職夫」日誌🇭🇰子供と学んでいます01】ふわふわした「長すぎた春休み」を蹴り飛ばした8歳と6歳にいつまでも手を振った @九龍公園 20220420

♪いつしか長すぎた春が終わりを告げたの なんて気づけば独り言 でも聞いて欲しかった

34日間の「長すぎた春休み」がやっと終わった 3月16日から4月18日 日本での転校・卒園から香港のイースター4連休明けまで 我が家だけのほぼ4人ぼっちの永遠のような春だった

ふわふわした春だった 隔離ホテルで“学校ごっこ”…仮住まいで観光気分…ソファでオンライン入学式 全部がどこか偽物のようで 桜も咲かず紫陽花の季節もすっ飛ばした南国の「知らない春」

8歳と6歳の混乱と動揺は僕の想像以上だったと思う 突然の海外移住と目に見えぬコロナ禍と初めての入学転校を一気に「呑み込もう」とした彼らは本当に「食中毒」になってしまった 申し訳なかった

あの夜 6歳は小さな体で感じたかったのだと思う 訳の分からぬ毎日でも体で感じたことはきっと信じられる 「1人でも公園に絶対行くから!」そう叫んで彼はスイカ柄のゴムボールだけ持ってマンションを飛び出した 追いかけた

夜8時過ぎの九龍公園はもう暗かった それでも小さな体は後ろを振り返らずに1人でずんずん奥へ奥へと歩いた 日中あんなに抱っこを求めた男の子が ボールを抱き締めたまま夜の公園を1人突き進んだ

ガジュマルの大木がある薄暗い広場に着くと 何も言わず思い切りボールを蹴ってきた 何も言わずボールを蹴り返した すると「もっと強く蹴って!」と叫んで蹴ってきた 僕も思い切りボールを蹴り上げた バン!バン!バン!バン! ゴムボールの弾ける音だけが暗がりに響いた 街灯で橙色に染まったスイカが右へ左へコンクリートを転がり続けた

黙々と30分ぐらい蹴り続けただろうか 汗だくで足がもつれ始めた頃「いつ帰るの?」と6歳が聞いてきた 「いつでもいいよ」と答えた 「お父さんが決めて」と言うから「じゃあ帰ろうか」と言った

公園の帰り道は手を繋いだ 思ったより暗くはなかった 丘の東屋で社交ダンスを練習するカップルがいた 緩やかな広東語のメロディーにのって揺れていた

今週 息子たちは初めて制服を着た やっとやっと本物の学校に行けるよ 着心地はどうだい? 入学と進級 本当におめでとう 見えなくなるまでスクールバスに手を振った

♪パスピエ『永すぎた春』