【百科詩典】へいせいのしょうひしゃ【平成の消費者】

革命を経ない日本では、長い間、「イエ」が社会の最小単位であり「イエ」を存続させるための封建的な秩序が支配的であり、女性もまた「イエ」の存続のための重要な役割を担わされることを余儀なくされてきた。長子相続、長幼序列、婚姻の慣習とそれらを包摂する共同体の掟が社会全体を貫いて一つの秩序を形成しており、個人の自由という概念は生まれようもなかったと言えるだろう。考えてみれば、「消費者」は、革命を経なかった日本人が初めて手にした「個人」でもあったとも言えるのかもしれない。ここでも、但し書きがつく。但し、金さえあれば。平成が始まった1989年は、これらの但し書きつきの「個人」が完成された時期でもあったと言えるだろう。
~平川克美「『消費者』主権国家まで」